女王様を手に入れろ! 35
(光明サイド)

「光明、誕生日おめでとう!!」

パンッ!パンッ!

クラッカーがなっている。

今日は3月5日、僕の11回目の誕生日なんだけど…。

(今年も凄いな…)

明子お祖母ちゃんが凄く張り切って大がかりなパーティー開いてくれるんだけど、最近は少し憂鬱だ。
お父さんが言うには、お母さんの誕生日ハーティーが出来なかった反動らしいけど…毎年凄過ぎるんだ。

ところで、不思議なんだけど…。
なんで藤ノ宮がいるんだ?

最近、妙にうちに馴染んでないか。
碁を教える日以外も、うちに遊びに来てるし。
今日のハーティーも、明子お祖母ちゃんが当然のように誘ってたしな。

しかも不思議なことに、藤ノ宮やうちに来てもイライラしたりすることが、いつの間にか無くなっていてきている気がする。

「何故イライラしなくなってきたんだろ?」

無意識に声に出してぼやいてたら、明美と明子お祖母ちゃんに、こんなことを言われた

「兄貴、気付いてないんだね」
「アキラさんに似て鈍感で困るわ…」

えっ?明美、気付いてないってなにをだ?
明子お祖母ちゃん…鈍感てどういうこと。
お母さんに似てるって言われるのは嬉しいけど、2人の言うことがイマイチ解らない。





「光明君、ごめんね。もう少しで出来るから」

藤ノ宮が慌てて手を動かしながら、そんなことを言っている。
そんなに慌てたら、また目を落とすぞ。

僕は今、片袖がまだ出来てない未完成なセーターを着せられて、完成するまで待つように言われている。

僕には、もう少しで終わるなんて思えないけどな。

「セーターか…。アキラにセーター貰った時思い出すな…」

お父さんがしみじみと言った。

あ……あれね…。
時々出して眺めてはニマニマしてるセーターね…。
セーター貰った時の喜びから何から何まで、堂々と何度も話してくれる父さん。
子供の前でも平気で惚気てくれるから、こっちが恥ずかしくなる。

「止めてくれ」

…って、お母さんが恥ずかしそうに言ってるけど聞きやしない。
今でも、お母さんに初めて貰ったこのセーターは、お父さんの宝物だそうだ。

藤ノ宮が一生懸命編む姿を見てたら、お母さんもこんな感じで一生懸命編んでたのかな…と思う。

「お前も恵ちゃんから貰ったら大事にしろよ。なんなら手入れの仕方教えてやるぞ」
「別にいいよ…」

お父さんみたいに好きなひとに貰ったセーターじゃ…ない…し…。

「…………」

あれ?
別に藤ノ宮のことなんて、なんとも思ってたい筈…だよな。





ちなみに、セーターが完成したのは、誕生日から2日後だった…。
けっこう上手く出来てる…お母さんには負けてるけど。


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