「進藤!起きろ!今日は手合いだろ!」
「えっ?!塔矢?」
朝、塔矢の怒鳴り声で目が覚めた。
……そうだ…オレは昨日から塔矢の家に居候中だった。
オレは慌てて飛び起きた。
「起こしてくれたありがとな」
「ライバルの君と不戦敗が嫌なだけだ」
「あっ、そう……」
そうでした…。
コイツは碁が1番。
今日の対戦相手はオレ。
オレのことを心配してくれた訳じゃない。
……優しい奴だと思ったオレがバカでした。
「おはようございます」
うわ~~塔矢先生がいるよ……。
塔矢も目の前で御飯食べてるし……。
オレ、ホントに塔矢と1つ屋根の下に住んでるんだ。
改めて実感……。
「アキラさん、ヒカルさんに棋院まで道教えてあげるのよ」
「進藤は北斗杯の合宿で何度か来てるので必要ないですよ」
「何言ってるの初めての夫婦同伴出勤じゃない」
ピッキッッッ!!
……今、間違いなく空気が凍った!!
……明子さん何を言い出すんですか?
塔矢先生と親父が盛大に噎せてる……。
「冗談は止めてくださいっっっ!!!」
ふざけるなっっっ!! ……って、ならなかったのは親の前だからか?
それとも、あれってオレ限定?
「行ってきますっっっ!!」
そう言い残して、塔矢は出掛けていった。
凄い音したけど、玄関の引戸大丈夫かな?
「あこちゃん…初日から煽り過ぎ…。あれじゃ益々、アキラちゃん意固地になっちゃうわ。それでなくてもヒカルには勿体ない子なのに……」
「何言ってるの!みっちゃん!アキラさんにはヒカルさんがお似合いなの!ヒカルさんしか、アキラさんを手懐けられる男の人なんていないわ!」
手懐ける……って明子さん……。
寧ろオレが手懐けられそうなんですけど……。
あっ、お袋と明子さん……もしかしてオレ達をくっつけようとしてる?
嬉しいけど、もう少し違う協力をお願いしたいです。
……と、とにかくオレも出掛けよう。
塔矢の家を出た少し行った所で、怖い顔で立っていた。
オレを待っててくれた…なんてことはないよな。
ハハハハハ……。
「緒方さんや囲碁関係者には、僕の家に居候してることは内緒にしてもらう」
ほら、来た。
もう変な期待は持たないぞ。
「もし僕と一緒に暮らしてることが知れたら、これを棋院にばらまくからな」
塔矢が1枚の写真を出してきた!!
何?写真??
その瞬間。
「…………っっっ!!」
それは……オオオオ…オレの黒歴史!
何って………じょじょじょ…女装写真……。
佐為にも見せたことないのに……。
よりによって、1番知られたくなかった塔矢に知られてしまった……。
「そ、そ、そ、そ、それを…どこで…?」
「君のお母様から貰った」
お、お、お、お、お袋! なんて物を塔矢に渡してるんだよ!
塔矢に弱み握られたら、これからが大変だよ……。
恨むぜ……お袋。
「もう写真は保存してメール設定はしてあるからな」
「…………」
そうですか……準備のよろしいことで………。
「全力で秘密にさせてイタダキマス………」
「よろしい!」
威風堂々な塔矢とは逆に、意気消沈で手合いに向かうオレ。
もちろん棋院に入るのも別々。
そして、今日の対局は中押しで負けた……。
くそぉぉぉ~~~~。