女王様を手に入れろ! 89
(恵サイド)

「藤ノ宮さんって、アキラ先生の弟子なんだよね」
「アキラ先生が弟子を取るなんて以外だよね~」
「私、弟子は取らないと思ってた」
「普段のアキラ先生って、どんな感じ?」
「やっぱり怖いの?」

入段してから先輩棋士皆さん…男女問わずに、質問攻めにあうことが多くて…。
今日は女流の皆さんに囲まれて質問攻めにあってるんだけど、応えると更に五月蝿くなりそうだから黙ってる方が良い気がする。

「光明君にも会ったことあるんでしょ?」
「あ…はい…」

あっ、情景反射で応えちゃった。

「キャーッ!噂通りのイケメンなの?」
「顔はチラッと見たことあるよ。進藤先生似のイケメン!」
「頭はアキラ先生似って噂だよ。顔は進藤先生似だなんて…最高よね」

凄くテンション高いけど、先輩達、対局のこととか不安になったりしないのかな…。
私なんて最近負けが多いから、今日の対局勝てるかどうか不安で一杯なのに。

(私も、いつかアキラ先生みたいに打てるようになれるかな…)

アキラ先生は対局中絶対動じないし、皆さんの想像通りの碁には凄く厳しいけど、他はとっても優しいし親近感覚える部分もあることは…私だけの秘密。


「光明君とお近づきになりた~い」
「あれだけのイケメンだし、彼女いるんじゃない」

…目の前にいるんですけど。

…なんて言えない。
「私が彼女です」なんて言ったらどうなるんだろう。
私、囲碁界にいられなくなるかも。
平和の為にも黙っておいた方が良い気がする。





それからしばらくして、先輩達から解放された。

「はあ~~~」
「いい加減、上手くあしらえよ…」
「だって……」

先輩棋士のパワーには勝てないよ~。
棋士でも学校と同じ目に会うとは思わなかった…。

「私は兄貴のこと聞かれたりしたことないんだけど、なんで恵は聞かれるんだろう?」
「そりゃ、お前はアキラ先生の娘だから面と向かって言えないだろ」
「それなら、恵だって棋院の大事なスポンサーの娘でしょ」
「あっ………」

明美ちゃんのツッコミに、固まる加賀君と三谷君。
その顔は忘れてたのね。
……まあ、実は私も忘れてることが多いけど。

「まあ、免状授与式でやらかしたからね…。あれで、皆の頭からスポンサーの娘、パパの後援会の会長なことが、吹っ飛んだみたいだし良かったじゃない」
加賀君も三谷君も目の前で頷いてるんだけど。

「恵ちゃん、お願いだから思い出させないで」

アキラ先生やヒカル先生、記者の皆さんや先輩棋士の皆さんの前で盛大に壇上から落ちちゃって…。
あの時は、何処でも光明君を見つけてしまう自分を恨みたくなったよ…。
光明君が来てくれたのは嬉しかったけど…あれは忘れたい出来事です。

「明美ちゃん…そんなこと言うんだったら、これからの受験勉強一緒にしてあげないから」
「ちょちょっと待ってっ!1人じゃ無理!絶対!無理」

明美ちゃん…1人だと脱線して勉強進まないもんね。
私だって1人じゃ不安だから、皆でやるつもりだけど、思い出したくないことを言った明美ちゃんに、ちょっと意地悪なことを言ってみただけ。

そう…。
なんとか棋士になって、プロの生活が始まってホッとして、進級したら中3…受験の年でした。
ヒカル先生やアキラ先生みたいに、高校行かないで棋士に専念っていうことを許してはもらえず、海王高校入学目指して勉強も頑張らないといけなくて…もう毎日が大変。
私達の勉強は、相変わらず光明君見てもらってる。

棋士と学生の二足のわらじ生活頑張ります!!


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