「暑いですね~」
1000年前の京都の夏は、こんなに暑くなかったと思いますし、ヒカルと一緒にいる時は暑さなんて感じませんでしたから…。
「まさか、こんなに暑いとは…」
こう暑い日は冷房の効いた部屋で、詰碁を作ったり棋譜並べをするに限りますよね~、
あっ、虎次郎は明子の所なんですよ。
私だけでも虎次郎の世話は出来るんですけど、明子孝行もしないといけませんし、ヒカルとアキラが同じ日に休みと聞いて気を利かせてくれたので、涙を飲んで明子に任せることにしたんです。
そのヒカルは休みの昨日は色々張り切っちゃって、早々にアキラを連れて部屋に引っ込んでしまいました。
タイトル保持者ですし、大人として落ち着いてほしいとは思うのですが…まだまだですね。
アキラと私はバテ気味なのに、ヒカルは無駄に元気ですし…。
「久し振りに休みが重なって得れしかったからしょうがないだろっ!」
「しょうがないで済むか!朝から、また盛って…」
………………。
ヒカルとアキラの部屋から言い争う声が…。
また不毛な喧嘩に発展しそうな予感?
(昨日はお盛んでしたからねぇ…)
2人の夫婦生活は、ヒカルが張り切ってアキラが流される感じですが、実のところアキラもノリノリだったりすることを、私は知っているんですよ。
「アキラが可愛いのが悪い!」
「……//////」
あ~ヒカルがドヤ顔で言い放って、アキラが照れて真っ赤になってるんでしょう。
見なくても解ります。
そろそろお決まりの、あれが出ますね。
「~~ふざけるな~~っっっ!!」
ほら、出た。
「新幹線の時間に間に合わなくなるぞ!早く行けっ!」
そういえば、明日のイベント開催地に前日入りすると言ってましたっけ?
出発ギリギリまでアキラにベッタリだなんて…。
まあ、これで暫くはアキラ不足になることはないでしょうから安心なんですけど…。
(機嫌の悪いアキラを私に押し付けて、出掛けるのは止めてくれません?)
私なら、アキラの機嫌を直してくれると疑ってないんですよねぇ。
私を信頼してくれているのは、師匠として娘として嬉しいですけど…。
(ヒカル、この貸しは高く付きますよ)
…って、返してもらうつもりはないんですけどね。
…今度打つ時に、ちょっとコテンパンにしようとは思ってますけど…。
さあ、もうすぐアキラも部屋から出てくるでしょうから、お茶でも入れますか。
「アキラだって、本当はヒカルに求められて嬉しいくせに。もう少し素直になったらどうです?」
「ッ!!」
ゲホ…ゲホ…。
アキラが盛大に、飲んでたお茶で噎せました。
珍しいこともあるものですね。
「そそんな訳ないだろ…」
「私と仲良くしてるヒカルに、ヤキモチ妬いて家でしたのは、どこの誰でしたっけ?」
「うっ!」
ヒカルが佐為だと解った私とばかり居て、アキラを構わなくなって嫉妬した時のことは、アキラにとって、思い出したくない出来事みたいなんですよ。
なんだか…よっぽど恥ずかしかったみたいで。
私、娘ですもんね。
「アキラがヒカルを構っていてくれたら、私は平穏ですし」
「僕の平穏は?」
「ヒカルがアキラ不足にならないことが、アキラの平穏に繋がりますし、そもそもある程度ヒカルに構われないとアキラもダメでしょう」
「………」
碁が絡まないと、あの行動力は出ないのですから…。
もう少し愛情面でも積極的になれば良いのに…困ったものです。
「彩、打つよ」
突然棋士モードで、宣言するアキラ。
私が断るとは思ってないですね。
勿論、断るなんてしませんけど。
アキラが私に突然打つと言い出す時は、大体照れ隠しか気まずくなった時なんです。
それで、機嫌が直るなら幾らでも相手しますよ。
(それにしても、世話の焼ける夫婦ですね…全く)
2人の為に色々奔走してるんですから、お小遣いアップを要求してもバチは当たらない気がします…。