GIRLS TALK 01
(あかりサイド)

「塔矢さん、こっち、こっち」

塔矢さんに気付いてもらえるように手を振っていると、塔矢さんが私に気付いてこっちに歩いてくる。

「ごめん…待たせたかな」
「大丈夫たよ」

塔矢さんに食事に誘われた。
出会った頃の私からは考えられない。
出会った頃は、私にとって塔矢さんは、ヒカルを奪う女(ひと)だったから…。
でも、2年前ぐらいに参加した碁のイベントで塔矢さんに助けられて、お礼に食事に誘ったら色んな話で盛り上がって、今は友達というか親友って感じ。

「せっかくの休みなのに、ヒカルと一緒じゃなく良いの?」

ヒカルと塔矢さんは、碁の関係者や両親にはカミングアウトしてたいけど付き合ってる。
付き合い始めたと教えてくれた時、悲しいとか…悔しい気持ちはなくて、良かったな…って思ったんだ。
塔矢さんだったら、諦めた甲斐があるもん。

「ヒカル、広島に行ってるから…」

塔矢さんの言葉で思い出す。
ヒカルが今、本因坊タイトルに届きそうなことを。

「あっ、明日、本因坊挑戦手合いだったね」

塔矢さんは明日、こっちで手合いがあるから広島には行けないんだ。
2人のファンやってるから、スケジュールは確認済み。

「本当は行きたいでしょ?」
「もちろん…でもしょうがないよ…」

ヒカルがこっちに帰ってきたら、今度は塔矢さんが地方に……。

「見事にすれ違いのスケジュールだよね~。そのうち棋院のスタッフさん馬に蹴られるよ」
「ハハハハハ……」

笑いごとじゃないと思うよ…塔矢さん。





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「藤崎さん、どう?大学生活」

おしゃれなお店で昼ごはんを食べることにした私達、もちろん食事しながらお互いの近況報告なる。

「友達も出来たし楽しいよ。碁が趣味だって言ったらビックリされるけど」

碁はハマると面白いのに、どうしてもおとしよの遊びというイメージが強い。

「碁はマイナーだからね」

「でも、ヒカルの名前出したら、皆食いついてきてビックリだよ」

ヒカルは最近、碁とは全く関係のないファッション雑誌にモデルとして当時するようになって、芸能人並みの人気になってる。
幼馴染みとしては、なんだか複雑なんだよね。
これも、碁を普及させたい人達の策略なんだろうな…。

「僕としては複雑なんだけど…」

彼氏が女性にもてるなんて、複雑というか腹が立つ以外ない。

「皆が、カッコイイ!ってキャーキャー言ってるの見てるの、中身は残念なヤツだよって言ってやりたくなるのよね~~」
「確かにね~~」

塔矢が笑っている。

塔矢さんとプライベートで過ごすヒカルは、とっても甘えん坊らしい。
あと…コホン…そういうことも確り致してるらしく…。
塔矢さんってそういうのドライなイメージあったから、意外とノリノリでビックリした思い出が……。
そううち、授かり婚でもするんじゃないかとヒヤヒヤしてる…。
まあ、この2人ならお金の心配は要らないだろうけど、美津子おばさんが卒倒するだろうから止めてほしいな。
そしたら、うちにとばっちりが…。

あっ、モデルで人気があるのは、ヒカルだけじゃなくて塔矢さんもなんだよ。

「塔矢さんも、大学の男性陣に人気だよ。きれいなモデルだ。お近づきになりたいって」」
「だから嫌なんだよね…ああいう仕事」
「塔矢さん着飾るの好きじゃないもんね」

今日もそうだけど、会う度に着てるのはシンプルな物ばかりで、可愛いのも似合うと思ってお店に引っ張って行ったこともある。

「普及の為と言われて仕方なくだからね」

ファッション雑誌でモデルをやったからといって、囲碁人口が増えるとは思えないんだけど。

「あっ、それから囲碁部あったんだよ」
「へぇ……」
「で、部長さんがいい感じの人で……」
「彼氏候補?」

うわ~~塔矢さん…そんなにハッキリ言わなくても……。

「まあ……そうなったら良いな…とは思ってるけど…」

うわ~~照れるよ~~。

「頑張って」
「うん」
「もし良かったら指導碁行ってあげるよ」
「そんな悪いよ~。塔矢さんをダシに使うなんて…」

忙しい塔矢さんにわざわざ来てもらうなんて恐れ多い。

とか思ってたら、塔矢さんから飛んでもない言葉を言う。

「藤崎さんの好きな人、見たかったな…」

ととととお塔矢さん。こんな性格だったけ?
よく知らないけど…。
ヒカルに感化されて、色々変わっちゃったのかも。


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