女王様を手に入れろ! 27
(光明サイド)

僕の名前は進藤光明、3月5日生まれで小学生4年10才。
進藤ヒカルと塔矢アキラの息子です。
有名な両親のお陰か、僕もそこそこ有名らしくて、下駄箱に手紙が一杯入ってたりすることもしょっちゅうで…。

「モテる男は辛いね」
「羨ましいヤツめ」

クラスメイトには、そんなことを言われるけど、片付けるのが面倒だし迷惑なだけだ。

「モテるのは両親の名前だけじゃない。鏡を見ろ!」

とも言われる。
えっ、なに?鏡を見ろって、僕の顔なにか可笑しいのか?

「好きです」

呼び出されて、いきなり言ってくるヤツもいるんだけど、言ってきたヤツには全く何も思わなかった。
僕の理想は高いんだ。
だって僕の理想は、お母さんだから。

キレイで碁が強くて、碁に向かう態度は真剣で女王様みたい。料理に関することはダメだけど、誕生日とか記念日になると父さんやお祖母ちゃん達に教えてもらいなが、一生懸命作ってる姿が…可愛い。
お母さんにこんなことを思うのは可笑しいかもしれないけど、可愛いのは可愛いからしょうがない。

そういえば5才ぐらいの時、お父さんとお母さんを真剣に取り合って、お父さんがお母さんに怒られてたっけ。
5才の僕と本気で喧嘩する父さん…。
ちょっと可笑しいかもしれないけど、それだけお母さんが好きだと言うこと。
家ではのほほんとしてるけど、碁を打ってる時のお父さんはストイックで凄くカッコいい…と、思ってることは絶対言ってやらない。

碁は行洋お祖父ちゃんに教え貰った。
一応、実力はプロレベルらしくて、いつプロ試験受けるんだと、周りなら言われてたりして、僕もいつかはプロになるんだろうな…ぐらいの気持ちはあるけど、絶対プロになりたとまでは思わない。
これ、父さん達に言ったら驚くかな?
碁は好きなんだけどな。





お母さんに碁を教えて欲しいと、毎日家に来ていた藤ノ宮。
僕に近付きたいからと言って、お母さんに弟子入りをお願いするなんて、お母さんに迷惑じゃないか。
それでなくても、お母さんは正美の世話や対局なんかで忙しいのに、お前なんかに碁を教えてる暇はないんだ!
お母さんも無理に追い返さないのは、父さんの後援会の会長の娘だから。

なんて思ってるうちに、お父さんの提案で、藤ノ宮恵に碁を教えることになってしまっていた。

なんで僕っ!が、と重いながら教え始めたのは良いけど、どうしてあんなに覚えが悪いんだ。
もう何回、同じことを教えたんだろう。
そして、僕は何回叫んだんだろう。
僕があんなに叫べたなんて、自分でも驚いた。

お父さんに、どれぐらい打てるようになるまで教えれば良いのか聞いてみたら、とんでもないことを言われてしまった。

「う~ん…院生試験に受かれる程度までかな」

ちょっと、待って!!
院生試験に受かるレベルって……絶対!無理だから!
そんなの一生かかっても無理って、もしかして一生面倒見ろってことですか?
そんなの嫌だ。
お父さん…僕になにか恨みでもあるんですか?
あっ、もしかして、僕がお母さんをお嫁さんにするって言ったのを根に持ってるとか……。

どっちにしても気が重い……。





「恵ちゃん、危ないよ」
「大丈夫だよ、これぐらい…」

階段の上から藤ノ宮の声がする。

学校でまで、藤ノ宮に関わりたくないから速くここから離れよう。
そう思ってたんだけど……。

「あっ」
「危ないっ!」

バシャッ!!

「………っっっ……!!」
「進藤君!?」

藤ノ宮が運んでいたバケツの水を、僕は頭から水をかぶってしまった。
なにが大丈夫だよ…だ!

「しし進藤君!だだ大丈夫?」

藤ノ宮が慌てて駆け寄ってくる。
学校でまで関わりたくないなかったのに、なんでこうなるんだよ……!
あっ、着替えあったけ?





とにかく藤ノ宮……。
お前は学校でまで、僕の日常を乱すのか?
頼むから、僕の日常を乱さないでくれ!!


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