「あ~~~~っっっ!!最悪だ~~~~」
頭を抱えて落ち込むヒカル。
家に帰ってきてから、ずっとこの調子だ。
今日は、僕とヒカルの結婚式と披露宴だっだんだけど……、
披露宴でヒカルの女装写真が公開されてしまって……。
「お袋っっっ!!」
って、真っ赤な顔して怒鳴ってたな……。
僕は隣で唖然としていた。
まさか、結婚式で公開するなんて…。
「皆さんに公開出来て幸せだわ」
一方の、おば様は清々しい顔で笑ってた……。
それが、更にヒカルの怒りを増幅させたわけだけど……。
僕に見せてくれた時も楽しそうだったから、きっと皆に見せたかったんだと思う。
会場中大爆笑の大盛り上がり。
それに比例するようにヒカルの機嫌が急降下。
こんなことなら、披露宴の内容確認しておけば良かった。
時間がなかったし興味もなかったから、ヤル気満々だったお母さんに任せたんだけど、それが間違いだった。
ちょっと、いや、かなり後悔。
ドレス選びの時に先読み出来なかった自分が情けない。
生まれた時から一緒にいるのに。
物凄い量のドライアイスが焚かれた中から登場とか……煙かったな…。
あれ、テーブルの位置によっては、招待客も巻き添えになってたよね。
お色直ししてゴンドラに乗って登場とか。
レース一杯のドレスは諦めさせたけど、ドレス2着と、着物1着選ばされたんだよね……。
あと、とても高いケーキ。
なんでも、今までにない高さに挑戦してほしいという、お母さんの希望に沿った結果らしい。
なんかもう…式場のスタッフの皆さんにお詫びに行った方が良いんじゃないかと思うぐらい、2週間でよくここまでやってくれなよ。
スタッフの皆さんも仕事だからやるんだろうけど。
そんな豪華というか派手な披露宴だったから、いまいち自分のだという実感がないまま終わってしまった。
一生に1度なのにこんなので良かったんだろうか。
結婚式は普通だったんだよ。
「和谷達はともかく緒方さんには一生からかわれる…悪夢だ~~」
一生はオーバーだよ……、
……って、言ってあげられないのが辛い。
披露宴の後の緒方さん、面白いオモチャを手に入れて喜んでる悪い大人顔してたから…。
兄弟子だし長い付き合いだから解る。
ヒカルをからかう気満々だ。
和谷君達は、しばらく、からかうだろけど、そのうち収まると思う。
昨日の披露宴の後に、後援会とか抜きにしてノビノビ祝いたいという和谷君達の提案で、普通のお店でパーティーにもやったんだけど、そこには、ヒカルの院生時代の仲間だけでなく中学時代の囲碁部の仲間、それに岸本先輩や日高先輩までいて驚いた。
「披露宴からいたわよ。相変わらずね…アンタ」
久し振りに会って日高先輩に呆れられてしまう僕。
本当に気付かなかったんです。
テーブル1つ1つ回った筈なのに…。
そして、ヒカルは女装について和谷君や奈瀬さんにからかわれていた。
「意外と似合っててビックリした」
「今、やっても似合うんじゃない?」
「じよ、冗談じゃない!!誰がやるか!!」
「え~っ、もっと見たいっ!目の保養。皆もそう思うでしょ」
奈瀬さんの言葉に参加者一同完全同意。
「絶対!やらないっっっ!!」
それ以上は止めてください。
宥める僕の看になってほしい……。
「ねぇ、塔矢、アンも進藤が小さい頃こんなことしてたこと知らなかったの?」
「…………っっ!!」
ヒカルか、言うなよ!…と言うように僕を睨んでる。
言わない…。
言わないから、睨むの止めてくれ。
寧ろ僕がお母さん達の次に秘密を知れて嬉しいから、知ってたなんて誰にも言わない。
幼馴染みの藤崎さんが知らないことを、僕が知ってるのが嬉しいんだ。
そして、言えない……。
絶対!言えない!!
結婚祝いに、おば様にヒカルの女装写真のアルバムを貰ったなんて、ヒカルに絶対言えない。
貰ったアルバム隠さないと。
あっ、もうおば様じゃなくてお義母様か…。
「いつまでも悩んでたって仕方ないだろ…覚悟決めろ」
「他人事だと思って……」
「実際、他人事だし…」
「おいっ!」
本当に女装が嫌だったんだね…。
僕は、けっこう好きなんだけとな。
「そんなことより、一緒の部屋になって初めての夜を不貞腐れて過ごすつもりなのか?」
最近、忙しくて録に2人でゆっくり出来てなかったのに。
「だったら、僕、別の部屋で寝るよ」
「………っっっ!!」
「えっ、ちょ、ちょっと…」
突然、ヒカルに押し倒される僕。
急にビックリするじゃないか!
でも、ヒカルが僕の方に向いてくたから良いか。
…それにしても…この部屋も模様替えしたい……。
結婚式の翌日、僕とヒカルは役所に行って、僕は進藤アキラになった……。