ビックリし過ぎて不覚にも、倒れてきまった私。
初対面…しかも義理の娘になるかもしれない人に介抱されるなんて…。
「ヒカル、おば様を運んで」
「おおう…」
ヒカルにリビング運ばれるなんて情けないわ…。
「こういうのは順序立てて言うものだろ。それを君は…」
「だって、早く知らせたくてさ…」
「だからって……」
塔矢さんが呆れながら小言を言っている。
「反対されると考えないのか?」
「ないない…それはない」
ヒカル…凄い自信ね。
塔矢さん…。
しっかりしていて、本当にヒカルには勿体ないぐらい。
(塔矢さん…本当にヒカルで良いの?)
塔矢さんなら、もっと良い人いたでしょうに。
もちろんヒカルも良い男には違いないけど、やっぱりヒカルには勿体ないと思うわ。
その日の夜。
夕食時に正夫さんにヒカルの結婚と塔矢さんの妊娠を伝えた。
「ヒカルも結婚か…早いな…」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ」
塔矢さんは妊娠してるのよ。
「まあ、ちょっと早いとは思うけど、責任を取って結婚するって言ってる訳だし良いじゃないか」
あ~~本当に呑気ね。
塔矢さんのご両親が反対してるとか怒ってるとか考えないの?
こういう所はヒカルに遺伝したのかしら。
お義父さんなら碁に詳しいから、明日聞いてみよう。
翌日、正夫さんほ父親であるお義父さんに話すと…。
「塔矢アキラじゃとっ!?」
凄い大きい声が帰ってきて、私の方がビックリしてしまった。
「囲碁界の重鎮、塔矢行洋の1人じゃないか!塔矢アキラプロに手を出したら、ヒカルは囲碁界にいられないかもしれないぞ」
「えっ?」
お義父さんの話を聞いて、また驚いた。
(そんな凄い人と結婚する気なの?)
私は慌ててネットで塔矢さんに調べてみた。
プロフィールを見ると囲碁のタイトルについては殆ど解らないけど、「タイトル獲得」「〇〇杯優勝」文字が並んでるのを見て凄いことだけは解った。
そして、ヒカルのことをライバルだと認めてると書いてあった。
父親が五冠?…ああタイトルを5つ持ってるってことね…引退後も中国チームと契約して活躍していて、今でも囲碁界の重鎮……。
……………。
検索一覧の頭に表示されていたページを読むうちに、気持ちが焦ってきた。
これって、急いで挨拶に行った方が良いんじゃないの?
こんな大事なことは先に言いなさいよ…ヒカル!
私は塔矢さんの自宅を、どうにか知ることが出来て、慌てて菓子折りを持って訪ねることにした。
ちなみに、今まで棋士としてのヒカルのプロフィールはしっかり見たこのは無かったんだけど、ついでに思い切って見てみたら、塔矢さんと似たような感じで「タイトル獲得」「〇〇杯優勝」文字が並んでいた。
どおりで、大金が振り込まれていた訳ね…。
ヒカルから聞いてはいたけど、いまいちピンときてなかった。
正夫さんの年収越え始めてたのも納得だわ。
貯まったお金で1人暮しを始めたのよね。
こんなことになるなら、もっと反対するべきだったわ。
私は1人暮らしを許可したことを後悔していた。
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「…ここよね?」
大きい…大き過ぎる…!
うちとは全然格が違う。
やっぱり凄い家なんだ。
足と手が震える。
震える手で玄関のチャイムを押そうとした時、後ろから声をかけられた。
「あら?うちに何か…?」
振り向くと、買い物帰りだと思う女性が立っていた。
「もしかして、ヒカルさんのお母様?」
「えっ?あ…はい…」
「まあまあまあ、よくいらしてくださったわ。お会いしたいと思ってましたの」
あっ、この人…塔矢さんに似てる?
もしかして、塔矢さんの母親?
「はじめまして、塔矢明子と申します」
あっ、やっぱり。
「ああの…進藤美津子と申します。この度はヒカルがとんでもないことをしてかしまして、申し訳ありません」
私は、土下座しそうな勢いで頭を下げていた。