(いつ見てもでっかいな…)
いつ来ても見上げてしまうわ。
「社、いやっしゃい」
「世話になるで。はい、これ土産」
「ありがとう」
北斗杯で初合宿してから塔矢家で進藤、オレ、塔矢で定期的に合宿するようになったやけど、ホテル代と食事代が浮くし、最新の棋譜を検討出来るってことでオレにとっては願ったり叶ったりや。
「ツキよりノビだ」
「絶対ここでツイだ方がいい」
「攻めるだけだと駄目だろう」
「攻めるタイミングを間違えたら地合いが悪くなるだろう」
等々…。
この不毛な言い合いがなけらばいいやけどな。
は〜〜〜あ。
さっき願ったり叶ったりって言うたけど撤回したくなるわ。
まあ、進藤はともかく塔矢のこんな姿を見られるのは約得かとしれんけどな。
(ファンの人等には見せられへんな)
●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「塔矢の手作り飯はいつ食うても美味いわ」
ほんま上手い。
ぶっちゃけ俺の彼女より美味いかもしれん。
「褒めてくれて嬉しいよ」
「碁も強うて料理も美味い、塔矢は良い嫁さんになりそうやな」
「そうかな…」
塔矢が照れとる。
これも普段は見られへんやろな。
良いもん見たわ。
「社が持って来てくれたチーズケーキ持ってくるね」
そう言って、塔矢が台所に消えた途端に進藤が話しかけてくる。
「社、お前、もしかして塔矢狙いか?」
進藤が対局中か?っていうぐらいの視線で、オレを睨んどる。
お〜〜怖っ?
「ちゃうわっ!あんな気の強い女ゴメンや。オレ彼女おるし」
「どうだか…」
「美味しかったら褒めんのは当たり前やろ。タダ飯やし」
まだ睨んで来おる。
「………」
「疑り深い奴やな。何をそんなに気にしてん。もしかして自分、塔矢のこと好きなんか」
もしかして?と思って突っ込んでみたら、進藤があからさまに慌てだした。
「なななな何言ってんの?そんなに訳ないだろ!塔矢はただのライバル」
「どうやろな」
そこまで慌てるってことは…そう言うことちゃうん?
進藤、無自覚なんか?
「早く気付かんと後悔するで」
「何を?」
「さあな」
オレが言えるのはこれだけや。 自分で気付かんと意味あれへんし。 でもはよ気付かんと、どっかの誰かに取られてしまうで。
まあ、塔矢も明らかに進藤のこと好きみたいやし、取られる心配は少なそうやけどな。
進藤も塔矢も碁が絡むと進藤にグイグイいくくせに、恋愛やと途端に受け身になるってなんやねん。
ほんまややこしいな…。
お前等、とっととくっついてまえ!