今、オレはアキラの荷物持ちです。
結婚後、初のデートがこれって、ちょっと悲しくない?…って言われそうだけど、これにはちゃんと訳があって、オレも納得済み。
……だけど、重い。
車の免許取っとくべきだったかな。
あとで、纏めて家まで送ろう。
うん、それが良い。
でもって、腹減った~~~。
「お~~いっ!アキラ…。腹減った…。ハンバーガー食おうぜ」
「まだ見ないといけない物が一杯あるのに……しょうがな…」
ナックルナルドでスラスラと注文するアキラを満て、初めて連れてきた時の思い出す。
あれは名人戦予選の後、しばらく経ってからだったか……。
どうして良いか解らなくて、呆然と立ち尽くしてたっけ。
懐かしいな……。
「食べ終わったら、次は家具を見るぞ」
アキラの心は既に次に見る家具に向かっている。
デートだとは思ってないな…これは。
まあ、しょうがないんだけど、ちょっと悲しいかも。
「その前に、この荷物家に送らない?」
「なんで?」
そんな…考えてもみなかったみたいな顔するの止めてくれよ…。
マジで重いんだからさ。
「これを持って、店回るの嫌だし…電車なんてもっと嫌だ」
「嫌だ!配送なんかしたら明日になるじゃないか!僕は今日中にカーテンやベッドだけでも模様替えしたいだっ!」
「気持ちは解るけど…重いんだよ!」
「男の癖にだらしないぞっ!それぐらい頑張れ…」
「………」
うわ~~久し振りの塩対応……。
ほんの1年前まで、これが普通だったんだよな。
最近、アキラが優しいから忘れてました。
あ~~~こんなことなら、家具を先に見れば良かった。
段取りミスった~~。
えーっ、アキラが久し振りの塩対応を見せるぐらい燃えてる原因は、オレ達の部屋にある。
結婚式の後、和谷達とドタバタやってる間に、明子さんがオレ達の部屋を明子さん好みの部屋にしてしまっていた。
結婚式の準備や仕事で忙しかったから、自分達の部屋への引っ越しは式の後、ゆっくりしようとアキラと話してたんだけど……明子さんがそれを許してくれず、家に帰ると部屋が移ってて更にピンクを貴重とした……こういうの何て言うの?
メルヘン?
スイート?
…とにかく、そんな感じの部屋になっていて、アキラがキレていた。
ちなみに、オレは写真公開のショックから立ち直ってなくて、ビックリはしたけどアキラほど怒りは沸いてこなかった、
それから、結婚式も披露宴も明子さんに任せて、かなり後悔したオレ達は、長く…下手したら一生済むことになる部屋のインテリアは自分達で決めることにして、今日の買い物になった訳だ。
オレは基本荷物持ちだけど、ちゃんと自分の意見は言ってる。
選んだ物が黒と白になりそうな時は、2人で苦笑いして別の色にしたけど。
黒と白って……モノトーン好きでもそれはあまりにも……。
どこまで、囲碁バカなんだろう?
えっ、関係ない?
ちなみに、模様替えをすると知った明子さんは、本気で残念がってたけど……。
すみません…明子さん、
今回ばかりは、アキラに賛成です。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「げっ、緒方先生」
家に帰ると緒方さんがいた…。
「よう!進藤」
「なんで、いんの」
「先生に用事があってな」
当分会いたくないと思ってた人に、こんなに速く会うなんて……。
オレってツイてない……
「披露宴では面白いネタをありがとう。あれから棋院では、あの話題で持ちきりでな。是非生でみたい…という意見もあるほどだ」
「げっ!」
マジか……嫌だ……。
オレは披露宴以来、まだ棋院には行ってない。
「いつかあるかもしれない棋院関係の余興で、是非女装姿を披露してくれ」
そんな集まりないことを祈ります!
「緒方さん、ヒカルをからかうのはやめてください」
「アキラ君…変われば変わるもんだ」
「行くよ!ヒカル」
「おう」
緒方さんの言葉を無視して家に入るアキラ。
今日のアキラは女王様モードだから、言うことを聞くに限る。
「あっ、荷物は置いておいていいから」
「えっ?」
「緒方さんに運んで貰うから」
とびっきりの営業スマイルなアキラ。
「な、なに?」
うわ~~~緒方さんに塩対応。
こんなこと出来るのはアキラだけ?
……いや桑原のじーちゃんも出来るかも。
「お願いしますね…緒方さん」
「……あ、ああ」
緒方ん、頑張ってください。
その荷物、相当重いですよ。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「お疲れ様…」
アキラがコーヒーを持ってきた。
この部屋には小さなキッチンがついている。
食事な家族全員が基本だけど、冷蔵庫もあるし簡単な料理なら、ここで作れる。
棋士生活に集中出来るようにという明子さんの心遣いなのか?
それにしても…外観ほそのままに中だけ、こんなに改装するなんて…明子さん凄すぎる。
「まだ家具が来てないから、ちょっとチグハグだけど、ベッドとカーテン変えたから、少しは落ち着くかな」
「そうだね」
アキラも持っていたコーヒーを飲む。
「ところで、新婚旅行どうする?」
「僕は行かなくても良いんだけど……」
明子さんが煩いからな……。
それに……。
「結婚式があんなんだったから、せめて新婚旅行はちゃんと思い出作りたいと思ってるんだけど」
「ヒカル……」
「お前のスケジュールがキツいから、いつ行けるか解らないけど、国内でも良いからさ…因島とか」
「えっ、因島って、秀策?」
「ああ、お前に話したいことあるから……」
オレはアキラに佐為のことを話そうと思ってる………。