女王様を手に入れろ! 100
(明美サイド)

「ケイお兄ちゃん、おはよう」
「おはよう」
「いよいよだね。ヒカル先生との対局」
「ああ」
「自信のほどは?」
「あるっ!…と言いたいとこらだけど…当たって砕けろ!って感じだな?」
「頑張ってっ!」





私と加賀、三谷が兄貴以外の男と楽しそうに話してる恵を見たのは、これが初めてかもしれない。

「「誰?あれ!!」」

私と三谷の声が、綺麗にハモってしまった。

「恵が兄貴以外の男と、あんなに楽しそうに喋ってるよ~~」
「どういうことだ~~」
「初めて見る光景だな」

慌ててる私や三谷と違って、凄く落ち着いてる加賀。

「ちょっと加賀、アンタ驚かないの?」
「別に…」

冷たっ。

「じゃあ、なんで今まで恵のボディガードしてたのよ」
「なんとなく?」
「あっ、そ」

加賀も兄貴と恵のこと応援してると思ってたのに、こんな冷たい奴とは思わなかった。
あ~なんか腹立つ。

「恵ちゃんの幼馴染みだぞ」

えっ?後ろから声が?…と思ったらパパだった。

「でもって、社の弟子でオレの今日の対戦相手♪」

突然、私達の後ろから詳しい説明してくれるのは嬉しいけど、ビックリさせないでよ。

「もしかしたら、光明のライバルになるかもな♪」

兄貴一筋に物凄く頑張って彼女になった恵が、他の男に目移りするなんて…ないない。
ででも…あの雰囲気だし…幼馴染みだし…。
う~~~ん……少し不安。

ところでパパ?
なに?そのイタズラ見つけて喜んでるみたいな楽しそうな顔は。

「なんか楽しんでない?」
「別に…。ただすんなりと手に入れた彼女より、障害を乗り越えて手に入れた彼女の方が大事にしようと思うだろ。アイツもライバルに苦労すれば良いんだ」

最後の言葉に、物凄く力が籠ってるような気がするんですけど~。
パパはママを手に入れる為に凄く苦労してたもんね~。
ママにライバルと認めてもらうことから始まって…棋院での告白玉砕は有名な語り草だし。
自分の息子が、スーッと彼女Getしてゴールしそうな許せないとか思ってたりして?
そうだったら、大人無げないわ。
まあ、ママを取り合って兄貴と真剣に喧嘩してたパパだから、あり得なくはないかな?
子供と真剣にママ取り合って喧嘩するパパってどうなの?…って思うけど、対等に付き合ってくれるパパは好きだな。
これ、パパはには絶対言わないけど。
言ったら最後、狂喜乱舞して使い物にならなくなって、ママが苦労するからね。

「さあ、そろそろオレもスタジオに行くかな」

そう言って、パパはいなくなった。

「まあ、ヒカルが言葉も解らない訳じゃない。光明先輩、釣った魚には餌をやらないって感じになってるし」

パパがいなくなった後、加賀が言い出した。

あ~~確かに…。
恵が兄貴一筋なことを良いことに、無意識に安心してるところがあるかも?
恵が頼み込まないと、デートもしないし…。

「皆が皆、黙って引き下がってくれるとは限らないぞ、なあ三谷~♪」

加賀が三谷にからかうような感じ?の顔と視線を向けてる。

「うう煩い。昔のことだ」

三谷…冷静にしようとしてるけど、なんか…ちょっと焦ってない?
2人になにがあったの?
私には、さっぱり解らないよ。





それから数日後。
なんとパパは恵の幼馴染みを家に招待した。

ちょちょっとパパ!何考えてるのよ!
コイツを家に入れるなんて!
加賀も三谷も、そしてママの顔も引きつっている。

「わ~ケイお兄ちゃ!んなんでここにいるの?」

皆、この先に起こるかもしれないことを想像して気が重いのに、恵は幼馴染みが家に来たことを単純に喜んでいた。
あっ、多分パパは気が重くないだろうけど…確信犯だし。

(ここに兄貴が帰ってきたら、どうなるんだろう?)

は~あ…憂鬱~。
何事も起こりませんように…。


Continue!




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