今日も白熱してますねぇ。
穏やかに始まるヒカルとアキラの検討も、最後にはヒートアップして喧嘩になるというのが、2人で打つようになった頃からの定石らしいですが…。
いい年して、碁が絡むと大人気ないですね…。
「ノビもツギもダメたら切ってみるのもアリですよね~。ねぇ、虎次郎」
虎次郎がニコニコと笑っているんですけど、なんて可愛いのでしょう…。
目に入れても痛くないというやつでしょうか。
「さあ、明子の所に行きますよ」
塔矢邸と家はとっても近いので、週に3回は顔を見せないと、明子は拗ねるんです。
近いので、私はヒカル達に伝言メモを残して出掛けることにしました。
2人を待ってたら、いつ出発出来るか解りませんから。
美味しいお菓子もあるでしょうから楽しみです。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「まあまあまあ…虎次郎ちゃん…良く来たわね」
塔矢邸に着くと、明子が笑顔で迎えてくれた。
「ヒカルさんとアキラさんは?」
「検討が白熱してたんで置いてきました」
「相変わらずね…」
「2人ともタイトル戦に向けて力が入ってるのかも」
「あっ、そういえば緒方さん来てますよ」
「ほんとですか?」
なんと素晴らしいタイミングなんでしょう。
明子は暫く虎次郎を離してくれないでしょうから、緒方と打つことにましょう。
「お・が・たセンセ~」
「げっ…」
なんですか?!そのあからさまに嫌そうな顔は?!
せっかく可愛く声をかけけてあげたのに。
少し腹が立ちますが、普段色々おねだりしてるから仕方がないのかもしれません…。
えっ、どんなおねだりしてるのかって?
…それは…秘密です。
「打ちましょ♪」
「今日は何が目的だ?」
「何もないですよ。ただ緒方センセと打ちたいだけです」
パチ、パチ、パチ…。
黒番の私が置き石を置いていく。
緒方に置き石なんて嫌で、本気の互いで戦いたい所ですが、後々面倒なこのになりそうなので、仕方なく置き石でそれなりに手を抜いてるんです。
ヒカルとアキラに本気で打つな!と口酸っぱく言われてますし…。
「お願いします」
「お願いします」
パチ、パチ、パチ…。
パチ、パチ、パチ…。
「どうして、そうも可愛くないんだ?」
なんてことを言うんですか!
アキラ似で、こんなに可愛い私に!
このセリフ、対局中にいつも言われるんですよね。
まあ、ほんのちょっとだけ…本当にほんのちょっとだけ本気を出して厳しい手を打ってたりするので、緒方にとっては可愛くない子なのかもしれませんけど。
あっ、最終的には疑われないように上手く負けてますよ。
悔しいですけどねっ!
いつか緒方と本気で対戦したいですね…。
緒方のと対局が終わった頃、やっとヒカルとアキラがやってきました。
遅いですよ…全く…。
「で、検討の決着着きました?」
「ああ…」
実はメモに私が思う巧手を書いておいたのですが、ヒカルの表情から察するに、私の手が巧手だったようですね…。
「まだまだですね…2人とも」
緒方に負けないように頑張ってくださいね。