あ~~~~うっかり人生終えてしまったっっっ!!
車に跳ねられそうな子供を助けて、事故にあっちゃったんだよ!
まだ19だぞ!
本因坊取ったばかりだぞ!
塔矢にお付き合いの申し込みをする予定だったんだぞ!
しかも今日!
渡す筈だったプレゼント(指輪)がポケットに入ってたんですけど。
あ~~~~~~っっっ!!
オレのバカ~~~~ッッッ!!!
オレは塔矢の事が心配で…塔矢への未練も一杯で神の一手にもまだまだなのに、成仏なんか出来るかってことで、幽霊になって現世を彷徨ってる。
オレのことを聞かされた後の塔矢は、見てるのが辛かった。
オレが渡す筈の指輪なんかが出てきたもんだから…塔矢の名前入れたから誰宛か解っただろうし。
「塔矢…」
オレは今日も塔矢をずっと見ていた。
時間さえあれば、オレが渡す筈だった指輪眺めてる塔矢。
聞こえないと解ってても、思わず声をかけてしまう。
すると、信じられないことが起きた。
「えっ?進藤?なんで…」
塔矢がオレを見て驚いている。
「もしかして、オレが見えてる?」
「うん」
嘘?なんで?
まあ、見えてるならそれで良いか。
「オレさ…お前のことが心配で成仏出来なかったんだわ」
「君に心配してもらう必要はない」
「嘘付け、ボロボロなクセに……」
「それは…僕を1人にするからだろ。指輪なんか残して。話があるって言うから待ってたのに…」
塔矢が泣き出してしまった。
「待ってたら君が事故(にあったって電話あって……」
あ…塔矢を抱き締められないのが辛い。
抱き締めてもすり抜けてしまう。
「ゴメン…」
「進藤のバカッ…」
オレは塔矢が落ち着くまで傍で見守るしかなかった。
「なあ塔矢、お前が人生終えるまで一緒にいて良い」
「えっ、どういうこと?」
「オレがお前に憑くんだよ。そしたら打ち放題だし24時間365日ずっと一緒」
「良いよ…。僕を一生独身にした責任取ってもらおうかな」
「塔矢…」
塔矢の一生独身宣言に胸が熱くなる。
こんなことなら、早く告白するんだった。
でもって、うっかり人生終えるんじゃなかった。
メチャクチャ後悔~。
こうして、オレは塔矢に憑くことになりました。
オレが身体に入ったショックで、塔矢は半日寝込んだ。
あれ、キツいもんな…。
まあ、塔矢の場合は他の疲れも溜まってたみたいだな。
オレのせいなんだけど。
憑いた最初の頃は色々戸惑うことも多かったけど、慣れてくるとそれはそれは楽しい生活で…。
塔矢は根がメチャメチャ真面目だから、オレのように上手くいかないことも多いけど。
塔矢は益々碁にのめり込むようになって、人付き合いも更に減ったせいで回りからは…
「進藤を失って壊れてしまった」
「囲碁と結婚するつもりなのか」
…とか言われてるけど、実際はオレの住んでたマンションでラブラブな暮らしをしてるから問題ない。
オレは塔矢が人生終えるまで成仏する気はないからな。
神様、そこんとこよろしく!
成仏する時は塔矢も一緒だ。