「あああああ~~~~っっっ!!」
塔矢と対局中、ふと時計を見たオレは悲鳴をあげた。
「おいっ!塔矢!」
「…対局中は集中しろ」
「それどころじゃない!終電終わってる」
「えっ?」
碁盤に向かっていた塔矢の視線が時計に向いた後固まってた。
「あ………」
オレが1人暮らしをするようになって、碁会所だとお客さんがいるから落ち着かない時があるし、塔矢の家は先生達がいると長居は出来ないということで(塔矢の家はオレの身が持たない)、オレの部屋で打つようになったんだけど、塔矢に何かあったら大変だということで、必ず塔矢を家まで送ってたんだけど…。
対局がメチャクチャ白熱して、時間を確認するの忘れてたんだよ。
やってしまったっっ!!
(どどどどどうしよう〜〜)
タクシー使うが?
でもこの辺タクシー捕まらないんだった。
緒方さんか芦原さんに迎えに来てもらうか。
「泊めてくれればいいじゃないか」
「へっ?」
オレがグルグル悩んでたら、塔矢が涼しい顔で言ってきた。
オレ、間違いなく変な声出た。
で、1分以上は固まったな。
「本気で言ってる?」
「もちろん」
きっぱりと言い切っる塔矢。
逆に頭が痛くなるオレ。
「あのなぁ、オレの部屋にお前が泊まるのは不味いだろう」
「どうして?」
「オレは男なんだぞ」
「だから?」
「ああっ、万が一があったらどうするんだよ」
「進藤は、そんなことしないだろ」
「……」
オレを信じてくれるのは嬉しいよ。
でも、オレだってそういうことに興味がある18の男なんだぞ。
オレだって我慢の限界が来るかもしれないんだぞ。
あっ、もしかしてオレ男として見られてない?
それはそれでショックなんだけど…。
「緒方さんか芦原さんに迎えに来てもらうとか?」
「嫌だ!」
「なんで?」
「今後君と腕なくなる」
「そんなわけ…な」
あり得る…あり得る…。
このことが緒方さん達にバレたら……考えるのやめた。
「さあ、解ったら続きを打つぞ」
「………」
塔矢は何事もなかったように碁盤に向かう。
こんなドキドキした状態でまともに打てる訳もなく…オレの負けだった。
その後、塔矢にはベッドに寝てもらってオレは床で寝た。
塔矢が家に来るから掃除して、なんとなくでベッドのシーツを換えた半日前の自分を褒めたい。
あっ、言っとくけど下心なんてないよ。
(寝れない…)
近くで塔矢が寝てるとおもうと、ドキドキそわそわして眠れない。
益々、目が冴えるよ〜。
(朝まで頑張れ!オレ)
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「進藤、いつまで寝てるんだ」
「えっ?塔矢」
なんで塔矢がここに?
…って一瞬思ったけど寝惚けてました。
塔矢は昨日俺の部屋に泊まったんだった。
寝れない…とか思ってたけど、ちょっとだけ寝てたらしい。
身体痛い…。
「朝ごはん作ったけど食べる?」
「えっ?」
「泊めてくれたお礼だよ」
塔矢が朝ごはん作ってくれた?
ヤッターーーッッッ!!!
塔矢の手料理なんて、北斗杯の合宿以来だ。
塔矢の料理、美味いんだよな。
ウキウキしながらテーブルに行くと、美味しそうな塔矢の手料理が並んでいた。
オレはニコニコしながら塔矢の手料理を平らげた。
やっぱり塔矢の料理は美味いな〜。