「もう、彩と2人で仲良くしてろっ!」
バタンッッッ!!
「「…………っっっ!!!」」
塔矢が扉を閉める響いたんですが、扉が壊れそうなくらい凄い音で……。
あれは、相当怒ってますね。
「ヤバイ……」
「ヤバイですね…」
引きつらせた顔をお互いに見る私とヒカル。
「ああなると、中々機嫌が直らないんだよな…」
「そうですよね…」
仕事の後、暫くホテルに止まって帰って来ないでしょう…。
ヒカルと喧嘩した時の最近のパターンなんですよ…。
「あ~~も~~お前がなんとかしろ!」
「えーっ!どうして私が…」
「そもそもお前がオレに正体バラすから、こんなことになったんだろ」
なんですか、それ!酷い!
私だけのせいじゃないでしよ!
「ヒカルが喜び過ぎて、アキラをほっておいたのが悪いんでしょ」
「うっ…。そそいうお前だって完全に『佐為』だっただろ。オレだけのせいにするなよ」
た、確かに…私もヒカルに佐為であることを話して、ヒカルと昔のように接することが出来て嬉しくて、ついヒカルの前では彩であることを忘れてしまってましたけど。
「よしっ!こうなったら『佐為』のことを話すしかない!」
えっ?そんな急に言われても困ります。
「そんな訳で頼んだぞ。佐為」
「えーっ!?私が話すんですか」
「オレが話したら信じて貰えないかもしれないだろ。絶賛喧嘩中だし下手したら火に油だぞ」
確かにそうかもしれませんけど、夫として頑張ろうって気持ちはないのかと…思わなくもなかったり。
「娘に丸投げって…恥ずかしくないんですか」
「…お前は娘だけど佐為だからな」
「ヒカル~」
これは…なにを言っても私に任せるつもりですね。
そんなこんなで、今、私はホテルの前にいます。
(本当に世話のかかる夫婦ですね…)
お互い好き過ぎるぐらい好きなくせに、ライバルな気持ちが先に出て素直になれないですし。
アキラも自分の娘に嫉妬してどうするんですか…。
全く…。
は~~あ…。
溜め息をついても、バチは当たらないと思います。
まあ、今回は私にも責任がない訳ではないですから、仲直りしてもらう為にひと肌脱ぎますけど。
別れられても困りますしね。
…などと言ってる間に、アキラが泊まっているホテルに着いてた訳ですよ。
「さて、行きますか」
私は覚悟を決めて気合いを入れて、いざ、塔矢が泊まっている部屋へ向かったのでした。