女王様を手に入れろ! 16
(ヒカルサイド)

「進藤が僕の傍からいなくなるなんて嫌だよ……」





塔矢の悲しそうな声が頭の中でグルグル回ってる。

オレだって嫌だよ……。
念願叶って、両思いになったのに別れるなんて……。

あんなに辛そうに泣くぐらいなら、なんでお見合いなんか受けたんだよ。
棋院と後援会に言われて断れなくなったのも解るけどさ……。
バカだよ……。

親父とお袋にも塔矢の家を出ようって言われた。
これからも、塔矢には後援会からジャンジャンお見合い話が来るだろうから、俺達家族は家を出た方か良いと、俺達がいたら上手くいくお見合いも上手くいかないだろう……って。

オレと塔矢が結婚するってのは考えてないんだよな…。
いや、付き合いを報告した時は考えてたと思う。
でも、今回のお見合い騒動で家の違いを感じて、諦めたみたいだ。





「ヒカルの番だよ」
「えっ?」

あかりに声で、オレの思考は現実に戻された。
あかりに指導碁を頼まれて、碁会所で打っていたんだった。





「ねぇ…ヒカル……」
「うん?」

オレは次の一手をどこに打つか考えながら、軽く返事をした。

「塔矢さんのこと諦めて私と付き合わない?」
「えっ?」

碁石を持つ手が止まる。

「何言い出すんだよ…急に…」
「急にじゃないよ…。塔矢さんお見合いするんでしょ?」
「なんで?あかりが知ってるんだよ…」

どこから漏れた?
まだ世間には知られてない筈だぞ。

「お母さんとおばさんが、電話で話してるの聞いちゃった」

お袋…いつもいつも…あかりのとこに情報漏洩するの止めてくれよ。
無意識なんだろうけど……あかりのおばさんと仲良いからな~。

「お見合いじゃなくて食事会な」

今回はお見合いじゃなくて、あくまで食事会だ。
けっしてお見合いじゃない。

「塔矢さんは孤高の人ぽいし、プライド高そうだし、ヒカルには合わないと思う」
「だから、お前と付き合えって……?」
「……うん」

今、オレ、あかりのことを凄い冷めた目で見てると思う。

冗談しゃない!
塔矢のこと、よく知らないお前に言われたくない。
確かにプライドは高いけど、可愛いところもあるんだぞ。
お前は知らないけどな、塔矢はオレは恋人になったんだ。

「ごめん……無理だ…」

塔矢が好きなのに、あかりと付き合うなんて無理だ。

「もし塔矢さんが結婚したらどうするの?」
「そしたら、一生独身かな」
「ヒカル…」

あかりが辛そうな顔でオレを見てる。
悪いとは思うけど、自分の気持ちに嘘はつけない。

「だから、もう2度とこんなことは言うなよ」





やっぱり、オレは塔矢が好きだ!!
諦めるなんて出来るかよ!
棋院や後援会を敵に回しても諦められるかよ!
始めてあった時から好きだったんだからな!

オレは覚悟を決めた。






●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






家でいうのが恥ずかしくて、最寄り駅で塔矢が出てくるのを待った……。





「お帰り。スポンサーとの食事会楽しかったか?」
「君も藤崎さんと楽しそうだったね」
「見てたのか」
「たまたま見かけたんだ」

楽しそうって……頭の中はお前の事で一杯で空返事だったんだけどな、

「……………」
「……………」

あ~~~また余計なことを言ってしまったぁぁぁ。
場の空気がぁぁぁ……。
……気を取り直して……。





「塔矢……じゃなくて……アキラ、オレと結婚してください!!」

進藤ヒカル一世一代のプロポーズ!!

「………えっ?」

おい……ここで、そんな間抜けな顔をするなよ…。

「だ·か·ら!結婚してくれって言ってんのっ!」

「本気?」
「ああ…」

こんなこと、冗談で言えるかっ!

「決めたんだー棋院や後援会を敵に回しても、お前と結婚するって!」

「もうダメかと思ってた。謝ろうとしても避けられるし…」

そう言って、泣き出す塔矢。

あ~~それは…恋人になった途端にお見合いを受けたお前に腹が立って、ちょっとひねくれてました。
覚悟も出来なくて、諦めるしなないって思ってたしな。

「アキラ…返事は?」

ここで、振られたらたちなおれないけど…。

「はい」

ヤッターーーッッッ!!!


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