進藤家の秘密 19
(アキラサイド)

「さすがは私!良い五月人形を選びましたね」

彩は飾り終えた五月人形を眺めてご満悦。
あっ、写真撮って誰かにメールしてる。
多分、送り先はお母さんかな。

「ほらほらモタモタしないで、さっさと鯉のぼり上げてくださいよ」
「解ってるよっ」

五月人形に満足した彩は、鯉のぼりを立てているヒカルに発破をかけ始めた。
ちなみに、これも虎次郎の為と彩とお母さんが張り切って選んだんだけど…。

(大き過ぎるよ…)

凄く目立つだろうな…。
ちょっと恥ずかしい…。

「まさか鯉のぼりを上げるのが当日になるなんて」
「しょうがないだろ。忙しかったんだからさ」
「それは解ってます。早くしないと今日が終わってしまいますよ」
「だから解かってるって」
「あ、それから、どこかのアニメやコントみたいにポールに少し押しただけで倒れてコントみたいな大騒ぎにならないように、しっかり埋めてくださいね」
「なんだよ…それ」
「テレビで見たんです」

鯉のぼりを上げるのが当日になるなんて、僕もヒカルも予想外だった。
最近、僕もヒカルもスポンサーからの食事のお誘いが多くて上げる時間がなかったんだよね。
ゆっくりヒカルと打つ時間もなくて、ちょっとストレス溜まり気味なんだよ。

それにしても…彩が佐為だと解ってから、彩がヒカルに色々言ってくれるようになったから、僕の苦労は減って楽になったような気がするけど、やっぱり寂しいかな…と持ってることは内緒だ。

(よし、こんな感じかな…)

そんなことを考えながら、デコレーションしていた彩のバースデーケーキが出来た。
うん、我ながら今年も良い出来だ。
彩は1000年前の人間だから和菓子好きだと思いきや、どちらかというと洋菓子好きなんだよ。
毎年、僕が手作りしてる。
今年は、柏餅とちまきもある。

「今年も美味しそうなケーキですね。ロウソクを立てるのが勿体なくなってきました」
「ヒカルを見てなくて良いの」
「ええ、言いたいことは言いましたから」

外を見ると、ヒカルが必死に鯉のぼりを上げていた。
必死にだけど楽しそうにも見える。

「ヒカルがこの時期に明るくなったのは、彩が生まれて来てくれたお陰だよ」
「やっぱり私が消えたことが原因でそょうか?」
「そうだね。その時は何も解らなかったから、もう打たないって言われて驚いたっけ」

それから僕はヒカルから聞いた立ち直るまでの話を、彩に話した。
勝手に話したことが知られたら怒られるかもしれないけど。

「いなくなってから私の凄さに気付くなんてヒカルたら」

そう言って、彩は少し悲しそうに笑った。

「ヒカルにあんな顔させないためにも、彩には元気でもらわないと」
「その言葉、アキラにお返しします」

そうだね。
僕も彩も虎次郎も元気でいないとね。
ヒカルにも元気でいてもらわないと、何かあったら僕も辛いから。

「さあ、緒方から貰った詰碁を解きますか」

何年か前の彩の誕生日に緒方さんが自作の詰碁を送って来て、それから毎年詰碁を解くことが誕生日の習慣になってる。
ちなみに、彩の全勝。

「見てなさいよ!今年もあっという間に解いて見せますから」

元男で幽霊だった我が娘は、今日も元気です。

「彩、後で一局打とう」
「解りました」

誕生日、おめでとう!


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