女王様を手に入れろ! 53
(あかりサイド)

は~~~あ……。

どうして、よりにもよって私の所に降ってくるかな……。
ブーケ……。

は~~~~あ………。

塔矢さんが投げたブーケは、今私の手にある。

普通なら、次に結婚するのは私!って盛り上がるんだろうけど、とてもじゃないけどそんな気分になれない。

母さん達は披露宴の後、美津子おばさんに誘われて塔矢さんの家に行ってしまった。
塔矢さんの家に興味があるんだって。
ホントにミーハーなんだから…。
私も誘われたけど断った。
なにが悲しくて、塔矢さんの家なんかに行かないといけないのよ。
余計に辛くなるだけじゃない。

「……どうしようかな?…ブーケ」

正直、持って帰るなんて嫌だ。
でも棄てるのは、気が引けるし…。
どうしよう……。

ポタッ!

「えっ?」

頭に冷たい感覚がして見上げたら、雨が降り始めていた。

早く雨宿り出来る所に行こうと思って歩き始めたけど、あっという間に酷くなって土砂降りに……。
なんで、こんなことになるのよ!
ヒカルのバカッ!

…なんて、関係ないヒカルに八つ当たりしてみる。

「あっ!」

早く土砂降りの雨から逃れたくて、必死に走ってたらヒールを引っ掻けて、前のめりに倒れこんじゃった。
ヒールは壊れるし…顔面強打しなかったことを誉めてあげたい。
全身ずぶ濡れ濡れだけど…。
こんなことになったのも、塔矢さんが私にブーケなんか投げるから!

今度は塔矢さんに八つ当たり。
でも、間違ってないと思うんだ。
ブーケが無かったら、ここで考え事することもなかったから…こんなことにはなってないと思う。

どうしよう…。
こんな格好じゃ電車に乗れないし…。
どうやって帰ろう。

雨に打たれながら、そんなことをかんがえていたら、男の人に声をかけられた。

「君、大丈夫?…じゃないよね」
「あっ、大丈夫です」
「ヒールが壊れてるうえに、そんなにずぶ濡れの人に、大丈夫なんて言われても信用出来ないけど」
「…………」
「このままだと風邪を引く…来なさい」

私を引っ張ってホテルに連れて行った人は、シャワーを浴びさせてくれて着替えまで用意してくれた。

「暖まったかい?」
「あっ、はい…ありがとうございます…」

とても親切な人だけど、冷静に考えたら見ず知らずの男の人とホテルで2人きりって不味くない?

「僕は別に部屋を取ってるから、この部屋は自由に使って。泊まっても良いし帰っても良いよ」

良かった…。
一緒に泊まるのかと思った。
そんな訳ないよね…ハハハ…。

「あそこで、君を見つけて良かったよ。うちのホテルで事故なんか起きたら大変だし、進藤君の門出に水を指す所だった」

えっ?もしかして、この人ホテルの経営者?
もしかして私、凄い人に助けられたかも?
しかもヒカルを知ってる?





これが、私と藤ノ宮仁志さんの出会い。
あとで、由緒正しい名家で代々会社を経営してると知った。

この出来事の後、食事誘われたんだけど、お金持ちだし名家の人だから、だから、高級レストランとか連れていかれたらマナーとかどうしよう…ってドキドキしてたら、ラーメン屋だったり普通のレストランだったりしたから拍子抜けしちゃって…。
藤ノ宮さん曰く、プライベートはフツーのラーメンやジャンクフードとかで良いらしい。

その後も藤ノ宮さんに誘われるままお付き合いをしていたら、1年後にプロポーズされた。
藤ノ宮さんは良い人だし、ヒカルへの思いを吹っ切れてないことも承知の上でのプロポーズだったから、私には断る理由がなかった。
しかも、大学は卒業まで通っても良いということだったし。
家族からは、家柄や年の差のことで心配されたけど、そこはなんとか納得してもらった。
姉さんは相変わらず、ちょっとミーハーだったけど。

こうして私はあれよあれよという間に、お嫁に行くことになったのでした。


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