女王様を手に入れろ! 09
(アキラサイド)

「………………」

若手で合宿して、お互いの交流と棋力アップに努めよう!

……なんていうふざけた号令で、突然開催されることになった囲碁合宿。
交流を深める為にという趣旨のもと、食事作りも参加者の中から選ぶという話なんだけど……

碁を打つ時間が減る!!

という理由から全員拒否した為に、くじ引きになった。

ようは、皆はやりたくないんだな。

そして、料理係の当たりくじ(?)が僕の手の中にある訳なんだけど……。

「…………っっっ!!!」

何故、僕の所に来た。
僕は料理が苦手なんだそ!
よりによって、何で僕。
碁の神様は、この合宿中、僕に碁を打たせる気がないのか?
ふざけるな~~~~っっっ!!!



そんな僕の気持ちを知らない皆は……

「塔矢(さん)なら心配いらないな(わね)」

……なんて、言ってくれている、



「塔矢、大丈夫か?」

進藤が声をかかけて来てくれた。

「……大丈夫だと思うか…」

「だよな……」

それに、僕はスーパーにも、あまり行ったことがない。

「仕方ないな…料理はオレがやってやるから、買い出しだけ頼むわ」
「進藤……」

僕にスーパーに行けと言うのか……君は!

「あ~~買うものはメールするから。あんまり高いもんは買うなよ。皆の腹を満たせれば良いんだから」

うん、それで良し!

「オレだって、大人数分作ったことないいから不安なんだけど……。お前も手伝えよ」

「解ってる」

料理係が調理場にいないで、碁を打つわけにもいかないし。
そんなことしたらバレるしね。

あっ、それと……

「夜、僕と打て!」
「はい?」

幸い僕も進藤も1人部屋だ。
2人で打っててもバレないだろう。
ちなみに、部屋割りも、くじ引きで決まった。

「折角の囲碁合宿なのに、夕食作りに時間割かれるなんて御免だ」
「お前な~~~」

作るのはオレだぞ……。

……と言いながら、あっさり了承してくれる。
進藤ってけっこう…いや、かなり優しい。
それも、僕が好きだから?

なんだか…進藤がカッコ良く見える……気がする。





進藤のお陰で僕の料理下手はばれず、味も好評で、夜進藤と打てて有意義な合宿生活をいたんだけど、合宿もあと残り2日になった日………。





「進藤、いつもこの時間どっかに行ってるよな。折角の合宿なんだから皆と打とうぜ」

………進藤が和谷君に引きずられて行ってしまった。

「……………」

どどどどどうしよう……。
まだ何も出来てない……。

……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……

(こうなったら、店屋物で誤魔化そう)

そう思って、合宿の経費で落とすのは不味い気がして、自分の財布の中を確認すると……。

(よし、何とか足りる)

……良かった…。

皆には、ガスの調子が悪くて……と誤魔化した。





「お前、出前取るお金なんか良く持ってきてたな」
「うん、なんとかね…」

自分でも奇跡だと思う。
今月のお小遣いが無くなったけど……。

「明日で最後だし、和谷に捕まらないように気を付ける……」
「そうしてくれ……」

明日も同じことが起きたら、もう誤魔化せないから。







●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇






「塔矢さん、進藤さんとどういう関係?」
「どういう…って……ライバルで…」

今は同居人?

夜、進藤の所に打ちに行こうとしたら……女流の低段者の方逹に、何故か呼び止められた。

「あんたみたいな碁しか取り柄のない女が、進藤さんといつも一緒にいるなんて許せない」

「塔矢さんだけ夜毎日打ってるんでしょ!私達が知らないとでも思ってるの!」

「まさか……それ以上の関係じゃないわよね?」

……どうして、僕は女流の皆さんに攻められてるんだ?
僕が進藤と打って何が悪い?
…というか…それ以上の関係って何だ?

「進藤さんのこと、なんとも思ってないくせに独占するなんて卑怯よ」

……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……

えっ?

女流の1人の手が僕の肩を押したんだけど………あれ?後ろかない?



「塔矢っっっ!!!」


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