「はああああ~~許嫁?なんだよ…それ」
18になった年の12月。
じーちゃんに呼び出だされたオレは「また碁の相手されられるんだろうな。いい加減、素直に置き石おけよな」と思いながら、家に行って佐為に挨拶を済ませた後、ビックリなことを聞かされたんだ。
「親友の孫が女の子と聞いた時に、2人で決めたんじゃ」
オレに許嫁?冗談たろ?ただのサラリーマン家庭だぞ。
「オレ、許嫁なんてゴメンだぜ。てか彼女いるし」
「どうせ、チャラチャラした彼女だろ。別れろ…別れろ」
なに勝手に決めてんだ。
オレの彼女は、あの塔矢アキラなんだぞ。
ライバルと認めてもらうのも苦労したけど、付き合うまでには、もっと大変だったんだそ。
こんなバカな理由で、アキラと別れるなんて絶対嫌だ!
…つーか、何があっても別れないぜ!
「とにかく今度の日曜日、空けておけよ。休みだじゃろ」
なんで、じーちゃんがオレのスケジュール知ってるんだよ。
(その日はアキラも休みだから、2人でデートしよって約束してるのに…)
オレ達の休みが重なるなんて、滅多になにんだぞ。
何とか断る方法はないかと必死に考えたんだけど、じーちゃんを説得出来るような手はなくて、日曜日が来てしまった…。
(本当ならアキラとデートしてる筈なだったのに…)
なんで、こんなところにいるんだよ…オレは!
そういやデートキャンセルで絶対怒られると思っていたら、アキラも急用が出来たとか言って怒られずに済んだんだっけ。
「お~~い…進藤いるか?」
せっかくアキラとデート出来る貴重な日を潰さらて不貞腐れてると、玄関から声がした。
「おお…来たか。行くぞ、ヒカル」
じーちゃんに引っ張られて玄関にいくと、信じられない人が立っていた。
「ヒカル?」
「アア…アキラ?なんでここに?」
「許嫁の家に行くって、お祖父様に連れてこられんだけど…」
もしかして、オレの許嫁って、アキラなの?
「もしかして、進藤ヒカル君かね?」
「塔矢アキラさん?」
じーちゃん達の聞かれて、頷くオレとアキラ。
すると、それから少しの沈黙の後…
「なに~~~~っっ!!」
…じーちゃん達の叫び声が響いた。
じーちゃん達が落ち着いた後、オレ達が付き合ってるのとを、じーちゃん達に話した。
「そうか…そうか…。2人は付き合っていたのか。アキラ…何故言わなかった?」
「話す機会なんてなかったじゃないですか」
アキラ…もしかして期限悪い?
まあ、デートが潰れたんだもんな…気持ちは解るぞ。
「ははは…悪かった。そういえば、明子が「囲碁第1主義なアキラさんに着いていける男性が現れたの」って、ウキウキしながら連絡くれたことがあったが、まさか進藤君のことだったとは…」
明子ってことは、明子さんの方のじーちゃんなのか。
なんか明子さんと感じが似てるかな?
「おいっ!賀茂…塔矢さんが孫だなんて聞いてないぞ」
「お前こそ、進藤君が孫だと何故言わなかった?」
「名字で気付けっ!」
「無理だ!お前から進藤君は想像出来ん」
「何だと~」
「まあ、それはともかく…こんなチャンス滅多にないからな…」
沸騰してるじーちゃんをする無視して、アキラのじーちゃんはオレに笑顔を向けた。
えっ?何?
オレ、なんか言われるの?
「サインもらえるかな」
えっ?サイン…。
何を言われるかドキドキしてたのに、サインかよ~。
緊張して損した。
「あっ、はい」
アキラのじーちゃんに手渡された色紙にサインする。
…なんか、いつも以上に緊張するな。
後でアキラに教えてもらったんだけど、アキラのじーちゃんはオレのファンらしい。
マジ?!
「来期こそ、本因坊獲ってくれるのを楽しみにしてますよ」
「フン、ヒカルに本因坊なんぞ、まだまだ早いわ」
「なにを言う。今期も惜しい所まで行ったんだぞ。孫の活躍を素直に喜ばんか」
「フン!」
挑戦手合の最終局で負けたからな…。
来年こそは絶対獲る!
てか、じーちゃん…普段はメチャクチャ応援してくれるのに、なんで今日に限ってああな訳?
じーちゃん達の言い争いは、この後も続いたんだけど、最後には子供の頃の恥ずかしい話合戦になって、なかなか面白かったな。
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「まあまあまあ、お父様が話してたアキラさんの許嫁って、ヒカルさんだったの。心配して損したわ」
アキラの家に行って許嫁がオレ達だったことを話すと、明子さんは、とても喜んでくれた。
「相手がヒカルさんと判ってたら、アキラさんに飛びっきりのお洒落をさせたのに…残念だわ」
今日は断るつもりだったから、嫌われるようにと仕事用のスーツにしたらしい。
アキラの着物姿見たかったな…。
ちょっと落ち込む。
「来年のお正月には、アキラさんの振袖姿見せてあげるから楽しみにしてて♪」
「はいっ!」
来年の正月楽しみだなぁ……って、おいっ!なんだよアキラ、その嫌そうな顔は…。
あっ、そうそう…更にその後の話なんだけど、アキラのじーちゃんに呼ばれることが多くなって、アキラと打つ時間が減って、アキラがキレたりするんだよな…。
「ヤキモキを焼くアキラが見れるとは…。これからも進藤君を呼ぼうかのぅ」
って、アキラのじーちゃんは楽しそうだった。
けど…。
(あとの八つ当たりが怖いから、止めてくれ…)
って思ったオレだった…。