女王様を手に入れろ! 52
(あかりサイド)

私はともかく仁志さんの家柄を考えれば、小学校~大学までエスカレーター式の私立の学校に入れるのが普通なんだろうけど、幼稚園から小学校までは、地域の公立の学校でノビノビと学校生活を楽しんでほしいと思って、意外と庶民的な仁志さんにもOKをもらって家の近くの公立に入れたんだけど、まさか同じ学校になるなんて。
近くに住んでるのは知ってたけど。





そういえば、ヒカルを近くで見たのは彼の結婚式以来かな。

全ては母さんの一言から始まったんだ……。





「ヒカル君、結婚するんですって」
「えっ?」

予定も入ってくなくて家でボーッとしていたら、お母さんの突然の発言に私の頭は真っ白になった。

ヒカルが結婚?!

私、フラれてからまだ何ヵ月も経ってないのに結婚って…どうなってるのよ。
展開が速過ぎて着いていけない…。

「あかりは、ヒカル君と結婚すると思ってたのに」

お母さん…そんな残念そうに言わないでよ。
私だって出来ることならそうしたかった。
でもね…大分前からもう脈がなかったんだよね。
そうヒカルか塔矢さんを追いかけ始めた頃から。

「お母さん、ヒカル君の結婚相手テレビに出てるよ」

そう言って、部屋に飛び込んできたお姉ちゃんが、テレビのチャンネルを変える。
お姉ちゃんはお嫁に言ったんだげど実家に里帰り中。

(塔矢さんだ……)

「まあ、凄い美人ね…。ヒカル君には勿体ないわ…」
「ホント…」

ヒカルだって、今はとってもかっこいいんだから!
何年も会ってないからしょうがないけど、いつまでも子供の頃のイメージが抜けない母さんと姉さんにも困るな。

テレビでは、塔矢さんが女流で史上初のタイトル獲得まで後一歩だということや、塔矢さんのお父さんのこと、ヒカルとの結婚こと等ありとあらゆることが解説されている。
改めて、見るとホントに凄い人。

「相手の父親って囲碁界の重鎮なんだ。ヒカル君の所サラリーマンだし、凄い格差婚よね」
「でも美津子さんによると、幼馴染みらしいのよ」
「嘘~」

ここに失恋の痛手から立ち直ってない人間がいるのに、塔矢さんの話題でワイワイと盛り上がるお母さんとお姉ちゃん。
私がヒカルのこと好きだと知ってるくせに…。
さっき、ヒカルと結婚式するのは…なんて言ってたのは誰だろう?
ホント…ミーハーなんだから。

「本来ならヒカル君が婿養子に入るレペルじゃないの?これ」
「そうね…。こんな凄い娘(こ)を貰ったら大変じゃないかしら?大丈夫かな?美津子さん」
「気がキツそうよね…」

更にテレビではついでとばかりに、結婚相手のヒカルのことも紹介されていた。
ヒカルも史上最年少でタイトル獲得が期待されている未来の本因坊だとか。

「ヒカル君、凄いじゃない」
「あんなヤンチャだったヒカル君が、こんなに立派になるなんて…」
「うちの父さんの年収越えそうだね」
「それでも奥さんの方が年収上なのね」

またまだ塔矢さんとヒカルの話しで盛り上がる2人だった。





ヒカルと塔矢さんの結婚式は、とっても豪華でビックリした。
ビックリといえば、ヒカルの女装写真。
いつそんなことしてたの?
結婚式には囲碁界関係者が沢山いて、私達は場違いな気がして小さくなっていたり。
隣が葉瀬中囲碁部のテーブルで良かった……。

引き出物も凄かったな。
お姉ちゃんは、披露宴と引き出物で、行って良かった…って物凄くテンション高かったし…。

私は、まだまだ未練タラタラで、悔しい気持ちが祝う気持ちより勝っていて、素直に祝う気持ちになれなくて…。





そんな未練タラタラな私の所に、どうして塔矢さんの投げたブーケが落ちてきたんだけど…。
この後に起こる怒涛の展開を予感してたのかもしれない…と、後になって思ったんだ。


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