女王様を手に入れろ! 87
(明美サイド)

「緒方さん、一局打ちません」

おおっ!アニキ自ら緒方さんを対局に誘ってる!

明日は雨…もしかしかしたら嵐が来るかも?





パチ、パチ

早速、対局を始めるアニキと緒方さん。

「珍しいな、光明君から対局に誘うとは。新初段絡みか?」
「さすがは緒方さん。よく解ってるじゃないですか」

うわ~なんか…空気が重いよ~~。
なんで、私はここにいるの?
アニキと緒方さんの対局見たい…って思った自分を殴りたい…。

この重い空気は主にアニキから出ていると思うけど、その原因は新初段シリーズの相手を知ってパニックを起こした恵なんだよ。





「緒方さんが相手だなんて~~~」
「良いから落ち着けっ!」
「だって~~~」

…なんて会話を、アニキと恵は10回は繰り返した。

「そそそうなんだけど…緒方さんが私を指名したなんて、なにかあるかも?」
「母さんの弟子ってことで、気になってるだけだ」
「たけど私、緒方さんに聞かれたことあるんだ。君は本当にアキラ君の弟子か?って」
「なに?」
「緒方先生、なにか感づいてるよ。そうじゃなかったら私なんかを指名する訳ないもん」

それは考えすぎなんじゃ…と思ったけど、アニキは嫌な予感がしたのか、緒方さんに釘を指すために対局に誘ったみたいで…今の状況です。





「お祖父ちゃんも恵のこと気に入ってるんですよね~」
「なにが言いたい?」
「余計なこと言ったり誘導尋問みたいなことして、もし僕達のことがバレたりしたら…解ってますよね?」
「………ッッッ!!」

あっ、アアアニキ…!なにその鋭い打ち込み…そこまで入れるの?
私には無理だわ。

もしかしてタイトルホルダーな緒方さんに勝っちゃうつもり?
アニキ…本気で打ってる?

「もし僕達のことがバレたり、恵に余計なことしたら…お祖父ちゃんの力で、緒方さんなんてどうなるか…」
「………」

パチ、パチ。

「こういう時は塔矢行洋の孫で良かった…って思いますよ」

パチ、パチ。

「恵の父親、親父の後援会の会長兼スポンサーだということをお忘れなく」

藤ノ宮のおじ様はアニキと恵の関係がバレたからって、緒方さんをどうにかしようとは思わないだろうけど……使える脅しはなんでも使えって感じ?

「なにを知ってるか知りませんけど、なにかあったら今度こそ、本気でプロになるの止めようかな」

あっ、最強の脅しかも。
緒方さんもアニキがプロになるのを、楽しみしてるもんね~。

(アニキ…怖い)

釘を指すというより、本気で脅してる。
こういう所はママ譲りだよね。
ママとアニキは、本気で怒らせたり敵に回してはダメなんだよ~~。






アニキVS緒方さんの対局は、アニキの一目半勝ちだった。
緒方さんさん…まさかアニキの脅しで動揺したとか?まさかっ、アニキが相手だから手加減したんだよね?
……深く追及しないで、そういうことにしておこう…うん。






そんなことがあったせいか、恵の新初段シリーズは何事もなく終わった。
アニキさ…僕には関係ない…とか言ってたけど、メチャクチャ対局見に来たかったくせに棋院の検討部屋に来る勇気はなくて断念して悔しそうだった。
免状授与の時は大人数に紛れることが出来たけど、新初段はそうはいかないもんね。
可哀想だから、この私が棋譜を付けてプレゼントしてやった。
優しい妹に、なにか奢ってくれてもバチは当たらないと思うよ…アニキ。

なにか起こる…と緊張しまくってた恵は、ちょっと拍子抜けしたみたい。

「こんなにあっさり終わっちゃって、緊張し過ぎて損したよ…」

誰のお陰だと思ってるのよ。
裏でアニキがメチャクチャ緒方さんを脅してたんだよ。
アンタ…ホントに愛されてるね。
アニキも恵のことが心配なら、さっさとプロになっちゃえば良いのに。
そしたら、ほぼ一緒に居られて安心だと思うんだけど…。

(このカップルは、もうひと押し必要だよね…)

それは、いつになることやら…。


NEXT




Page Top