「光明、誕生日おめでとう!!」
パンッ!パンッ!
クラッカーがなっている。
今日は3月5日、僕の11回目の誕生日なんだけど…。
(今年も凄いな…)
明子お祖母ちゃんが凄く張り切って大がかりなパーティー開いてくれるんだけど、最近は少し憂鬱だ。
お父さんが言うには、お母さんの誕生日ハーティーが出来なかった反動らしいけど…毎年凄過ぎるんだ。
ところで、不思議なんだけど…。
なんで藤ノ宮がいるんだ?
最近、妙にうちに馴染んでないか。
碁を教える日以外も、うちに遊びに来てるし。
今日のハーティーも、明子お祖母ちゃんが当然のように誘ってたしな。
しかも不思議なことに、藤ノ宮やうちに来てもイライラしたりすることが、いつの間にか無くなっていてきている気がする。
「何故イライラしなくなってきたんだろ?」
無意識に声に出してぼやいてたら、明美と明子お祖母ちゃんに、こんなことを言われた
「兄貴、気付いてないんだね」
「アキラさんに似て鈍感で困るわ…」
えっ?明美、気付いてないってなにをだ?
明子お祖母ちゃん…鈍感てどういうこと。
お母さんに似てるって言われるのは嬉しいけど、2人の言うことがイマイチ解らない。
「光明君、ごめんね。もう少しで出来るから」
藤ノ宮が慌てて手を動かしながら、そんなことを言っている。
そんなに慌てたら、また目を落とすぞ。
僕は今、片袖がまだ出来てない未完成なセーターを着せられて、完成するまで待つように言われている。
僕には、もう少しで終わるなんて思えないけどな。
「セーターか…。アキラにセーター貰った時思い出すな…」
お父さんがしみじみと言った。
あ……あれね…。
時々出して眺めてはニマニマしてるセーターね…。
セーター貰った時の喜びから何から何まで、堂々と何度も話してくれる父さん。
子供の前でも平気で惚気てくれるから、こっちが恥ずかしくなる。
「止めてくれ」
…って、お母さんが恥ずかしそうに言ってるけど聞きやしない。
今でも、お母さんに初めて貰ったこのセーターは、お父さんの宝物だそうだ。
藤ノ宮が一生懸命編む姿を見てたら、お母さんもこんな感じで一生懸命編んでたのかな…と思う。
「お前も恵ちゃんから貰ったら大事にしろよ。なんなら手入れの仕方教えてやるぞ」
「別にいいよ…」
お父さんみたいに好きなひとに貰ったセーターじゃ…ない…し…。
「…………」
あれ?
別に藤ノ宮のことなんて、なんとも思ってたい筈…だよな。
ちなみに、セーターが完成したのは、誕生日から2日後だった…。
けっこう上手く出来てる…お母さんには負けてるけど。