女王様を手に入れろ! 54
(藤ノ宮サイド)

これはプライベートだから『オレ』で通させてもらう。
『私』なんて言ってると肩が凝ってしょうがない。
会社経営はストレスが溜まる。
碁を打ってる方が気楽だ。

実はオレ、じいちゃんに碁を教わってプロ棋士を目指してたんだよね。
桑原先生に師事して、外部試験でプロ合格間違いなし!…とまで言われてたのに、家業の会社を継げ!と言われ泣く泣く断念。
オレの実家、平安貴族から始まった名家らしくて今でも「家は長男が継ぐもの」という古い考えの人間が多いくてさ…長男は辛いよ。
じいちゃんだけは謝ってくれたな…。

そんな訳で、会社を継ぐことになったオレは、苦手な英語を克服して会社の後継者として認められた頃、北斗杯で活躍する進藤君を見て一目で、じいちゃんと一緒にFanなった。

それから、進藤君について色々調べさせてもらった。
秀策が好きらしいというのも、オレにとっては進藤君に引かれる材料だった。
オレとじいちゃんも秀策好きなんだよね~。
師匠なして、あそこまで強くなれるのかが不思議だけど、そこは気にしないことにした。
進藤君の、これからの活躍にだけ期待する。
塔矢さんとも良きライバルとして切磋琢磨してるようだし…。
明らかにお似合いなのに、進藤君はともかく塔矢さんが全く気付いてない感じで…。
どうしたものかと思っていたら、タイミングよくというべきか塔矢さんとお見合い話が持ち込まれた。

新たなスポンサーが欲しい棋院と、このままだと間違って進藤君となにかあっては困ると、焦った塔矢さんの後援会がタッグを組んだようだけど、棋院側も過去の不戦敗や普段の進藤君の態度がお気に召さないらしい、

進藤君がオレの所に乗り込んで来た時は、意地悪な言葉を言いながら心の中でガッツポーズしたよ。

そこでやっと、進藤君に後援会を作るということを伝えたら、進藤君も塔矢さんも驚いていたけど、オレが会長になれば文句言う奴も居なくなるだろう。

その後、早く結婚式やってしまいたい…と、塔矢明子さんが言い出した時には驚いたけど、奥さんの言うことも一理あるから、うちのホテルで式を挙げてもらうことにした。

奥さんの要望は大変なことが多かったけど、なんとか2週間の準備期間で結婚式を挙げることが出来た。
うちのスタッフは、どんな結婚式のプランが来ても対応出来るようになったんじゃないかな。


結婚式の後落ち着いた頃に、進藤君と一緒に食事に行ってラーメンにしたら、とても驚かれた。
家柄的にいつも高級料理を食べてるイメージらしく、ラーメン食べてる所が想像できないらしい。
高級料理ばかり食べてると、息が詰まる。
オレはどちらかというと、ラーメンやハンバーガー等庶民的な食べ物が好きなんだ。
食べ物の好みは進藤君と似てると思う。
それが解ってからは、進藤君と会う時の食事はラーメンで終わることが多くなった。
感覚も合うから、今は後援会会長と言うよりも、親友として接することが殆どだ。





妻のあかりと出会ったのは、進藤君の結婚式の後、あかりが土砂降りの雨の中、ヒールが壊れて、ずぶ濡れになっている時だった。
進藤君のことを調べてる時に、あかりのことも出てきて、なんとなく進藤君が好きなことも解っていたから結婚式は辛かっただろうな。
今でも進藤君への想いを引きずってるからな。
そこを含めて、オレはあかりが好きなんだよね。


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