PEOPLE DON'T LOOK 01
(ヒカルサイド)

オレとアキラが結婚してから棋士や囲碁関係者の間で、俺達のこと勝手に想像して色々噂してる奴等を見かけるようになった。
今日も、飽きずやってる。



「塔矢さんて家事とかしなさそうだよね」
「塔矢さんが家事してるトコなんて想像できないよ」
「全部、進藤さんに押し付けてそう」
「命令だけしてたりして」
「私、進藤さんが対局後に空港まで迎えに行ってるの見たことあるよ」
「それ、塔矢さんが「迎えにこい!」ってワガママ言ってるんだよ。絶対!」
「お手伝いさん雇ってるとか」
「あの夫婦の収入なら、お手伝いさん雇えるよな…」
「塔矢さんと結婚するなんて勇気あるよな…。塔矢先生が義父なんて、オレは絶対無理!」

おいっ!お前ら黙って聞いてれば、勝手な事ばっかり言いやがって!!
聞こえてくる噂話に、オレの怒りは最高潮!

「気持ちは解るけど、落ち着け。進藤」

一緒にいた和谷が俺の肩をポンと叩いて来た。

「そういえば、お前も家に遊びに来るまで、アイツらと同じようなこと思ってたよな」

行き場のないオレの怒りは和谷に向かう。
ああ…八つ当たりだよ。

「ハハハ…。それは昔のことだろ」
「昔って、まだ半年前だろうがっ!」

半年前、オレとアキラが入籍した時、お祝いだって言って、院生組が家に来たんだけど、アキラが料理する姿を見てビックリしてたんだよな…コイツ。
更に、アキラの手料理に感動して、メチャクチャ食べてたし…。

それまでは「御愁傷様」って言ってたくせに、その後は「羨ましい…」って言い出しやがって…。
調子の良いやつ。
そのうち、しげ子ちゃんに言い付けてやるからな!

「心の狭い男は嫌われるぞ」

煩いぞ!和谷。
アキラ以外になら嫌われても良い!
オレはアキラ一筋だからな!
愛する妻の悪口を言われて、心を広く持てる男がいたらお目にかかりたいね。





●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇





「ただいま」

家の玄関を開けると美味しそうな匂いが漂ってくる。
今日の飯も期待大だな、

「おかえり。もうすぐご飯出来るから、先にお風呂入って」
「おう」

おおっ、今日の夕飯は和食か…。
旨そう♪
早速、つまみ食いっと…。

(旨いっ!!!)

アキラの料理は世界一だ。

「こらっ!行儀が悪い」

あっ、またバレた。
後ろ向きなのに何故か、いつもバレて怒られるんだよな…。

「さっさと風呂に入ってこい」
「は~い」

怒られるのも嬉しいから、つまみ食いはやめられない。

「♪~♪~♪」

いや~正直言って、アキラがこんなに料理が上手いなんて、思ってなくてさ。
初めてアキラの手料理を食べた時、旨すぎてしっかり胃袋を捕まれてしまったオレは、元々好きだったこともあって、アキラに告白したんだ。
OK貰って、初めて1人暮らしのオレん家に来た時は、あまりの散らかりぷりにメチャクチャ怒ってたってのが…お約束だけど。
その後、しっかり片付けてくれて洗濯してくれて感動したっけ。
まあ、しっかりと洗濯や掃除のやり方を叩き込まれたりしたけど、アキラと一緒になると思えば苦にならなかったな。
料理も家事もアキラには及ばないけど、それなりに出来るようになったし。

アキラな何もしないとか…オレに命令だけしてるとか言ってた奴に言ってやりたい!
アキラはな、料理も洗濯も家事もメチャクチャ上手いんだそ。
でもって、夜の生活は可愛いんだそ!
オレと付き合い初めて、服とか下着とか化粧に力を入れ出しだだぞ!
仕事の時は余計な詮索されたくないから「碁以外は興味ありません。お洒落なにそれ?」って、ふうに見せてるだけなんだぞ。

…って。

でも、これはオレだけが知ってれば良いことだよな。
旦那の特権♪
それに、そう思われてるってことはアキラの作戦勝ちってことだし。

「あっ!ヤバい…太ったかも?」

風呂に入ろうと服を脱いで、鏡に映る自分の姿を見て気付くオレ。

これは、幸せ太りってヤツだな。
アキラの美味しい手料理を食べてたら食欲沸いて止まらないから、太らない方が可笑しいよな。
うん!


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