女王様を手に入れろ! 29
(アキラサイド)

「ヒカル、お義母さんがお粥作ってくれたけど食べられそう?」
「ああ」

明美の爆弾発言から5日。
ヒカルはまだ寝込んでいた。
ここの所に忙しかったから疲れが溜まってたんだろうけど、明美の発言のショックで熱を出すなんて、元気が取り柄のヒカルなのに珍しいこともあるもんだ。
それだけショックだったんだろうけど。

「いつまで落ち込んでるんだ?緒方さんお嫁さん…なんて一時的なものだろうし、いつまでもお父さんのお嫁さんになる!…っていうのも、可笑しいと思うよ」

女の子の父親って、皆こんなものなのか?
そんなことはない…筈だよね?
お父さんは、こんな感じじゃなかったし。
ヒカルが明美と正美を溺愛し過ぎなんだと思う。

「女の子の定石だってことは解ってるよ…。解ってるけど辛いんだよ。しかも……緒方さんのお嫁さんになるって言い出すなんて……」

確かにね…。
まさか、緒方さんのお嫁さんになる!なんて言い出すんなんてビックリしたよ。

「考えてもみろ!緒方さんに娘さんをください…とか、お義父さん…とか言われるんだぜ。考えただけで寒気がする……」

……想像したら……僕も寒気がしてきたかも。

「気が変わって、別の人好きになるよ…」

うん、年の差を考えたら、緒方さんと結婚しない可能性の方が高いんじゃないのか。

「でも一途なオレに似たんだぜ」
「………」

せっかく安心出来ると思ったのに、なんてこと言うんだ。
不安になって来たじゃないか。

「なんで緒方さんなんだよ……明美~~」

ああ、また泣き出した。
泣きながら、お粥を食べるヒカル。
倒れてから、ずっとこんな調子なんだよ…。

「そもそも…緒方さんであろうと誰であろうと、明美と正美は誰にもやらないからなっっっ!!」

それは、流石に無理なんじゃないかな。
明美や正美が、結婚しない…って言ったら話は別だろうけど。

あ~も~この娘溺愛男を、どうやって立ち直らせたらいいんだ!






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「急に、先生にお見合いを薦められたんだが…訳を知らないか」

緒方さんに呼び止められて訪ねられたから、素直に理由を話した。

「明美が、緒方さんのお嫁さんになる!って言い出したんですよ」
「な、なに?」

あっ、緒方さんの顔が引きずった。
8才の子に求婚?されたら、そうなるよね…。
一体、幾つ離れてるんだっけ?

「それで、年の差とか色々あって孫を緒方さんにやる訳にはいかない!ってことになっての、お見合い攻撃です」

緒方さんの顔が益々険しくなってきた。

「僕も緒方さんに、娘さんをください!とか、お義母さん…なんて言われたくないので、とっとと結婚してください」

自分で言ってて鳥肌が立ってきた……。
緒方さんに、お義母さん…て呼ばれるなんて、絶対お断りだ!
それに今のままだと、男の誰かが明美をください…って挨拶に来たら、ヒカルは卒倒するだろうけど、万が一緒方さんだったら、卒倒だけじゃすまないだろうな……。

「緒方さん…お付き合いしてる女性一杯いるでしょう」
「アアアア…アキラ君…」

「僕が知らないと思ってました?いつまでも子供扱いは止めてください」

僕だって、今年で30ですし、4人の子を持つ母親なんですよ。
追及はしないけど、色々あることも知ってます。

「お父さんも本気だから、このままだとお見合い結婚する羽目になりますよ。緒方さんが良いなら構いませんけど、嫌なら自分で見つけてくださいね」

我が家の平和の為にも、是非お願いします。

「まだ明美は8才ですし、あと10年は猶予があると思うので、頑張ってください」

なんとしても身を固めてください。

「もし明美が結婚出来る年になって、まだ御方さんのお嫁さんになる!って言ってたら、責任持って諦めさせてくださいね」

今、僕、笑顔だろうけど目は笑ってないと思う。
明美の気持ちを尊重してあげたいけど僕も反対だから。
緒方さんだしね。

「お、おいっ…」

ヒカルは似で一途だから、その頃まで気持ちが変わってないとなると、かなり大変だろうけど…。
僕も思い込んだら突っ走るタイプだし…。
それを解ってるから、お父さん達が本気で緒方さんを結婚させようとしてるんだろうな。
頑張ってくださいね…緒方さん。





その後、なんとかヒカルは立ち直った。

えっ、どうやって立ち直らせたか…って?
ゴホン……それは秘密です。
というか…バレバレだよね…多分。
ヒカルは、いつもそればっかり…。
まあ、ちゃんと、心得てくれてる筈だから5人目はない筈なんだけど…。

そして、緒方さんは真面目に結婚を考え始めたとか。
とりあえず安心かな。


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