女王様を手に入れろ! 41
(恵サイド)

藤ノ宮恵、ただいま緊張真っ最中です。
光明君の囲碁教室に来たら、突然アキラ先生が指導碁を打ってくれることになっていて……。
聞いてないよ~~~。
光明君……そういうことは前もって言っておいてよ……。

対局は当たり前だけど星目の置き碁。
震えながら星に黒石を9子置いた。

「「よろしくお願いします」」

アキラ先生がケイマにかかってきた。
さっきまでの穏やかな顔と全然違う棋士の顔。
テレビで見るのとは違って、怖いくらいの凄い迫力。

……ううう…緊張する……。

でも、こんな機会滅多にないから頑張ろう。

そう思って打ってたんだけど、舞い上がっちゃって、頭真っ白になってて黒は勝てる状況ではなくなってて…。

「……ありません」

あっさり投了しました。

アキラ先生に勝とうなんてこれっぽっちも思ってないけど、もう少しちゃんと打ちたかったな。

「緊張した?」

アキラ先生が微笑んでいる。
碁を打ってる時と普段が全く違うんだ。

「あっ、えっ?は、はい…」

あっ、アキラ先生に見とれてしまった…。
私な光明君一筋なのに!
でも、アキラ先生は私にとって女性としての憧れだもんね…

「光明に見せてもらった棋譜だと、もう少し打ててたから」
「…すみません」

せっかく打ってもらったのに申し訳ないよ。

「謝ることはないよ。相手が僕だから緊張したのかもしれないし、光明以外の人と打った方が良いかもね」

光明君以外の人と打つなんて考えたことなかったな。
明美ちゃんとは、あんまり打たないし。

「それから、時々驚かされる手を打って来るけど、恵ちゃん無自覚だろうから、光明ちゃんと教えてあげてね」
「はい」
そばで見ていた光明君にアキラ先生が言う。
私、アキラ先生にを驚かせるような手なんて打ってるの?






その後も、アキラ先生は詳しく時間をかけて今回の対局について検討してくれた。
こんな贅沢なことがあって良いのかな。
アキラ先生の指導碁受けるのは、お父さんでも大変だって言ってたもん。
ホントに贅沢な時間だった。





「も~~アキラ先生と打つなら先に言っておいてよ~~心臓に悪いよ~~」

アキラ先生が部屋から出てて行くと緊張から解放されて、体の力が一気に抜けた。

「悪い。お前の上達ぶりを確認してほしいってお願いしたら、何故か今日になった」

アキラ先生忙しいもんね。
でも、出来れば先に教えてください。





光明君の部屋には、碁の本の他に受験の為の本がある。
光明君は、来年中学生になんだよね。
学校で会えなくなっちゃう…寂しいな…。

噂通り、やっぱり海王かな?
でも海王だったら受験だから、私に碁なんて教えてる時間ないよね。

「光明君、やっぱり海王行くの?」
「ああ」
「じゃあ、受験勉強あるし教室も終わりだね」

光明君との時間がなくなってしまうのは辛いけど、受験だもん…しょうがないよね。

「教室止めるつもりないよ」

えっ?
そんな言葉が帰ってくるとは思わなかった私は、ビックリして光明君を見る。
てっきり、そうだな、清々するって言われると思ってたのに。

「お父さんに院生レベルにしろ!って言われてるし、お前に碁を教え続けるぐらいで、海王に行けなくなる頭はしてない。お前じゃあるまいし」

その通りだけど、そんなにズバッと言わなくても。
最近は優しくなったけど、こうやってズバッと言われることもあって、前より嫌われてないとは思うけど…好かれてもいないのかな。
でも、光明君との時間が続くのは嬉しい!

「ホントに続けてくれるの?」
「ああ」

ヤッターッッッ!!
これからも頑張ろう!!





ちなみに、アキラ先生の指導碁は年に2回ぐらいのペースで続くんです。
しかも、ヒカル先生に打ってもらうこともあったりして…幸せな過ぎるよ。
これで、強くなれなかったら申し訳ない環境だと思う……。


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