「………………」
若手で合宿して、お互いの交流と棋力アップに努めよう!
……なんていうふざけた号令で、突然開催されることになった囲碁合宿。
交流を深める為にという趣旨のもと、食事作りも参加者の中から選ぶという話なんだけど……
碁を打つ時間が減る!!
という理由から全員拒否した為に、くじ引きになった。
ようは、皆はやりたくないんだな。
そして、料理係の当たりくじ(?)が僕の手の中にある訳なんだけど……。
「…………っっっ!!!」
何故、僕の所に来た。
僕は料理が苦手なんだそ!
よりによって、何で僕。
碁の神様は、この合宿中、僕に碁を打たせる気がないのか?
ふざけるな~~~~っっっ!!!
そんな僕の気持ちを知らない皆は……
「塔矢(さん)なら心配いらないな(わね)」
……なんて、言ってくれている、
「塔矢、大丈夫か?」
進藤が声をかかけて来てくれた。
「……大丈夫だと思うか…」
「だよな……」
それに、僕はスーパーにも、あまり行ったことがない。
「仕方ないな…料理はオレがやってやるから、買い出しだけ頼むわ」
「進藤……」
僕にスーパーに行けと言うのか……君は!
「あ~~買うものはメールするから。あんまり高いもんは買うなよ。皆の腹を満たせれば良いんだから」
うん、それで良し!
「オレだって、大人数分作ったことないいから不安なんだけど……。お前も手伝えよ」
「解ってる」
料理係が調理場にいないで、碁を打つわけにもいかないし。
そんなことしたらバレるしね。
あっ、それと……
「夜、僕と打て!」
「はい?」
幸い僕も進藤も1人部屋だ。
2人で打っててもバレないだろう。
ちなみに、部屋割りも、くじ引きで決まった。
「折角の囲碁合宿なのに、夕食作りに時間割かれるなんて御免だ」
「お前な~~~」
作るのはオレだぞ……。
……と言いながら、あっさり了承してくれる。
進藤ってけっこう…いや、かなり優しい。
それも、僕が好きだから?
なんだか…進藤がカッコ良く見える……気がする。
進藤のお陰で僕の料理下手はばれず、味も好評で、夜進藤と打てて有意義な合宿生活をいたんだけど、合宿もあと残り2日になった日………。
「進藤、いつもこの時間どっかに行ってるよな。折角の合宿なんだから皆と打とうぜ」
………進藤が和谷君に引きずられて行ってしまった。
「……………」
どどどどどうしよう……。
まだ何も出来てない……。
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
(こうなったら、店屋物で誤魔化そう)
そう思って、合宿の経費で落とすのは不味い気がして、自分の財布の中を確認すると……。
(よし、何とか足りる)
……良かった…。
皆には、ガスの調子が悪くて……と誤魔化した。
「お前、出前取るお金なんか良く持ってきてたな」
「うん、なんとかね…」
自分でも奇跡だと思う。
今月のお小遣いが無くなったけど……。
「明日で最後だし、和谷に捕まらないように気を付ける……」
「そうしてくれ……」
明日も同じことが起きたら、もう誤魔化せないから。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「塔矢さん、進藤さんとどういう関係?」
「どういう…って……ライバルで…」
今は同居人?
夜、進藤の所に打ちに行こうとしたら……女流の低段者の方逹に、何故か呼び止められた。
「あんたみたいな碁しか取り柄のない女が、進藤さんといつも一緒にいるなんて許せない」
「塔矢さんだけ夜毎日打ってるんでしょ!私達が知らないとでも思ってるの!」
「まさか……それ以上の関係じゃないわよね?」
……どうして、僕は女流の皆さんに攻められてるんだ?
僕が進藤と打って何が悪い?
…というか…それ以上の関係って何だ?
「進藤さんのこと、なんとも思ってないくせに独占するなんて卑怯よ」
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
えっ?
女流の1人の手が僕の肩を押したんだけど………あれ?後ろかない?
「塔矢っっっ!!!」