「大会頑張ったんだから、兄貴にデートでもしてもらったら?」
明美ちゃんのこの一言から始まった。
「デートなんて…そんな…」
考えたことないよ…
「アニキがいらないんだったら、僕が恵姉ちゃんを貰おうかな」
えっ?洋明君、突然なに言い出すの?
…というか私は物じゃないよ。
えっ、そういう問題じゃない?
「恵姉ちゃん可愛いから、オレを筆頭に狙ってるヤツ一杯いるんだぞ」
そそうなんだ……。
私が可愛いなんて…嘘でしょ。
嬉しいけど、私は光明君一筋だから…洋明君も皆さんごめんなさい。
「まあ、恵姉ちゃんがモテる話は置いといて、大会で決勝まで行ったんだから、師匠はご褒美あげないとな」
「そうそう。兄貴のスパルタに着いてきてくれてるんだから」
「ムチばっかりじゃ可愛そうだよな」
「…………」
洋明君と明美ちゃんの言葉の応酬に、光明君が押されてる。
明美ちゃんと洋明君には勝てないみたいだね。
そんな訳で、明美ちゃんと洋明君に押される形で、デートすることになった。
なんか…無理矢理感一杯だけど、せっかくのデートだもん。
この機会大事にしないとね。
デートが決まってから必死に考えたデートプラン。
小4の私と中2の光明君光明君じゃ、お小遣い的にも行ける所は限られてるけど、今年のお年玉、遣って良いと渡された分が少し残ってるからなんとかなるかな?
光明君にも聞かないと。
あと好きなものとか…明美ちゃんやアキラ先生にも聞いてみよう。
プランから碁会所は外して…入れたらデートじゃなくて教室になっちゃうし。
映画→食事→公園で光明君にお礼を言う…。
……なんて、どうかな?
本当は告白したいけど、またそこまでじゃない気がするし。
絶対!玉砕たもんね。
お礼だけにしておこう。
そして当日。
なにを着て行くのかで迷いに迷ったせいで、家を出るのが遅くなってしまったけど、なんとか待ち合わせ時間に間に合った。
明美ちゃんに頼んでも良かったんだけど、絶対フリフリレース系だし、光明君シンプルなのが好みだしね。
映画は運が良かったのか、光明君も私も好みな作品が上映中で、光明君がアクション物を見るなんて意外だな。
私も意外たって言われたけど。
食事は…これも驚きなんだけどハンバーガーになりました。
「兄貴、ハンバーガー大好きだから」
…って、明美ちゃんから聞いた時は本当に驚いた。
「性格はママ似だけど、食べ物やテレビ番組とかの好みはパパ似なんだよ。パパにライバル意識メラメラだから認めようとはしないけどね」
新たな光明君の一面を知った瞬間でした。
それを聞いて、映画の好みも納得。
そして、最後は公園。
ちゃんと言えますように。
「光明君、いつも碁と勉強を教えてくれて有り難う」
「どうした?急に…」
急に改まった私に光明君が驚いてる。
「ずっと、お礼言いたかったの。無理矢理始まった囲碁教室だし、迷惑かけてるな…って思ってたから」
「そうだな。囲碁だけじゃなくて勉強まで見ることになって、僕の平穏な日常返せって思うこともあるな」
あっ、やっぱりそう思ってたんだ。
「まあ、勉強見るのは僕が言い出したことだし、イラッとすることはあるけど……」
やっぱり迷惑なのかな。
いつ、教室止めるって言われても可笑しくない?
「これが最近、案外…嫌じゃないんだよな…。だから、これからも碁と勉強見てやる」
えっ、光明君。
今なんて言ったの?
てっきり、止めるって言われると思ってたのに。
まさかのいやじゃないって。
「ホント?」
「ああ…」
「嬉しいっっっ!」
嬉し過ぎて、光明君に思いっきり抱きついたんだけど……。
「えっ、あっ…!」
……忘れてたんだよね。
光明の側に池があることを。
「おいっ!」
「ごめんなさい~~」
私が急に抱きついたせいで光明君はバランスを崩し池に落ちて、て2人供びしょ濡れです。
お陰でデートは途中で切り上げふことになって、光明君の家に向かうことになりました。
光明君の家の近くをデートコースに入れておいて良かったよ。
光明君の家には、アキラ先生とヒカル先生も居て、とても驚かれた。
デートに行った筈の2人が、びしょ濡れになって帰って来たらビックリするよね。
しかも、予定より早く…。
「恵ちゃん大丈夫?」
お風呂を借りた後、デートの終わりが最悪になって落ち込んでる私に、アキラ先生が心配そうに声をかけてくれる。
「オレなんて、舞い上がって必死に考えたデートプランすっ飛んで……」
「結局、碁会所で打ってたんだよね…初デート。いつもと変わらなかったかな」
ヒカル先生の話にアキラ先生が続いて話してくれたけど、初デートが碁会所っていうのは…虚しいかも。
でも、舞い上がって頭真っ白っていうのは解る気がする…。
私も同じようなことになりそうだったけど、明美ちゃんからメールが来たりしたかから、なんとか落ち着けたんだよね。
「だから、途中まででもプラン実行出来ただけでも偉い」
ヒカル先生が誉めてくれるけど、最後までビシッと決めたかったよ…。
あと…。
「でも光明君がこれに懲りて付き合ってくれなかったら…」
これが1番心配なんです。
今回は皆に進められて、無理して付き合ってるだろうから。
「大丈夫だよ。光明は恵ちゃんのこと気に入ってるから」
「ホントですか?」
いまいち信じられないんだけど…。
「うん。光明は素直じゃないというか…そういう気持ちに鈍感というか…寧ろ逆に厳しいというか…」
「そういうトコ、ホント…お前とそっくりだよな。オレも何回傷ついたか……」
「悪かったね…」
「まあ、そういうところが可愛いんだけどな」
「………///」
ヒカル先生惚気てる…。
あっ、アキラ先生真っ赤になって照れてる…。
良いな…ラブラブで…。
私の両親と全然違う。
「光明も恵ちゃんに教室やってるうちに、色々変わって来てるから嫌じゃなかったら、これからも宜しく頼むな」
ヒカル先生が私の頭を撫でてくれた。
もちろん!光明君が嫌と言われたら別だけど、もっと認めてもらえるように頑張る。
アキラ先生は女性としての目標で、ヒカル先生は恋の先輩だ。
ヒカル先生を見習って諦めないぞ。
「…………っっ!!」
「兄貴……頭撫でられてる恵が嬉しそうだからって、パパに焼きもち焼いてどうするの?」
「でも、焼きもちを焼けるようになっだけ進歩じゃない?」
「確かにね~~」
…というツッコミを明美ちゃんと洋明から受けていたなんて、私は知らなかった…。