「今度の日曜日なんだけど、急にイベントの仕事が入っちゃって…」
「あっそう、頑張れよ」
「…うん」
今日こそ、拗ねて駄々捏ねられると覚悟していたのに拍子抜けだ。
彩の誕生日5月5日を過ぎた頃から、ヒカルの様子がおかしい。
僕が仕事を入れまくっても、全く怒らなくなった。
色々言われなくなったのは嬉しいけど、何ヵ月も続くとさすがに怪しく思えてくる。
(まさか…浮気?)
そんな…まさか…ヒカルに限ってまさかね…。
(なにを考えてるんだ?僕は…)
僕から見ても愛妻家なヒカルが、浮気なんてあり得ない。
「あっ、そうそう、お前がイベント行く日、オレと彩は因島に行ってくるから」
いつもなら「3人で行く!」…って譲らないのに、今回はあっさり2人で行くんだ…。
仕事で遅くなっても彩と仲良く打っていて、僕は蚊帳の外だし。
今も仲良く台所に立ってるヒカルと彩が凄くお似合いというか……入り込めない物を感じる。
(ヒカルと彩って、あんなに仲良かったっけ?)
仲は良かったけど、あそこまでじゃなかった気がする。
そういえば、彩も誕生日を過ぎたくらいから、ヒカルと2人で碁を打ってることが増えた。
あんなに僕とのスキンシップに拘っていたヒカルは、どこにいったんだ?
「……」
今も2人で仲良く台所に立つ姿があまりにも絵になってたから、ちょっと腹が立って、僕は飛んでもない言葉を言ってしまった。
「もう、彩と2人で仲良くしてろっ!」
自分の娘にヒカルを取られた気がするなんて…。
ヒカルは彩の父親だし彩は娘なんだから、仲良くしてるのは当たり前で…取られたなんて思うなんて…どうしたんだ?…僕は。