FORGIVENSS 02
(アキラサイド)

「えっ?」

18の誕生日を過ぎた頃、僕はお祖父様に呼び出されて、とんでもないことを聞かされた。

許嫁?なんだ?それは。

「アキラが生まれた時、親友の孫が男と聞いた時に、お互いの孫を結婚させようと2人決めたんだよ」

何を勝手に決めてるんですか。
どこの馬の骨か解らない男と結婚するなんてゴメンだ。

「アキラは碁が好き過ぎて、結婚どころか彼氏も作らなそうだしな」

…しし失礼なっ!
なんてことを言うんですか!
僕には進藤ヒカルという立派な彼氏がいるんですよ。
碁第一な僕に嫌な顔をしないで…寧ろ楽しそうに打ってくれるんです。
まあ、碁以外はダメな所もあるけど…。
でも、僕にとっては素晴らしい彼氏なんだ。

「とにかく今度の日曜日、空けておくように」

どうしてお祖父様が僕の休暇を知ってるんですか?
お母さんに聞いたのか?

(その日はヒカルも休だから、デートしよって約束してるのに…)

何とか断お祖父様からの誘いを断る方法はないかと、必死に考えてお母さんにも相談したけど、お母さん以上のマイペースだから、断れる筈もなく…日曜日になってしまった。

(本当なら今頃、ヒカルとデートしてる筈なだったのに…)

久し振りのデートを断ったらヒカル拗ねるだろうな…どう宥めよう…と困ってたんだけど、ヒカルも用事があるみたいで、あっさりデートがキャンセルなって拍子抜けしてしまった。
喧嘩にならなくて良かったと思いつつ…。

(僕達って、けっこうすれ違うよね…)

憂鬱な気分のまま、お祖父様に連れられて、相手の家までやってきた。

「お~~い…進藤いるか?」

暫く待っていると中から人が2人出て来た。
お祖父様の友達と思われる人に引きずられるようにして来た男の人の頭に、凄く見覚えがあるんだけど。

えっ?あのツートンカラーの頭はもしかして?

「ヒカル?」
「アア…アキラ?なんでここに?」

僕の彼氏、進藤ヒカルが、間抜けな顔で経っていた。

「許嫁の家に行くって、お祖父様に連れてこられんだけど…」

もしかして、僕の許嫁って、ヒカルなのか?

「もしかして、進藤ヒカル君かね?」
「塔矢アキラさん?」

僕が驚いている隣で、お祖父様達が驚いた感じの顔で、ヒカルであることを確認してる。僕もヒカルのお祖父様に聞かれて、僕は頷いた。

すると、それから少しの沈黙の後…

「なに~~~~っっ!!」

…お祖父様達の叫び声が響いた。






「そうか…そうか…。2人は付き合っていたのか。アキラ…何故言わなかった?」

お祖父様達が落ち着いた後、僕達が付き合ってるのとを話した。

「話す機会なんてなかったじゃないですか」

勝手に話を進めてたのは、お祖父様でしょ。

(ヒカルとのデートを駄目にしておいて…ニコニコして…)

……あ~なんだか腹が立つ。
多分、今、僕の顔は険しくなってると思う。

「ははは…悪かった。そういえば、明子が「囲碁第1主義なアキラさんに着いていける男性が現れたの」って、ウキウキしながら連絡くれたことがあったが、まさか進藤君のことだったとは…」

お母さん…お祖父様に何を話してるんですか。
というか、聞いていたなら許嫁なんて断ってくださいよ。

「おいっ!賀茂…塔矢さんが孫だなんて聞いてないぞ」

お祖父様…ヒカルのお祖父様に何も話してなかったんですね。

「お前こそ、進藤君が孫だと何故言わなかった?」

それは、ヒカルのお祖父様も同じみたいだけど。

「名字で気付けっ!」
「無理だ!お前から進藤君は想像出来ん」
「何だと~」
「まあ、それはともかく…こんなチャンス滅多にないからな…」

興奮してるヒカルのお祖父様を見向きもしないで、コソコソと鞄から何かを取り出している。
何してるんだ?

「サインもらえるかな」
「あっ、はい」

えっ?サイン。
お祖父様、ヒカルのファンらしい。
知らなかった…。

「来期こそ、本因坊獲ってくれるのを楽しみにしてますよ」
「フン、ヒカルに本因坊なんぞ、まだまだ早いわ」
「なにを言う。今期も惜しい所まで行ったんだぞ。孫の活躍を素直に喜ばんか」
「フン!」

挑戦手合の最終局で負けたからね。
暫く落ち込んでたけど、すぐ立ち直って「来年こそは絶対獲る!」って意気込んでるけど。
僕も挑戦者目指して頑張ろう!

この後も、お祖父様達の言い争いは続いて、後には子供の頃の恥ずかしい話合戦になって…聞いてる僕が恥ずかしくなりそうな内容だった。

まあ、お祖父様の意外な一面が見られて楽しかったかな。






●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






「まあまあまあ、お父様が話してたアキラさんの許嫁って、ヒカルさんだったの。心配して損したわ」

家に帰って許嫁がヒカルだったことをお母さんに伝えたら、とても喜んでくれた。

「相手がヒカルさんと判ってたら、アキラさんに飛びっきりのお洒落をさせたのに…リクエストされてる着物とか…残念だわ」

今日は断るつもりだったから、嫌われるようにと仕事用のスーツで出掛けたんだよね。

「うわ~~~残念」
「来年のお正月にはアキラさんの干物姿見せてあげるから、楽しみにしてて♪」
「はいっ!」

母の宣言に一気に明るくなるヒカル。
僕の気持ちは一気に重くなる。
ヒカルに着物姿を見せたくない訳ではないけど…正月早々お母さんのパワーに巻き込まれると思うと…憂鬱だ…。





その後の話を少ししておくと、お祖父様は時間があるとヒカルを呼びつけて、指導碁を打ったりしてるから、僕と会う時間が殆ど取れなくなるんだよ…。
僕もヒカルも忙しくて、なかなかデートの時間が取れないのに…お祖父様のせいで、益々ヒカルといる時間がなくなるなんて辛くて、お祖父様に抗議したら…。

「ヤキモキを焼くアキラが見れるとは…。これからも進藤君を呼ぼうかのぅ」

って、ニコニコ笑ってて…。

(ワザとだ…。僕をからかってるんだ…)

なんだかムカついた僕は、ヒカルに八つ当たりしてしまうのだった…。


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