進藤家の秘密 10
(アキラサイド)

(は~~~~~あ~)

彩がヒカルと仲良くしてるのは当たり前のことなのに、そんな2人を見て嫉妬するなんて…。
でも…あの時の2人は今までとは違う雰囲気というか…強い絆みたいな物を感じていた。

(なにを考えてるんだ?僕は…)

あの時も今も、僕は母親としてどうかしている。
一瞬でも娘に嫉妬するなんて…。

(家に帰り辛いな…)

あんな捨て台詞吐いてきちゃったし。

どうしようかと悩んでいたら、彩がホテルに来た。
迎えに来てくれたのかと思ったら…。

「今から打って」

僕の顔を見るなりそう言って碁盤の前に座る彩。
…流石は碁打ちの娘だと感心するやら…呆れるやら…。

「良いけど…てっきり迎えに来てくれたのかと思ったのに」

これで家に帰る口実が出来たと、ホッとしたんだけど当てが外れた?

「迎えに来たんだよ。でも、その前にお母さんに、どれだけ強くなったか見てほしくなって…。互いで打っても良い?」
「良いよ」

彩がどれだけ強くなったか見てみたいしね。
彩が握って、彩が黒で僕が白。

「「お願いします」」

……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……

対局が進むに連れて、僕は信じられない気持ちになった。
これは彩じゃない…。
この棋風は…まさか……。
目の前にいるのは娘の彩なのに、この棋風は彩じゃない。
しかも、この対進行はヒカルと初めて打った碁と同じだ。

(ヒカルに教えてもらったのか?)

不思議に思いながら、あの時と同じ展開にならないように打ち進めたけど、最後はあの時と同じようになって…。

「…負けました」

僕の中押し負け。
まさか、またあの感覚を味合うなんて…。
でも、どうなってるんだ?
目の前に居るのは間違いなく彩なのに、碁は彩じゃない。

「大丈夫ですか」

心配そうに僕を見つめる彩。

「Sai?」
「はい」
「彩じゃなくて、僕が言ってるのはSai…」
「解ってますよ。塔矢が言ってるSaiはネット碁のSaiだと」
「えっ?」

彩…だんだか急に喋り方と声が落ち着いたような気がするけど…気のせい?

「塔矢もあの時に比べたら、本当に 強くなりましたね」
「あの時?」
「ヒカルと初めて打った時ですよ」

そう言って、彩はニコニコと笑った。

「今から話すことは、信じて貰えないかもしれませんが…」

Saiが話してくれた。
自分の前世が藤原佐為という碁打ちで、人生を終えた後も神の一手を極めたいあまり、幽霊となってヒカルに憑いていたことを。
信じられない話で、思わす怒鳴りそうになったけど…彩の話を当時のヒカルの行動に合わせると腑に落ちる。

「信じられない話だけど…信じるしかないよ…」

石の持ち方が初心者なのに、棋力はプロ並みかそれ以上。
凄いと思えば、素人のような碁を打つ。
それはSaiが憑いていたからなんだね。

「は~~~~あ~良かった…。ふざけるな~~っ!…って怒鳴られるかと思ってましたよ…」
「ははは…」

…怒鳴りそうになったのは黙っておこう。

「ヒカルが、いつか話すって言ったのはSaiことだったんだね。出来ればヒカルから聞きたかったかな」

本人?から聞くのも悪くはないけれど、なんとなくヒカルから聞きたかった。

「そう!ヒカルったら酷いんですよっ!」
「えっ?」
「アキラが出ていったのは、お前が佐為だって打ち明けたせいだから、お前がなんとかしろっ!って言って、ロビーまで連れてきて放置ですよ。塔矢が部屋に入れてくれなかったら、どうなっていたことか…」

なんだってっっ!
中身は1000才以上だけど、見た目は8才の彩Saiを置いて帰っただと!!

「なにを考えてるんだっっ!ヒカルもSaiが戻ってきた…って浮かれてただろつ!」

それをSaiに丸投げするなんてっっ!!

「家に帰ろうと思ってたけど、予定変更!しばらくホテルに泊まるよ」
「それは良いですね…。私に丸投げした罰を与えるべきです!」

Saiが不敵に笑う。
僕達の意見は一致した。
案外、僕とSaiは上手くやれるかもね。

「彩も一緒に泊まろう」
「えっ、良いんですか?」
「当然だろ。彩は僕の娘になんだから」
「あっ、でも学校の荷物とかどうしましょう…」
「そんなものヒカルに持って来させれば良いんだ」
「それもそうですね」

僕が帰らない上に彩まで取られたら、ヒカルはどんな顔をするだろうか。
ちょっと興味ある。

それから、ヒカルについて色々な話をした。

「Saiは僕とヒカルの縁を結ぶために、ヒカルに憑いてくれたんだよ」
「塔矢…」

碁は1人では打てないからね。


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