女王様を手に入れろ! 02
(アキラサイド)

「進藤君のご家族と同居することになったから」
「は???」

母さんの爆弾発言が落とされたのは、久しぶりの休日で棋譜整理でもしようかと思っていた時だった。

「すいませんが、もう一度言ってくれませんか?」

お母さんから発せられた言葉が信じられなくて、もう1度聞き返す。

「だから、進藤君のご家族と同居することになったのよ。耳が遠くなったの?アキラさん」

耳は正常です!
いきなり同居なんて言われたら、誰でも聞き直すと思いますよ。
しかも家族ごと同居って。

………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……うん?
ちょっと待て?
……進藤?
…………
………
……
……って、まさか…あの進藤?
まさか…ね…?

「あの……もしかして進藤って進藤ヒカルのことではないですよね?」
「ええ、あの進藤君よ。まさか正夫君の息子さんがヒカルさんだったなんて」

違ってほしかった……。
……あ~頭がクラクラする…。

「進藤君の家にトラックが突っ込んで全壊したから、建て替えが終わるまで同居してもらうことにしたのよ。部屋も余ってるしね」

ええ、進藤の家に車が突っ込んだことは知ってますよ。
棋院でも大騒ぎですから…。
緒方さんなんて「進藤は面白い」て笑ってたし。
でも、どうして家に同居することになるんだ?
それをお母さんに尋ねたら……。

「私と行洋さんが結婚できたのは、みっちゃんと正夫君のお陰なのよ。やっと恩返しが出来るわ♪」

何でも、お父さんは進藤のお父さんと、お母さんは進藤のお母さんと幼馴染みで親友らしい、
お父さんとお母さんが結婚出来たのも、進藤のご両親のお陰とか。

「アキラさんも感謝しないとね」

つまり、あれか、進藤のご両親が居なかったら、僕はこの世に居ないから感謝しろということなのか?

お互いの結婚式にも出席。
僕達が生まれた時には、出産祝いを送ったとか。
そこまで仲が良かったのに、進藤のお父さんがタイトルホルダーとして有名になっていくお父さんに気を遣って会わなくなったそうだ。
お父さんもお母さんも残念だったらしい。

「でも、一緒に暮らせるなんて……。これは神様からのプレゼントだわ♪」

嬉しそうですね……お母さん……。
一方、僕の心は急降下だよ………。

僕があの進藤と同居…。
ふざけるなっっ!!
冗談じゃない!!
棋力以外、ガサツでどうしようもない進藤と同居……。
……想像するだけで目眩が……。
お父さんに反対を訴えようとしたけど、進藤の両親との同居を楽しみにしているのが伝わってきて……断念。
僕の平和な日常が崩れて行くに違いない。
3人分の部屋を家具を新調までして、それはそれは楽しそうに準備するお母さん。

「緒方さん達に知れたら、いい笑いの種だよ」

は~~~~あ……。
憂鬱だ………。


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