女王様を手に入れろ! 58
(光明サイド)

「お母さんに赤ちゃん出来たの」
「わ~~~おめでとう!」
「祝い持っていてやらないとな」
「そうだね」

あかりおばさんが妊娠したと、恵が教えてくれた。
うちは、自分の家のことのように大喜びだ。
お父さん達とのわだかまりが溶けたら、夫婦仲も更に良くなったらしくて、2人目を…という話になったらしい。
跡継ぎ生まないと、僕を婿養子にして会社を継いでもらわないといけなくなる…それは可愛そうだ…という話になったとか。
父さんと母さんが話をしてるのを偶然聞いてしまった。

また結婚なんて考えてないんだけどな…。
気が早くないですか。

「光明、祝いをあかりの家まで届けてくれ」
「なんで、僕が。父さんが行けば良いだろ」
「あいにく僕もヒカルも明日からイベントで泊まりだし、お祝いは早い方が良いと思ってね」

まあ、母さんの頼みなら仕方ないか。

「あっ、行く時スーバーでご飯の材料買っていけよ」
「なんで?」
「オレの先読み力」

そう言って、Vサインをする父さん。

なんだよ?それ。
…と思いながら、スーバーで買い物をして、恵の家に向かった。





「光明君、いらっしゃい」

恵が向かえてくれたけど、なんだ?その汚れたエプロンは?
それに…なんか焦げ臭い。
嫌な予感がして、慌てて家に上がって匂いのする方に向かうと、台所でフライパンの中身が燃えていた。
慌てて火を消し水をかける。
天ぷら油じゃなくて良かった…。

「おい、火は止めて出てこい!」

僕が怒鳴るのも解って貰えると思う。

「少しぐらい大丈夫かな…って思って」
「そんな訳ないだろ!」

僕が気付かなかったら大変なことになってたぞ。

「で、なんで、こうなってるんだ?」
「お母さんが、悪阻で体調悪くて…私が代わりにご飯作ろうと思って…」

どうして、店屋物にしないで無理して作ろうとするんだ。

「恵、焦げ臭いけど、またなにか焦がしたの?」

あかりおばさんが台所にきた。
匂いが寝室にまで流れたんだろうな。
おばさん顔色が良くないな…悪阻が酷いんだろう。

「光明君?」
「お邪魔してます」

片付けの手を止めて、あかりおばさんに挨拶する。

「どうしたの?」
「父さん達からの、お祝いを持ってきました」
「有り難う。で、台所の片付けやってくれてるの?」
「はい…」
「ごめんね…店屋物で良いって言ってるのに頑張っちゃうのよね」

あっ、あかりおばさんも店屋物で良い…って言ってたんだ。
素直に言うこと聞けば良いのに。

「夕飯も作って行くので、食べられそうなら食べてください」
「えっ、悪いよ」

あかりおばさんが、申し訳なさそうな顔をしている感じがするけど…父さんの命令だし。

「父さん、スーパーで材料買って行けって言われたんで、多分、夕飯作りもお祝に含まれてると思うので気にしないでください」

もしかして父さん…こうなることを読んでた?
恐るべし!父さんの読みの力。
…というより、4人経験してる経験値?
…いや、あの父さんに限って、それはないよな…。
多分、母さんのアドバイスがあったはず。





「光明君?」

夕飯を作り終えてテーブルに準備している時、藤ノ宮さんが帰ってきた。
当然だけど、夕飯を作る僕を見て驚いていた。

「光明君の料理、とっても美味しいのよ」
「それは楽しみだ」

あかりおばさんが、僕の料理を誉めてくれる。
ちょっと恥ずかしい。
あっ、あかりおばさん…さっきより顔色良いみたい。

「高校に入ったら、私の友達のレストランでコック見習いとして働いてみないか」

僕の料理を食べた藤ノ宮さんの、突然の申し出にビックリしたけど、料理を勉強したいと思っていたなんだけど…碁の方の圧力も凄いんだよ…プロになれっていうね…。

「碁の方は23まで試験は受けられるから、ゆっくり考えると良いよ」

藤ノ宮さんと家族だけなんだよな。
プロになれ!って強要しないの。

「有り難うございます。今は、恵さんのお陰で碁が楽しいと思えるようになりました。人に教えて教えてる人が強くなっていくのは楽しいです」

自分が教えた人が強くなっていくのは、本当に嬉しいし楽しい。

「光明君にそう言って貰えると、恵の不純な動機による突撃も無駄ではなかったってことかな」
「おおおおお父さん…」
恵が真っ赤になって俯いてる。
恥ずかしいのか?
もしかして、思い出したくない黒歴史とかになってたりする?

僕も最初は、コイツ囲碁出来るようになるのか?院生レベルなんて無理だと思ったのに、今は大会で優勝するし院生レベルもクリアしてるかもしれない。

「恵に碁だけじゃなく勉強も教えてくれてるお礼だと思って。せっかくの料理の才能、伸ばしてみるのもありだと思うよ」
「有り難うございます」

藤ノ宮さんもあかりおばさんも、母さんが僕に料理を教えたと思ってるみたいなんだよな。
まさか、父さんと張り合ってるうちに覚えました…とは言えない。

ともかく高校に入ったら、レストランでバイトが出来ることになって、とっても楽しみだ。

プロについては、藤ノ宮さんの言葉に甘えて、ゆっくり考えようと思う。


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