女王様を手に入れろ! 31
(明美サイド)

「なんで、お前は僕の上に落ちてくるんだ?!」

私から言わせれば、恵ちゃんが 落ちる度に、兄貴が下にいるっていうのが不思議だよ。
よっぽど縁があるんだね。

「大丈夫?進藤君」
「……大丈夫だよ」

とか言いつつ、足を引きずってるじゃない。
大丈夫じゃないね…アレは足やっちゃった感じ?
恵を庇いきれなくて、足を怪我したのが認めたくないのか…それとも恥ずかしいのか。
どっちかな?
両方?

「保健室行った方が良いんじゃない?」
「煩い…」

足を引きずりながら、私の横を通り過ぎようとする兄貴に言ってやった。

「やせ我慢しないで、保健室行きなよ」
「………」

ちゃんと行くかな…。
まあ、クラスの人が引きずってでも連れて行ってくれるでしょう。
私が連れていっても良いけど、強がってる兄貴を相手にするのは面倒だから嫌だ。
ママに似て頑固だから、意地になってる時は言うこと聞いてくれないし。

「大丈夫かな?進藤君…」

恵が心配そうにしている。
でも、追いかけては行かない。
今、追いかけて世話やいても、冷たくあしらわれるだけだもんね~。
恵も、その辺り学んだみたい。

「それより…階段降りる時は慌てないようにって、いつも言ってるでしょ!いつか大怪我するよ」

恵は階段を慌てて降りる癖があって、躓いて落ちそうになることがよくある。
幸いって言って良いのか解らないけど、残り2~3段で躓くから、今のところ大怪我には繋がってない。

「ごめんなさい…」

私と初めて会った時も階段から落ちて来たんだ。





「大丈夫?」
「う、うん…ごめんなさい」

あれ?この子って?

「もしかして、藤ノ宮恵さん?」
「えっ?はい、そうですけど」
「やっぱり!私、進藤明美」

当たってた。
兄貴が碁を教えてる時は、行洋お祖父ちゃんの所に居たり明子お祖母ちゃんと買い物に行ってるから、家で会ったことはないけど、時々見かけてたんだよね。

兄貴に一目惚れして、碁を習いに来たって聞いた時は、ホントにビックリした。
確かに顔は良いけど、中身は冷たい男だよ?
理想のタイプは母親っていうマザコンで、見た目で選ぶと苦労する男の典型だと思うんだけどなぁ。

だから、どんな子なのか気になってたんだけど、優しくてドジで一生懸命で根性のある可愛い子だった。

なんと言っても、兄貴のスパルタ教室にもめげずに付いていってるもんね。
碁を少しずつ上達してるし。
私も時々打ってるから解る。

兄貴には勿体ないと思う…うん
それに、なんか…お似合いかも。
恵の一生懸命で根性があって、ちょっとドジなところって、料理してる時のママと同じだし……。
兄貴の理想に近いじゃん。

これは、もしかしたら…もしかするかも…。
よしっ!応援しよう!





「ねぇ恵、もうすぐバレンタイン·デーだしチョコ作らない?」

恵の応援しながら、飛びきり美味しいチョコ作って緒方さんにあげるんだ。

「えーっ、でも、もし上手く出来なかったら…」
「大丈夫だよ。私もいるし、明子お祖母ちゃんにお願いしておくから、兄貴をギャフンと言わせよう!」
「……うん」

もしかしたら、ママも一緒に作ることになるかもしれないな…。
時間がない時は買って済ませてるけど、時間がある時は明子お祖母ちゃんの指導で手作りしてるから。
ママ…料理の上達諦めれば良いのに、まだ諦めてないんだよね…。

「ねえ、明美ちゃん、チョコ作って緒方先生にあげるの?」
「当然!」

私のチョコで緒方んのハートをGet!

「私が言えたことじゃないけど…緒方先生は無理なんじゃないかな。年が離れてるし…。なにより親より年上って…」

そんなこと、やってみないと解らないじゃない。
碁と同じて粘って…粘って勝てる道を探すのよ。
諦めたら、そこで終わるんだから。
諦めずに頑張るのみ!!

ファイト!!


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