女王様を手に入れろ! 96
(アキラサイド)

「ねえ、藤ノ宮さん…今度僕達の研究会に来ない?」

久し振りに棋院に顔を出したら、恵ちゃんが若手棋士から研究会に誘われている所に遭遇した。

若手同士の研究会か…。それも悪くないかな?
恵ちゃんは光明と研究会したいだろうけど。

「あれは研究会のお誘いに見せかけたナンパよ」

えっ?

「柰瀨さん…」

後ろから奈瀬さんの声がした。

「恵ちゃん可愛いから、狙ってるヤツ多いのよ」

あっ、そうなんだ…って、研究会をナンパの道具にするなんてどういうことなんだ!

「まあ、もうすぐボディーガードが来るから心配ないけどね」

柰瀨さんか楽しそうに話してるうちに、加賀君、三谷君と明美が、恵ちゃんをかばうように男性棋士の前に立っていた。

「ほら来た」

ということは、ボディーガードって加賀君達のことなのか?
明美まで入ってるのは…どうなんだろう。

「塔矢、そういう方面も師匠として気をつけた方が良いかもよ」
「………」
「さあ、あの子達が居たらもう心配ないわね。ご飯食べに行こうっと」

そういって、柰瀨は去っていった。
なんだったんた?
後で聞いた話だけど、柰瀨さん達は恵ちゃんのことを気にかけて、こういう所に遭遇したら見守ってくれていたらしい。
でも、必ず加賀君や三谷君、明美が現れるから、それを見届けて去るようになったそうで。

(それにしても…恵ちゃんが男性棋士に言い寄られてたなんて…)

全く気付かなかった…。
光明は知らないよね。
知ってたら黙ってないだろうし。
緒方さんを脅したぐらいだからね…。





「あの先輩達。コイツは俺達と研究会やるんで、誘わないでもらえます?」

男性棋士を思い切り睨み付けて、今にも殴りかかりそうな感じだ。
加賀君は盤上でも、どこでも物怖じしないな。
生意気だって言う人もいるし筒井さんも心配してるけど、棋士として必要な部分だと思う。

「お前達新人どもの研究会なんて、たいしたことないだろ。オレ達の方がた勉強になるぜ」

そんな不純な動機なら、殆ど身にならないぞ。

「良い忘れてましたけど、うちの研究会はパパのですから。多分ママやおじいちゃんも居ると思うんですけど、それのどこがたいしたことないんですか?」

滅多に怒らない明美が珍しく本気で怒ってる…。
からかったりしてるけど、光明と恵ちゃんのこと応援してるもんね…。
それは良いだけど、公の場でパパママ呼びは止めなさい…と言ってるだろう。
後で、また注意しないと。

「そういう訳なんで、これに懲りたら誘わないでもらえます?」

加賀君と明美が話してる間、三谷君は恵ちゃんの前に立って、しっかりガードしている。
見事な役割分担じゃないか。

「へ~和谷聞いてたけど、あれはホントにボディーガードだな」

僕が恵ちゃん達の様子を伺っている所に、ヒカルが現れた。

「ああいうの見てると、昔の緒方さんや芦原さんを思い出すな…」

えっ?

「お前に変な虫(男)が付かないようにボディーガードしてたからな」
「そうなんだ…知らなかった…」
「そりゃそうだ。お前の前に辿り着く前に退治されてたからな」

そういえば芦原さんが…。

「アキラが碁に集中出来るようにしてやるからな」

…って言ってたような?
あれって、そういういみだったんだ…。

「まあ、オレはすり抜けたけどな」

確かに…。
今思えば、君は芦原さん達にとっては色々イレギュラーだったかも。
気付いたら時には僕の隣に居たから、早々に諦めていたと思う。
緒方さんは諦めきれなくて、ヒカルにちょっかい出してたけど。

「にしてもアイツらオレの名前を出してくれちゃって…。しばらく研究会の予定ないぞ」

本当はやりたいんだけど、僕もヒカルもスケジュールが一杯なんだよね。

「光明に代わって恵ちゃんを護ってくれてるんだから、それぐらい良いじゃない?」
「そうだな。お礼にやってやるか。お前も入る?」

当然だけど、恵ちゃんは光明と2人の研究会だ。

あんな所に遭遇して思ったけど、恵ちゃんが光明一筋だから何事も起こらないと光明は安心してるんじゃないかな。
でも、これからどうなるかなんて解らない
恵ちゃんとの関係に変化があったら、光明はどうな行動を取るんだろう。
心配だけど楽しみだな。

まあ、恵ちゃんが光明から離れるなんてないと断言出来るけどね。


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