(やっぱり無茶だったのかな…)
普段は進藤が寝てるベッドの中で、僕は溜息を零した。
今日も渋る進藤を押し切って、進藤の部屋に泊まってる。
僕は進藤が好き。
でも告白する勇気が全くなくて、ライバルで良いかな…と思ってたんだよね。
なのに、どうして僕がこんなことをしようと思ったのかというと、若手女流棋士の恋バナ?が耳にしたから。
「男は好きな女以外、一人暮らしの部屋に招いたりしないよね」
「招かれたってことは脈アリってことかもよ」
「あとは手料理で胃袋を掴むだけよ」
その後も女流棋士達の恋バナは続いた。
そんなことばかり話してないで、碁の勉強に精を出したら良いと思うけど。
「オレの部屋で打とう」
って言って、何度も進藤の部屋に招かれてる僕は脈ありなのかな?
母に料理は叩き込まれたから、進藤の胃袋を掴む自信はあるけど、どうやって手料理を振る舞おう…と考えていたら、チャンスは突然やってきた。
進藤の部屋で打ってた時白熱し過ぎて終電を逃した時、反対する進藤を押し切って泊まったからお礼と称して手料理を振る舞おうことが出来た。
それから何回か泊まることがあって、その度に帰れ帰らないの言い合いを繰り返して、僕が帰らないで押し切った。
今日なんていつものように、帰れ帰らないで言い合いになった時カッとなって思わず…「好きだと言ったら?」って言ってしまうし…。
しまったと思って、慌てて進藤を見ると固まってた。
そして、更に言い合いが白熱きて「間違いが起きてもいい」なんて言ってしまったし…。
間違いが起こっても良いなんて、何を考えてるんだ?僕は。
僕だって間違いというのが何を指してるか解ってる。
進藤となら間違いが起こっても良いという気持ちもあるけど、進藤が間違いが起こったら後が大変と思って、我慢してるのが見てて辛い…。
(もう潮時かな…)
進藤の部屋に泊まるのは、今日で最後にしようと決めた。
●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「進藤、終電前だしそろそろ帰るね」
良い局面だから打ちたいけど仕方ないよね。
「泊まっていけよ」
えっ?
今まで泊まっていけなんて言ったことないのに急にどうしたんだ?
「これ打ち切りたいしさ。それに…」
「それに…?」
進藤は碁盤に視線を向けたまま…。
「オレも塔矢のこと好きかな…って/////」
えっ……。
今、なんて?
進藤が僕のこの好き?
嘘?
(…………………………)
信じられなくて…涙が出てきて…嬉しくて…。
「…………しししし進藤〜〜〜〜〜」
気が付いたら進藤に抱きついてた。
「おおいっ!碁盤が」
「あっ…」
回りを見ると碁盤がひっくり返って碁石が床に散らばっている。
無意識に碁盤を避けて引っ掛けたか、乗り越えようとしたのか解らないけど。
「……ごめん」
僕は慌てて進藤上から離れた。
「まあ、並べ直して続き打てば良いか」
苦笑いしながら進藤が言った。
(恥ずかしい…/////)
顔から火が出てる気がする。
多分、今、僕の顔は真っ赤だと思う。
僕としたことが…。
進藤に抱きつくなんて…。
進藤に好きかな…って言われたことが嬉しくて…つい。
今まで頑張ったからたまには許されるよね?