女王様を手に入れろ! 43
(光明サイド)

僕は中学1年になって約半年。
海王中に通いながら藤ノ宮に碁と勉強を教える日々だ。
学校の部活は、入るつもりはなかったけど、顧問の岸本先生に、たまに部に来て指導碁を打て…と言われたから、一応囲碁部に入った。

藤ノ宮に碁を教え始めて2年半、勉強を教えて1年半、藤ノ宮は相変わらずドジで一生懸命やってることが空回りすることが多いけど、碁の力はドンドンついてきて、父さんの言ってた院生も夢ではないかもしれない…と…最近感じる。
初めて乗り込んだ来た時から見れば、碁に対する姿勢が随分変わったよな…。
明美に影響されて、プロになるとか言い出すのではないだろうか?

勉強の方は…碁ほど力はついていない。
このままだと、海王は危ないかもしれないぞ。

「せめて、光明君とアキラ先生の後輩になりたいから頑張る!!」

あと、最強の囲碁部で腕を研きたいという気持ちもあるらしい。
本当に変わったよな。
最近は、正美や明洋の碁の相手もしてくれている。





今日は藤ノ宮と一緒に父さんが、院生頃のお世話になった碁会所に来ている。

「兄貴、恵とデートなんだ…」

明美はそう言われてしまったが、これはあくまで囲碁教室だ。

「でも、一緒にご飯食べるんでしょ?じゃあデートじゃん」
「……………」

明美はああ言うけど、断じてデートではありません。





「進藤のガキが彼女連れて来るなんてな…時の経つのは早いな…」

初めて藤ノ宮を連れて行った時は、河合さんにそう言われて髪をワシャワシャされたけど(あれ止めてほしい…)、その後は藤ノ宮が父さんの後援会会長の娘と知っても、態度を変えずに接してくれている。
実は、行洋お祖父ちゃんの碁会所にも行ったけど、あっちは丁寧に扱われて、藤ノ宮が気を遣ってしまうと言うことで、こっちの碁会所に通うようになった。

藤ノ宮や白で打つことが少ないから、ここに来て白を持ち、更に置き碁で打って力を付けている。

「しかし、2年半でここまで打てるようになるとは…先生が良いのかねぇ……」
「第2の進藤ヒカルになるかな」

河合さんとマスターが、そんなことを言い合っていた。

「ところで、光明よ…お前プロにならないのかよ」

河合さんがタバコを吸いながら尋ねてきた。

「まだ決めてない…」

碁は大好きだ。
でも楽しくないというか…ワクワクしないというか…。
このままプロになっても、碁の遣り甲斐みたいなものが解らないままかもしれない。
それは、ちょっと辛いかも…。

23まで、まだまだ時間があから、それまでゆっくり考えよう。
今は、興味のある料理の勉強でもしようかな。


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