「まさか僕の許嫁がヒカルだっとはね…」
「それは、こっちのセリフだぜ」
じーちゃん達の言い争い…というか…じゃれあいが長くなりそうだから、オレとアキラはさっさと逃げてきた。
元々デートする筈だったしな。
「それにしても…ヒカルが袴着てるなんて…驚いた」
「じーちゃんが和服にしろって煩くてさ…」
それでなくても嫌なお見合い?…顔合わせ?…なのに、無理矢理袴着せられて、イライラしてたんだよな。
「タイトル挑戦手合も本因坊戦以外は、袴なんて着ないのにね」
「そういうお前こそ、そのスーツ…仕事モードじゃん」
「断るつもりだったし、この格好なら相手呆れて断ってくれると思って。お祖父様には怒られたけどね」
だろうな…。
着替える時間が出来ないぐらい、待ち合わせギリギリに行ったとか。
もちろん明子さん公認。
アキラも色々考えたんだな。
「それにしても…お祖父様がヒカルのファンだったなんて」
「オレもビックリ…」
しかも、アキラの婿になってくれないかな…と思ってたとか。
アキラのじーちゃんの夢が叶うんだな。
オレは、何があってもアキラと結婚するつもりだから!
「アキラ…」
「うん」
「オレと結婚してください!」
「それって、プロポーズ?」
「おう、今すぐしゃなくても良いんだけど…、まだ恋人気分味わいたいたいし…」
本因坊を獲るまで我慢と思ってたけど、なんか言いたくなったんだよな…。
「良いよ…。僕もヒカル以外は考えられないから」
どうプロポーズするか考えてたのに、意外とあっさり終わってしまった。
「でも、やっぱり暫くこのままで居たいかな…。結婚なんて言ったらお母さん達が暴走するから…」
「あ~」
明子さんだけじゃなくて、アキラのじーちゃんも入ってくるもんな…。
このままで居たい気持ちも解るかな。
アキラの気持ちを最優先に考えよう。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「ここは、踏み込むより守った方が良いですよ」
「おお、そうか」
あれから数ヶ月。
只今、アキラのじーちゃんに指導碁中。
「ヒカル君に指導して貰ってるお陰で、平八との対戦も勝率が上がってな、あやつの悔しがる顔を見るのが楽しくてな」
アキラのじーちゃんの嬉しそうな顔…。
じーちゃんも「アイツには負けん!」って鼻息荒く碁の勉強してるし…2人共、負けず嫌いだよな~。
さすが、オレ達のじーちゃんってとこか。
あの顔合わせの時がら、交流が再開して、対局にも熱が入ってるみたいだ。
「お祖父様っ!」
オレがアキラのじーちゃんにアドバイスしてる所に、アキラが凄い剣幕で現れた。
あ…地下鉄の駅でアキラに見つかった時を思い出すな…。
「おお、アキラ…どうした?」
アキラのじーちゃん…涼しい顔してるけど、そういう顔が、アキラを益々怒らすんだよな…。
「ヒカルと僕の休みが合う時だけ、ヒカルを呼びつけるの止めてくれませんか」
「アキラの、そんな顔を見れるのなら何度でもやってやるわい」
「~~~~~~~」
あっ、アキラの顔が益々険しくなっていく…。
「小さい頃は可愛い笑顔や色々な表情を見せてくれたのに、最近は固い表情ばかりで寂しかったが、ヒカル君のお陰で、怒ってるアキラを見れて楽しいくてな」
…って、ニコニコしながら言ってたけど…。
「なあ、アキラのじーちゃん。色々、かまおうとするから警戒されてるんじゃないの?」
…なんてことは思ってても、怖くて口には出来ない。
不機嫌になったアキラを宥めるのは、けっこう骨が折れるんですど。
まあ、不機嫌になったアキラを宥めるのは嫌じゃないけどさ。
そこも確り、アキラのじーちゃんには バレてるみたいなんだよな…。
(さすがは、明子さんの親父さんだよな…)
「ひ孫楽しみにしておるぞ」
そう言ってニコニコ笑うアキラのじーちゃん…。
明子さんに似てる気がする…。