「アキラの敗因はこの手でしたね」
「ああ…単純な読み違いだよ。僕としたことが」
なんだよ…2人で仲良く検討なんかしちゃってさ。
検討が終わったら打ち始めてるし。
…2人共、仲良いよな…。
くそ~~っ!
「ヒカルはまだ不貞腐れてるのですか?」
「あれは、しばらく直らないかもね」
しかもオレの話してるし。
「アキラでも機嫌が直らないなんて相当ですね。3人目を期待してるんですけど」
「……/////」
おっ、アキラが照れてる。
可愛いな…。
「やっと落ち着いてきた所だから遠慮したいな」
「ゆっくりで良いですよ」
え~~~そんな~~。
オレ、撃沈……。
「それよりも、ヒカルの機嫌が悪くなったのは君のせいだろ」
「私、何もしてませんけど」
「この間、緒方さんをからかって遊んでただろ」
「へへへ…」
佐為、笑って誤魔化すな!
佐為にからかわれた緒方さんのイライラが、オレの所に倍になって返ってくるんだよ。
その時の緒方さんがどんなのか知ってるか。
「でも、対局前の緒方の心理戦に、まんまと引っ掛かって負けてるヒカルが悪いんですよ」
「確かにそうなんだけどね…」
佐為の言う通りなんだよな…。
自分が情けなくて不機嫌なまま帰ってきたら、佐為に検討でコテンパンに打たれて益々情けなくなって…現在進行形。
「緒方の心理戦にハマって負けて不貞腐れた上に、私にコテンパンに打たれて、更に不貞腐れてるんですよ」
「それを慰める僕の身にもなってほしいよ…」
「頑張ってください♪」
「…………」
あっ、佐為のヤツ、アキラに丸投げしたな。
よしっ!これからもアキラに慰めてもらおっと。
それにしても…。
「佐為のヤツ、アキラには優しい気がするんだけど…気のせいか?」
オレには容赦なく打つくせに、アキラには指導碁に見えるんだよな。
「優しくなんかしてませんよ」
声がして視線を上げたら、佐為が目の前に立っていた。
「えっ?うわ~~~」
暗い所に突然顔を出すのは止めてくれよ。
ビックリした~~。
「ただ弟子ではないので、態度が優しくなってるのかもしれませんけど」
「………」
「ヒカルと私の間に、今さら遠慮なんていらないでしょ」
確かにそうだけどさ…。
「それに優しく手加減なんかしたことがバレたら後が怖いですし…。おこづかい減らされたりとか…」
「おっ、お前もおこづかいとか気にするんだ」
「当たり前です!おこづかい碁関係の本の資金なんですから」
おこづかいで、虎次郎に碁を教える為の物を買おうとしてるんだろうな。
「だから、いつでも全力です。私にアキラを取られたからってヤキモチ焼かないでくださいね。アキラは母親なんですから仲良くて当然でしょ」
じょ冗談いうな…誰がヤキモチなんか焼くか…。
絶対、ヤキモチじゃないからな!
「ところで、早く来ないとヒカルの分まで食べちゃいますよ、アキラの手作りハンバーグ」
えっ?今日の晩御飯、アキラの手作りハンバーグなのか?
オレの大好物じゃん!
「おいっ!佐為。オレの分食うなよ」
オレは慌てて佐為の後を追いかけて、そのまま晩御飯にありついた。
アキラの手作りハンバーグを食べて、オレの機嫌は一気に直って…。
「単純ですね…」
と、佐為から冷たい視線を向けられたけど、そんなの気にしない。
アキラの料理は最高に美味しいからな。