「え~~~~お前、成人式出ないの?」
「ああ、友達もいないし…出ても意味はない」
コイツ…俺と違って小学校…いや下手すりゃ幼稚園から囲碁浸けだもんな…。
ああ…塔矢の振り袖姿観たかったな……。
よしっ!こうなったら押しきるしかない!
「じゃあさ、せめて振り袖姿見せて!」
「成人式に出ないのに着ても意味はないだろ」
意味なくない!!!
お前の振り袖姿、絶対!キレイだって!
目の保養になるって!
絶対、見たい!
拝みたい!
まだ1度も見たことないんだから。
「俺が見たいの!お前の振り袖姿!新年の仕事でもスーツばっかりだし…。たまには俺の希望を聞いてくれても良いじゃん」
そうなんだ……。
着物で……ってお願いされたイベントでもスーツで来るんだよ。
普通ならイベント主催者からクレームが来たりすんだけど、囲碁界の宝、塔矢アキラ様、後援会の会長も大きいスポンサーだったりするから誰も何も言えない。
「………考えておく……」
明らかに渋ってる感じ。
これは、あと一押しいるかな……。
明子さんに頼んどこ。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
そして、成人式当日。
俺は期待して…でも期待しないようにして……そんなことを考えてるうちに成人式が終わった。
もちろん元クラスメートとの会話も上の空。
「ッッッッッ!!!」
会場を出たら振り袖で着たキレイな人がいるよ……。
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
塔矢だよ!!
振り袖姿の塔矢が目の前に居るよ!
夢じゃないよな!!
本物だよな??!!
明子さんナイス!!!
有り難うございます!
「良かったね、夢が叶って……」
「……………」
固まって放心してるオレの横を、あかりがカメラを持って通りすぎた。
「アキラさ~~~ん写真撮らせて!! 」
「あの女性誰?」
「紹介しろ」
「めちゃくちゃ美人じゃん!!」
「あんな美人とお前が知り合いなんてあり得ん!!」
誰が教えるか!!
あり得ん……とか言ったの誰だ。
塔矢はオレのもの……じゃ……まだないけど……いつかは……な。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「ヒカルさんのお陰で、アキラさんの振り袖姿が見れて良かったわ」
「俺の方こそ……。あかりが写真撮ったんで出来たら持っていきますね」
放心し過ぎて写真を撮り忘れたオレ……。
あかり、お前もナイスな!!!
「楽しみにしてるわ♪」
俺と明子さんの間でそんな会話があったなんて、もちろん塔矢は知らない……。