「さあ、緒方さんへの美味しいチョコ作るぞっっ!!」
明美…凄いやる気だね。
僕の娘だとは思えないぐらいテンションが高い。
顔は僕に瓜二つだから間違いなく僕の娘なんだけど、中身はヒカルに似たね。
「明美、ヒカルのチョコも準備してるよね?」
嫌な予感がしてるんだけど、一応聞いてみた。
ヒカルは毎年、僕のチョコを楽しみにしてくれているけど、明美のチョコも楽しみにしている。
「えーなんで?お父さんの分は去年で終わりだよ」
あっ、やっぱり。
もうお父さん離れなのか?
ちょっと早くない?
それとも、こんなもの?
明美からチョコを貰えないとなったら…しかも緒方さんに手作りチョコを渡してるって、ヒカルが知ったら…。
……考えたくない。
「明美ちゃん、ヒカル先生の分のチョコ作ってあげようよ。私もお父さん分の作るから」
恵ちゃんからの助け船。
ありがとう。
「えーっ、なんでー?」
「なんで?って言われても…」
なんだか、ヒカルにチョコを渡すのが嫌なみたい。
「恵ってパパっ子?」
「えっ、あ…あ明美ちゃんだって、お父さん好きでしょ」
「そ、それは……」
明美はヒカル好きだよね…。
今は緒方さん一直線だけど…。
「明美がチョコ渡さなくてヒカルが寝込んだら、明日からの御飯は保証出来ないよ」
明日から、お母さん達は旅行に出かける。
相変わらず、仲良くよく旅行に行く2人だ。
「うわ~脅し……酷い…」
「脅しじゃなくて事実だよ」
今だって力入れて混ぜたせいで、失敗したんだから。
少しは出来るようになったとはいえ、6人分は辛い。
「お兄ちゃんに作ってもらえば良いじゃない。それがダメなら店屋物で良いよ」
ヒカルにチョコ作ってあげてくれ。
僕の平和の為に。
「えっ、光明君、料理出来るの?」
恵ちゃんが驚いてる。
小学4年生で男の子だから、驚くのも無理はないか。
「うん、出来るよ。小1で目玉焼き焼けてたし、お父さんと張り合ってるうちに覚えたみたい」
本当にヒカルと張り合ってる間に覚えたんだよ。
お母さんさん達も教えたりしてたけど。
「どっちが、アキラさんに誉められるか競争してたのよね」
お母さん…余計なこと言わないでください。
自分の息子と本気で張り合う父親なんて、恥ずかしいじゃないですか。
「凄い!」
と…驚いてる恵ちゃん。
料理が出来る光明に驚いてるのか…それとも、息子と本気で張り合うヒカルに驚いてるのか…。
「だから、料理なんか頑張らなくて良いと思うよ。そのままお兄ちゃんの彼女に納まっちゃえ」
「えっ………///」
照れて真っ赤な恵ちゃん。
そして、僕と同じく力を入れ過ぎて、1からやり直すことになってしまった。
料理は練習した方が良いと思う。
恵ちゃんは、まだ間に合うよ。
僕なんて17ぐらいで始めたから…未だにこの状態だし。
悔しい~~。
「なんだか…明美ちゃんと恵ちゃん見てると微笑ましいわ…v恵ちゃんの失敗の仕方がアキラさんそっくりだし…v」
見るからにウキウキしてるお母さん。
僕達の時みたいに余計なことはしないでくださいよ。
確かに…明美と恵ちゃんを見てると、なんだか微笑ましい。
僕も同学年の女友達いたらあんな感じだったのかな。
恵ちゃんのお陰で、光明も明美も楽しそう。
ヒカルの焼きもちから始まった関係だけど、一応感謝するべきかな?
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バレンタインデー当日。
「緒方さん…これ受け取ってください」
明美にチョコを差し出されて固まる緒方さん。
「良かったら食べてみてください」
明美は上目遣いで、緒方さんを見つめる。
あ~~不味い。
僕がいうのもなんだけど、妹弟子は大事にしろ!精神が染み付いてるから、あの顔で見つめられたら、緒方さん断れないんじゃないかな?
ちょっと恨むよ…過去の僕。
「…………」
明美のチョコを食べた緒方さんは、色々危険を感じたのか、ヒカルを通して藤ノ宮さんにまでお願いして、お嫁さん探しを加速させた。
まさかとは思いますが、明美に胃袋捕まれそうで怖くなった……とか言いませんよね?
「明美~~なんで緒方さんにチョコなんか渡すんだよ」
ヒカルが予想通り叫んでる。
「はい!これ、お父さんの分」
ちよっとがさつだけど、ヒカルの目の前に差し出された箱。
そう…あの会話のあと恵ちゃんと一緒に作ったチョコだ。
「明美~~~~ありがとう!!」
今日は、なんとか卒倒せずに済むみたいだ。
「とりあえず、今日はぼくが御飯作らなくても大丈夫だね」
そういう光明の手には、恵ちゃんの作ったチョコがある。
ちゃんと食べてあげてるんだ。
良かった…。
一生懸命作ったもんね。
何回、同じことをやったことか……。
あっ、僕もヒカルにチョコ渡したよ。
あと、お父さん達にもね。
僕も年々上手くなってると……思う。