女王様を手に入れろ! 83
(恵サイド)

「まさか、あなたが全勝なんて信じられないわ…」

碁盤を挟んで私の前に現れたのは、綾野香さん。
私の最終戦の対戦相手。
ちなみに、綾野さんも全勝。

「前にも言ったけど、あなたなんかには負けないから」

わ私だって負けない…。

「「お願いします」」

綾野さんと対局が始まった。

パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ…。

順調に打ち進めている筈だったんだけど……。

(あっ……)

読み間違えた?
いつの間にか綾野さんの黒が優勢になってるし、この白石も死活が危ない?
しかも、また攻め遅れたかも……。

(どうしよう……)

また、やっちゃった…。
順調だと思ってたら違ったパターン。
やっぱり私がプロになるなんて、無謀だったんだよ。
……もうダメだ~~~。

………………
……………
…………
………
……

「落ち着け」

頭の中に光明君の声が響いた。

「少しでも押されるとパニックになって負けるのがお前の悪い癖だ。冷静になれば勝つチャンスはある、落ち着け」

光明君…。

そうだ、まずは落ち着かないと。
私はプロになるって…プロになって、光明君が悔しがるような碁を打つって決めたんだ!
だから、こんな所で負ける訳にはいかない。

「どんなに苦しい碁でも諦めるな!僕の弟子ならね」

アキラ先生に言われた言葉も思い出す。

負けるもんか!
必ずプロなるんだから!

(考えなきゃ…なにか手はある)

……………
…………
………
……

(えっ?)

碁盤の一部に光が差した気がした。

(あっ…ここだ)

私は、そこに白石を打つ。

パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ…。

対局が進んで行く…。

「………」

綾野さんの打つスピードが遅くなっている…。
この手は読んでなかったみたい。
よし、逆転出来る。
でも、最後まで油断しちゃダメだよ…恵。

パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ…。

……………
…………
………
……

「……ありません」

綾野さんが投了した。

「ありがとうございました」

勝った…っ!
勝ったよっ!光明君。

「アナタみたいな親の力で、進藤君に近づいた人に負けるなんて、私は認めないっ!」
「信じてもらえないかもしれないけど、親のコネなんて使ったことないよ。アキラ先生の弟子になったのも認められたからだし」
「今日、あなたが私に勝ったのはマグレだから!」

そう言って、綾野さんが悔しそうに対局部屋から出ていった。

相変わらず凄い人だよ…。
思い込みが激しいというか…私に間違いはないって思ってるのかな。
綾野さんには悪いけど、光明君ああいうタイプ苦手だと思う。

(私が彼女って知られたらどうなるんだろう)

想像したら…なんか恐ろしいよ……。

…なんて考えてながら対局部屋を出ると、編集部の記者さんに囲まれてしまった私。

えええええ~~~。

まだ信じられないけど、私がプロになるみたいです。


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