「塔矢、そろそろ時間…」
ダメ元で声をかけて見るけと、何の反応もなく碁盤に集中してる。
(聞こえてない訳じゃないんだよな)
反応なし=泊まっていくということ。
1度泊まってから、けっこうな頻度で泊まるようになった。
「毎回言ってるけど、もし間違いが起きたらどうするんだよ」
「今までなかったから、今回もないだろ」
「オレのメンタルが限界なんだよ!」
1度だけでもオレのメンタルがヤバかったのに何回も続いてるからもう限界。
部屋で打たなきゃ良いんだけど、塔矢と打つのは楽しいから「キミの部屋で打とう」なんて言われたら断れなくてズルズルと来てしまった。
塔矢にグルグル来られると断れないんだよな…。
「起きても別に良いけど」
「………へっ?」
軽く1分は固まった。
とととた塔矢さん…今なんと?
何が起きても良いと?
(……………………)
聞き間違いオレとそういうことしても良いってことだよな?
………………。
嘘だろっっっ!!!
冗談だろっっっ!!!
「なななななな何考えてんだよ。好きでもない男とそんなことするなんて可笑しいだろ」
声が裏返ってるけど許されると思う。
「好きだと言ったら?」
……………はい?
オレはまた数分固まった。
「さあ、最後まで打ち切ってしまうぞ」
こんな状況で打てるわけないだろ。
(塔矢がオレのこと好き?マジで…)
今までそんな態度見せてないだろ。
ってか、爆弾投下して普通に打てる塔矢のメンタルってどうなってんの?
●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●
何日経っても塔矢の「好きだけど」の爆弾発言が頭から離れないまま、ずっとグルグル回っててちょっと寝不足気味かも。
「で、気になり過ぎてオレに中押し負けか」
社が呆れたような感じの眼差しを向けてきた。
「塔矢が知ったらライバルの地位から転落かもな」
バレたら殺されるから塔矢には内緒で頼む。
「まあ冗談は置いといて、プロの世界は男社会や。塔矢人一倍隙を見せないようにしてるやろ。そんな塔矢が進藤の部屋に泊まって告白までしたんや」
「………」
「ちゃんと応えてやらんと」
「応えるって言われても…」
どう知りゃいいんだよ。
「早く応えんと、塔矢が他の男に取られてまうかもな。進藤がそれで良いならかまへんけど」
塔矢が他の男に取られる?
(……………………)
何となく…ホントに何となく、塔矢がオレ以外の男と居るところを想像してしまった。
何想像してんだよ、オレ。
で、想像したらムカついた。
(なんか、嫌かも……)
あれ?何で嫌だんだ?
「まあ、頑張れや」
そう言って、社に肩をポンッと叩かれた。