「アキラちゃん、少しいい?」
棋譜を並べて1人で検討していたら、進藤のお母さんが部屋に来た。
何の用だろう?
「碁の勉強中だった?ごめんなさいね」
「いえ、どうぞ」
「あの子も、こうやって勉強してるわねぇ。外で遊ぶのが好きだった子が今はすっかりインドア派になっちゃって…」
外で遊ぶ進藤…直ぐ想像できるな。
「どうせ直ぐに飽きると思っていたら…あっという間にプロになって…賞金も結構な額が振り込まれてて…ビックリだわ…」
「……………」
進藤は最近マシになったけど、ご両親も囲碁界のこと全くしらないんだな。
進藤が取ったタイトルは、まだ小さなものばかり。
それて驚いてたら、今後メジャー棋戦のタイトル取ったら大変だろうな…。
「あっ、そうそう…これからお世話になるお詫びに、こんなもの持ってきたんだけど見ない?」
アルバム?
指導のアルバムでも見せてくれるのかと思って開いたら……可愛い女の子の写真だった。
僕の知らない人の写真を見せに来たのか?……この人は?
「ヒカルさんの親戚か誰かですか」
「それ、ヒカルなの」
「えっ?」
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「しししし進藤???」
あっ、しまったっ!
驚き過ぎて、いつもの呼び方になってしまった…。
「あっ…」
慌てて口を押される僕。
「良いのよ…ヒカルのこと進藤って読んでるのは知ってるから」
……良かった……。
「かわいいでしょう」
「あ…はい……」
……確かに可愛い……。
ツートンの頭も金髪一色になってて……カツラかこれ?
「私、女の子が欲しくて…生まれてくる子は女の子だって信じてて…。あこちゃんと2人で女の子用の服ばかり買い漁ってたわね…」
安易にその光景が目に浮かんでしまう……。
「だから、ヒカルが生まれた時はショックで……。正直あこちゃんにアキラちゃんが生まれたって聞いて羨ましいかったわ」
「はあ………」
「でも、全然女の子らしくしてくれないって泣いてたわ」
「………………」
確か…お母さんが写真の進藤が着てる服を僕に着せようとしてたような…?
「せっかく買ったし勿体ないから、ヒカルが着れなくなるまで着せてたわね。アキラちゃん用に買って服も貰ってヒカルに着せたわ」
…と、笑うおば様。
確かに……この服というかドレス…見覚えあるような……?
フリフリ?のレースが沢山付いてて、幼稚園の頃に、着たくない!と突っぱねたような気がする。
まさか、進藤に着せられていたなんて。
ごめん…進藤……。
なんだか、進藤に謝りたくなった。
でも、本当に可愛い!
「もし良かったら、好きなの1枚あげるわ」
「ヒカルがバカなことをしたら、この写真で脅すといいわ。あの子、これを知られるのが極端に怖がってるから効果絶大よ」
女装してたたんて知られたくない。
でも、これは使えるな。
可愛いし、一枚貰っておこう。
そして、早速この写真を使ってみたら、おば様の言う通り効果絶大だった。
ありがとうございます。