「彩ちゃん…よく似合ってるわ~~」
元旦早々、着物を着せられて母の着せ替え人形になってる彩。
この光景も今年で9回目。
彩がsaiの生まれ変わりだと知って2年。
ちなみに、ヒカルは緒方さんに捕まって対局中。
(結局、1つに絞れなかったんですね…)
クリスマスが終わった途端、彩の正月用の着物を選び出したのは良いけど、着なかった僕の着物と彩が生まれてから買った着物をあわせて大量にあるからね。
「これ、彩ちゃんに似合うと思うわ~」
…って言って、ポンポン買うの止めた方が良いと思います。
ヒカルの袴や僕の分まで買ってるし…。
「どう似合います?」
気付けを終えた彩が、僕の前に経ってクルッと一回りする。
「よく似合ってるよ」
「今年は着物着なくて済んで助かったって思ってるでしょ?」
「…バレてる?」
「パレバレです。アキラ、着物嫌いじゃないですよね?」
「嫌いじゃないけどスーツの方が楽かな?あのお母さんにもバワーにも着いていけないし」
洋服や着物を選ぶ時の母のパワーは凄すぎて…正直引く。
今年は妊娠中ということで、着せ替えから免除になってホッとした。
「あれはアキラが子供の頃、着てくれなかった反動だと思いますけど」
「そうかな?」
「そうですよ。どうせ碁に夢中でお洒落に興味なかったんでしょ」
……確かにそうだけど。
対局スーツがあれば十分だし、お洒落なんかしてる時間があったら打っていたかったから、母からのショッピングの誘いも断ってたっけ。
今は、彩とヒカルが母に付き合ってくれてるから助かる。
元男性なのに女性で生まれ変わったことを受け入れて楽しんで、母に付き合えるなんて本当に凄いよ。
「アキラが子供の時に相手してあげれば、あんなパワーにはならなかったと思いますよ」
うっ!
その通りかも?
…何も言えない…。
話題を変えよう。
「ところで、彩は何をお願いするの?」
「虎次郎が無事に生まれますように…ですかね」
それは当然だね。
僕も同じお願いするよ。
「それから、ヒカルとアキラが不毛な喧嘩をしませんように」
「………」
不毛な喧嘩…。
「あ…あれはヒカルがバカなことを言い出したりするから」
…彩の顔を見ると、そう言える雰囲気ではなく…。
「努力します」
と、言うしかない圧力を感じた。
…はあ~今年も彩に振り回されそうな予感がするよ…。
「さあ、緒方とヒカルの対局はどうなってるでしょう?見に行きましょうか」
「そうだね」
彩の笑顔はここまでで、この後、ヒカルが打ってる碁を見た途端、険しい顔になって、着付けて貰ったしということで、初詣には行ったけど、ちょっとお正月には似つかわしくないピリピリムードで…。
「なんですかっ!あのトンチンカンな碁はっ!」
「だって…アキラやお前との時間を取られたから…」
「だからって、あんな情けない碁を打って…あ~もうっ!」
「勝ったんだから良いだろ」
「そういう問題じゃないですよ!」
不毛な喧嘩だ…。
彩も人のこと言えないじゃないか…。
僕も、あの碁はどうかと思うけどね。
『家族との時間を邪魔されて悔しい!!』という感情が顔と碁に滲み出てて、緒方さんが不敵に笑ってたんだ。
ヒカルをからかうのが楽しみな緒方さんの思う壺に、しっかり嵌まって情けないぞ!
家に帰ってから、ヒカルは彩にたっぷりお灸を据えられ、僕もお腹の中に居る虎次郎も参加して、囲碁三昧のお正月を過ごした。
あっ、彩は緒方さんに確り仕返し?をして、お年玉を沢山貰って帰ってきた。
彩、緒方さんで遊ぶの、いい加減に止めたら?