対戦相手は別だけど、ヒカルと同じ日に関西棋院で対局だなんて、一体何年振りだろう?
移動のスケジュールも同じになって…。
「アキラと一緒で旅行気分~♪」
ヒカルは大喜びでデレデレしてたから「仕事だろっ!」と、思わず怒鳴ったのは許されると思う。
「デートとか2人だけで旅行したい」
いつまで経っても家族旅行とは別に、定期的に言い出す。
「いつまでも、愛されてて羨ましい」
…って、言われるけど、少しでも良いから落ち着いてくれ…と僕は思う。
はああああ~~~。
ホテルでも部屋が同じなのを良いことに…。
5人目はゴメンだからな!
恵ちゃんの家のことバレてるからって、油断してデレデレするのは止めてくれ!
まあ、1人で地方に行くのが初めてで、緊張してた恵ちゃんが…。
「いつもラブラブで羨ましい」
と言ってニコニコしてたから、緊張を和らげることが出来たと思えば…。
いや…それでも、光明達の親としては色々恥ずかしい…。
その恵ちゃんは今、対局の後も対戦相手と楽しそうに話してる。
相手は関西棋院所属の棋士で初対局な筈だけど…知り合いだったのか?
…もしかして、合宿の時に仲良くなったとか?
それにしては、仲が良すぎるような?
(光明といる時より楽しそうな感じが…?)
恵ちゃんに限って、そんなことはないと思うけど…光明以上の人が現れたのかも?
(いやいや…そんな筈は…)
恵ちゃんは、何があっても光明一筋だから心配ない…と信じていても、少し不安で、柱の影から2人の様子を見ていた。
僕が、盗み見のようなことをするなんて…。
これも、光明には恵ちゃんが相応しいと思っているから心配で…と、自分を納得させていた。
「ホントに仲良いみたいだな」
2人のの様子を柱の影から見ていたら、後ろからヒカルの声がした。
「彼のこと知ってるのか?」
「あかりから聞いた。恵ちゃんが小学校に入る前まで、お隣さんだった幼馴染みなんだってさ」
いつの間に藤崎さんと、そんな話してたんだ?
僕は聞いてないぞ。
「名前は桃園啓太。恵ちゃんの兄貴的存在だったらしいぞ。光明のライバル登場かもな」
幼馴染みなんだ…。
幼馴染みの藤崎さんの存在に不安になったことがある僕は、光明が少し心配かも?
光明は僕に似てるから不安になるかもしれないし。
あっ、そうすれば自分にとって恵ちゃんが、どれだけ大事か自覚するかも?
僕達回りの人間は気付いてるのに、本人は気付いてる感じが全くしないんだよね。
「恵ちゃんが自分を振ることないって信じてる良いけどさ。何もしなかったら取られることもあるってことを知る良いチャンスだよな~。恵ちゃんは可愛いからモテるだろうし」
取られる…って、もうちょっと柔らかい表現はないのか。
ん?あれ?もしかして、ヒカルも僕と同じようなこと考えてるのか?
「社の弟子で、碁も強くて将来有望らしい。まあ、碁の実力はオレが自分で確認するけどな」
早碁の棋戦で、ヒカルと対戦する所まで勝ち上がって、既に最多連勝者として決勝トーナメント進出も決めているとか。
僕とは別ブロックだから気に止めなかったけど…そういえばいたな。
今、思い出した。
「対局が楽しみだな♪もしかしたら碁のライバルにもなるかもしれないぞ」
彼が日本棋院に来て恵ちゃんと2人でいる所を、明美達が大騒ぎするだろう。
ヒカルは楽しそうだけど、僕は心配だ。