女王様を手に入れろ! 12
(アキラサイド)

進藤が骨折してから3ヶ月。
進藤と一緒に行動することが増えて、ファーストフード店にも何度も連れていかれて……あとラーメン屋も。
おば様がスパルタで料理を教えた意味が解った。
これじゃあ、怖くて1人暮らしさせられないよ。
まあ、僕もだけど……。
あと、洋服買いに行ったり、色々……振り回されたけど結構楽しかったな。

そんな僕の介助も終わろうとしていた頃。





「もうすぐ進藤の誕生日だな」

今年も盛大に祝うか!!

……なんて、言う和谷君の声が聞こえてきた。

「オレの誕生日を理由に、和谷が騒ぎたいだけだろ」
「う……そんなことはないぞ」
「どーだか……」

和谷君は誤魔化すように笑う。

「そういえば去年、この前お見舞いに来てた藤崎さんだっけ?その子にクリスマスプレゼントにセーター貰ってただろ?」

(…………っ!)

和谷君の言葉に、進藤の所へ行こうとしていた足が止まる。

「げっ!見られてたの?」
「たまたまな……」

「毎年、誕生日とクリスマスにプレゼントくれるんだけど、直接渡したいからって棋院の近くまで来てたりするんだよな。塔矢に見られたら不味いってのに……」

困ったような顔をしている進藤。

「……その子がそこまでするってことは、お前のこのと好きだってことじゃないのかよ?」

「…………っっっ!!」

……藤崎さんの名前を聞くとモヤッとする。
僕だって進藤のこと……。

「だとしてもオレは塔矢に一筋!!」

(進藤………)

モヤッとしていた気持ちが、あっという間に晴れていく。
君はあんな振り方した僕を好きでいてくれる。
なんだか嬉しい……。
僕だって、守ってくれたお礼にセーターぐらい……。
今から頑張ればクリスマスに間に合う………。
……多分……。

僕は、セーターを編むための道具や本を買いに走ったものの、どうすれば良いのか悩んでいた所に、奈瀬さんに出会し色々教えて貰った。

奈瀬さんも毛糸を買っていたけど、いったい誰に編むんだろう。






●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






「そういえば、20日はヒカルさんの誕生日よね?」
「そうですけど…」
「どうせなら、盛大にお祝いしましょう!!」

お母さん……また何を企んで……。

「アキラさんたら中学に上がった頃から、誕生日パーティーやりましょって言っても乗ってくれなくて……寂しかったの……」

僕が乗らなかった寂しさを、進藤で埋めるのはやめてください……。
進藤が喜んでるから良いけど……なんだか申し訳ない……。

そんな訳で、お母さんの希望通り進藤の誕生日パーティーを、和谷君達も招待して盛大にになることになった。

「ケーキ焼くからアキラさんも手伝いなさい」

とても張り切ってるんですけど、僕にケーキなんて無理に決まってるでしょ!!

なんだか、物凄いパーティーになりそう……。





「進藤、誕生日プレゼント何がいい?」

セーターはクリスマスまでかかるだろうから、誕生日プレゼント別にを考えたんだけど、思い浮かばなかったから、本人に直接聞くことにした。

「祝ってくれるの?」
「うん……今までのお礼に…」
「じゃあ、デート!」

……そ、即答……。
まあ、誕生日だし良いか。

「良いよ………」
「ヤッターッ!!」

嬉しそうに飛び上がる進藤……。
そんなことしたら……。

「いてっ!」

「せっかく治りかけてるのにそんなことして、何を考えてるんだ!君は!」

「う、嬉しくて……つい……イテッ!」

全く……君ってヤツは……。





「これが……こうなって……あ~~も~~」

編み物って難しい……。
碁を打ってた方が数倍気楽だよ……。
でも頑張ろう!!
藤崎さんに負けてたまるか!






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「塔矢、どこ行きたい?」
「君の誕生日なんだから君の行きたい所でいいよ」
「じゃあ、碁会所行く?」
「それじゃ、いつもと変わらないじゃないか」

ちょっと、呆れてしまう僕。

「そうなんだけどさ…いざ塔矢とデートだと思うと、それだけで嬉しくてさ……」

ちょっと照れた感じで笑う進藤が可愛い。
君にとっては、念願のデートだもね。

……というか…デートとか言うな!恥ずかしい…。
いや…実際デートなんだけど、改めて意識すると恥ずかしい。

「今日の塔矢見てるだけで幸せだし」
「………////」

そう……。デートと聞いて張り切った母の影響もあって、今日はスカートをはいてみたり…普段ならしない格好をしてみたり。

ヒカルさん、おめでとう…そして、ありがとう……って泣いてたな……。

「じゃあ、オレが世話になってる碁会所行くか?お前の所だと、北島さん達に冷やかされそうだし…」

あっ、確かに……。
それは面倒なことになりそうだから嫌だな……。

夕方に始まるパーティーまでには帰らないといけないから、あまり遠くにはいけないし、ギブスと杖が取れたとはいえ進藤の足もまだ油断出来ないから、仕方ないかとも思うけど……本当にいつもと変わらないな……。






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「見事に影も形もないね……」
「本気でずっと塔矢の家に住む気だな……」

碁会所で進藤がお世話になったというマスターや河合さんに会って、プロ試験の時、他面打ちで持碁の特訓した話や、因島へ付き合わされた話とか色々聞いて、僕の知らない進藤を知ることが出来て嬉しかった。
もちろん指導碁も打った。
進藤は河合さん達にからかわれていたけど。
進藤って、誰からも愛されるキャラだよね。
ちょっと羨ましいかも?
奈瀬さんの言ってた意味が解った気がする。


その後、僕は進藤が住んでた所が見たくなって、進藤の家があった場所に来ている。
そういえば、進藤は家に来たことあるけど、僕は進藤の家に行ったことなかったな。
僕が進藤の家に行ってたら、お互いの両親の再会が早まってなのかな。

それにしても……進藤の家を取り壊して、うちに一緒に住むって僕達に相談なく勝手に決めてしまうのは…どうなんだろう。
外見はあんまり変わってないけど、間取りはかなり変わってしまった。
凄い行動力だよ……お母さん。



「ヒカル……」

僕と進藤が更地になった跡地を眺めていたら、後ろから声がかかった。

「あかり……」

藤崎さん?
あっ、ここは進藤が住んでた所だから、幼馴染みの藤崎さんがいても不思議じゃないか。

「どうしたのこんな所で?」
「塔矢とデート中」
「えっ?」

デート聞いて驚く藤崎さんの顔を見て、ふと負けたくないと思った。

進藤は僕のものだから!

藤崎さん…君には負けない!!

そう思った僕は進藤の唇を奪っていた。

「…………っっっ!!!」

僕も進藤が好きだ!!


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