「進藤…またそのセーター着たのか?」
「ああ、オレの1番のお気に入りだもん」
オレが今着てるセーターは塔矢からの逆誕生日プレゼント。
しかも手編み。
これを貰った時のオレの気持ち解る?
嬉し過ぎて昇天しそうだったよ。
で、嬉しさのあまり、ほぼ毎日着てます。
洗濯は、もちろん自分で優しく手洗い。
縮めてなるものか!!
でも、塔矢はオレがセーターを着てても、あんまり嬉しそうじゃないんだよな……。
なんで?
「えっ?オレがこれ着てたら何か不味い?」
「そうじゃないけど……上手く出来なかったから恥ずかしい……」
えっ?そんな理由。
塔矢は上手く出来てないって言ってるけど、オレには十分キレイに出来てるし上手いと思う。
てか、恥ずかしそうに照れる塔矢が可愛い!!!
奈瀬からの情報によると、一生懸命編んだらしい。
初編み物、初セーターらしい。
凄い!それだけで嬉しい。
先生や塔矢門下の人達に勝った。
こっそり教えてくれた。
これは一生大事にしないとな。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
オレの誕生日のデートは、塔矢の可愛い姿に昇天しかけて考えてたデートプランが実行出来ず、碁会所デートになってしまった。
不覚っっ!!
反省を生かして塔矢の誕生日には、今度こそデートプランを実行するぞーっっ!!!
……って、気合い入れてたら、塔矢がイベントに出席の為地方に行ってしまった。
そんなバカな……っっ!!
なんで、誕生日に地方の仕事なんだよっ!
棋院スタッフのバカヤローッッッ!!!
「進藤、これ……」
落ち込み捲ってたオレに、塔矢が何かくれた。
「クリスマスに渡そうかなと思ってたんだけど、恥ずかしくて、渡したくなくなるかもしれないから…」
えっ、今日はお前の誕生日だろ?
もしかして、逆プレゼントってやつか?
で、中にはあのセーターが入ってた訳ですよ。
思えばオレの誕生日デートから、いや、もしかしたらオレの骨折から、塔矢の態度が変わってきたとような感じがする。
優しくなったかというか……。
碁会所で打った後、飯に誘っても断らなくなってたし……。
まあ、オレの面倒見ないといけないってのもあったかもしらないけど、当たりか柔らかくなったというか……なんというか……。
あと、オレが女流の女の子と話してると嫌な顔をするようになったし、あかりの名前が出たら不機嫌になる。
もしかして、まだチャンスがある?
……と、思い始めたオレ。
よしっ!クリスマス·イブに、もう1度チャレンジしてみるか。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
クリスマス·イブ当日。
いつもラーメンやハンバーガーばかりだったから、クリスマスバイキングにしてみた。
オレ、こういうの疎いから、かなり悩んだよ。
塔矢もこういうのに興味がない感じだから助かってるけど。
オレの方が食べ過ぎて、塔矢に呆れられたけど、塔矢もそれなりに楽しんでくれたみたいで良かった。
街中はクリスマスイルミネーション。
ここで、もう1度、当たって砕けろだ!
いくぞ!オレ!
「と、塔矢っ!」
「な、何?」
「好きだっ!」
「……僕も好きだよ……」
えっ?ホント?
そりゃ、もしかしたら…とは思ったけど、実際にOK貰ったら信じられないかも。
「えっ?マジ?」
「あんな振り方したら信じて貰えないよね……」
「そ、そんなことない!嬉しい!!」
オレは、塔矢を思い切り抱き締めた。
「進藤………」
オレと塔矢は、始めてお互いの気持ちが重なったキスをした……。
そして、お互い気持ちを知ったオレは塔矢を念の為に押さえていたホテルに誘った。
もちろんそういう意味を込めて。
真面目な塔矢が乗ってくれたのは、ちょっとビックリしたけど嬉しかった。
夢が叶って塔矢と両想いになって、一気に一夜を共にしたオレ達。
恥ずかしいやら……嬉しいやら……照れなか朝を向かえて、チェックアウトギリギリまでイチャイチャしようとしてたんだけど……。
『アキラさん、お、お父さんが…っ!』
「えっ?」
塔矢の携帯に日本に帰ってきた先生が、倒れたと連絡が入った。
それまでの甘い雰囲気なんて吹っ飛んで、狼狽えるアキラを励ましながら病院に向かった。
(佐為!先生と打ちたいからって連れていくなよ…頼むから!!)
病院に向かう間、オレはずっと塔矢を励ましながら、佐為に先生の事を願っていた。