女王様を手に入れろ! 32
(アキラサイド)

「さあ、緒方さんへの美味しいチョコ作るぞっっ!!」

明美…凄いやる気だね。
僕の娘だとは思えないぐらいテンションが高い。
顔は僕に瓜二つだから間違いなく僕の娘なんだけど、中身はヒカルに似たね。

「明美、ヒカルのチョコも準備してるよね?」

嫌な予感がしてるんだけど、一応聞いてみた。
ヒカルは毎年、僕のチョコを楽しみにしてくれているけど、明美のチョコも楽しみにしている。

「えーなんで?お父さんの分は去年で終わりだよ」

あっ、やっぱり。
もうお父さん離れなのか?
ちょっと早くない?
それとも、こんなもの?
明美からチョコを貰えないとなったら…しかも緒方さんに手作りチョコを渡してるって、ヒカルが知ったら…。
……考えたくない。

「明美ちゃん、ヒカル先生の分のチョコ作ってあげようよ。私もお父さん分の作るから」

恵ちゃんからの助け船。
ありがとう。

「えーっ、なんでー?」
「なんで?って言われても…」

なんだか、ヒカルにチョコを渡すのが嫌なみたい。

「恵ってパパっ子?」
「えっ、あ…あ明美ちゃんだって、お父さん好きでしょ」
「そ、それは……」

明美はヒカル好きだよね…。
今は緒方さん一直線だけど…。

「明美がチョコ渡さなくてヒカルが寝込んだら、明日からの御飯は保証出来ないよ」

明日から、お母さん達は旅行に出かける。
相変わらず、仲良くよく旅行に行く2人だ。

「うわ~脅し……酷い…」
「脅しじゃなくて事実だよ」

今だって力入れて混ぜたせいで、失敗したんだから。
少しは出来るようになったとはいえ、6人分は辛い。

「お兄ちゃんに作ってもらえば良いじゃない。それがダメなら店屋物で良いよ」

ヒカルにチョコ作ってあげてくれ。
僕の平和の為に。

「えっ、光明君、料理出来るの?」

恵ちゃんが驚いてる。
小学4年生で男の子だから、驚くのも無理はないか。

「うん、出来るよ。小1で目玉焼き焼けてたし、お父さんと張り合ってるうちに覚えたみたい」

本当にヒカルと張り合ってる間に覚えたんだよ。
お母さんさん達も教えたりしてたけど。

「どっちが、アキラさんに誉められるか競争してたのよね」

お母さん…余計なこと言わないでください。
自分の息子と本気で張り合う父親なんて、恥ずかしいじゃないですか。

「凄い!」

と…驚いてる恵ちゃん。
料理が出来る光明に驚いてるのか…それとも、息子と本気で張り合うヒカルに驚いてるのか…。

「だから、料理なんか頑張らなくて良いと思うよ。そのままお兄ちゃんの彼女に納まっちゃえ」

「えっ………///」

照れて真っ赤な恵ちゃん。
そして、僕と同じく力を入れ過ぎて、1からやり直すことになってしまった。
料理は練習した方が良いと思う。
恵ちゃんは、まだ間に合うよ。
僕なんて17ぐらいで始めたから…未だにこの状態だし。
悔しい~~。





「なんだか…明美ちゃんと恵ちゃん見てると微笑ましいわ…v恵ちゃんの失敗の仕方がアキラさんそっくりだし…v」

見るからにウキウキしてるお母さん。
僕達の時みたいに余計なことはしないでくださいよ。





確かに…明美と恵ちゃんを見てると、なんだか微笑ましい。

僕も同学年の女友達いたらあんな感じだったのかな。
恵ちゃんのお陰で、光明も明美も楽しそう。
ヒカルの焼きもちから始まった関係だけど、一応感謝するべきかな?





●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇





バレンタインデー当日。





「緒方さん…これ受け取ってください」

明美にチョコを差し出されて固まる緒方さん。

「良かったら食べてみてください」

明美は上目遣いで、緒方さんを見つめる。
あ~~不味い。
僕がいうのもなんだけど、妹弟子は大事にしろ!精神が染み付いてるから、あの顔で見つめられたら、緒方さん断れないんじゃないかな?
ちょっと恨むよ…過去の僕。

「…………」

明美のチョコを食べた緒方さんは、色々危険を感じたのか、ヒカルを通して藤ノ宮さんにまでお願いして、お嫁さん探しを加速させた。

まさかとは思いますが、明美に胃袋捕まれそうで怖くなった……とか言いませんよね?

「明美~~なんで緒方さんにチョコなんか渡すんだよ」

ヒカルが予想通り叫んでる。

「はい!これ、お父さんの分」

ちよっとがさつだけど、ヒカルの目の前に差し出された箱。
そう…あの会話のあと恵ちゃんと一緒に作ったチョコだ。

「明美~~~~ありがとう!!」

今日は、なんとか卒倒せずに済むみたいだ。

「とりあえず、今日はぼくが御飯作らなくても大丈夫だね」

そういう光明の手には、恵ちゃんの作ったチョコがある。

ちゃんと食べてあげてるんだ。
良かった…。
一生懸命作ったもんね。
何回、同じことをやったことか……。




あっ、僕もヒカルにチョコ渡したよ。
あと、お父さん達にもね。
僕も年々上手くなってると……思う。


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