女王様を手に入れろ! 65
(明美サイド)

「加賀!今日も勝負よっ!」
「何回やっても勝てないだから止めとけ」
「五月蝿い!アンタなんかに負けたらプロのなおれだよ」
「お前、目算とヨセが下手なんだよ。よく、それでプロになれたな」

あ~~悔し~~いっっっ!!
でも、コイツの言う通りヨセと目算が少し苦手なんだ。
パパにもママにもアニキにも注意されて集中的に勉強して、プロ試験も一敗しただけで合格したから克服したと思ってたのに、まさか、こんな所にこんなヤツがいるなんて…。

名前は、加賀鉄宏(てつひろ)。
成績はまあまあ良いみたいだけど、授業をよくサボるから、印象はよくなかった。
同じクラスでプロを目指してるって言うから、1学期が始まってちょっと経った頃に打ってみたんだけど……ヨセで逆転されて1目半負け。
パパやママ、アニキにお祖父ちゃん、緒方さんやパパの院生仲間にしか負けたことないのにっ!!
ショックが大き過ぎて最初はなにが起こってるのか解らなかった。

どこが悪かったのか知りたくて、家に帰って直ぐパパに棋譜を並べて見せた。

「さすが、筒井さんの息子!ヨセで逆転はほぼ無理だな…。加賀の勝負強さも相まって良い碁打ちになりそうだ」

パパがアイツのこと誉めてて、なんかムカついた。

「パパ、アイツのこと嬉しそうに誉めなくてもいいじゃない!あんな口と態度が悪いヤツ」
「えっ、なに怒ってるんだ?口と態度が悪いのは、加賀の息子だからしょうがないじゃん」

えーっ、それで片付けるの。

「でも、加賀の息子は塔矢のファンなんだよな…。オレの弟子にしたかったかも」

えーっ、嫌だよアイツと兄弟弟子なんて嫌だよ~。

「三谷の息子の方も中々良いな。恵ちゃんとも互角に打ってるし…楽しみだ」

隣で恵も三谷正輝君と打った棋譜を並べてた。
確かに互角だ。

「最近の囲碁界は静かだけど、コイツらや恵ちゃんがプロになれば盛り上がるだろうな…」
「わ私なんて…そんな…」

パパがホントに楽しみにしてるのが解って、なんか悔しかった。
私だってプロなんだから、加賀や恵達がプロになる前に囲碁界を盛り上げないと。





それからヨセや目算の力を鍛えながら、何度もアイツに挑んでるけど勝率が良くない。
あいつも海王の囲碁部で鍛えてるから、棋力がドンドン上がっている感じだし。

でもさ…その癖、授業サボってたりするんだよね。





「加賀!また授業サボって!高校上がれなくなっても知らないから」
「お前じゃあるまいし、そんなヘマするかかよ」

ムカ~~~ッッ!!
悪かったわね!ビリで!!
落ちる予定だったのよ!

クラスの皆に加賀を迎えに行くように言われたから、仕方なく加賀がいると思う場所に見に来たら、呑気にママが書いた碁の本を読んでた。
いつの間にか、私が加賀の面倒を見ることになってて…。
どうして、そうなった?
恵に聞いてみると、喧嘩するほど仲が良いってことで、加賀のお守りは私になったらしいけど……冗談は止めて。

「お前こそ、テスト赤点取るなよ。海王はプロや芸能活動に寛容だけど、テストは手を抜かないからな。アキラ先生がちゃんと両立した名残だな」

ママ~~~ちょっと…いや…かなり恨むよ。

でも、アイツにあんなこと言われない為に次のテスト頑張るぞ!!
あと、碁もね。


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