ヒカルに「佐為」であることを打ち明けたのは、私が小学1年生になった夏辺りだったと思います。
あの時は、結婚記念日と私の誕生日にアキラが仕事を入れてしまったアキラに、ヒカルがキレて喧嘩になったんでしたっけ。
「結婚記念日も仕事、彩の誕生日も仕事って…どういうことだよ!」
「どういうことって、イベント参加の依頼が来たんだからしょうがないじゃないか」
「~~~~」
(家族と仕事どっちが大事なんだ!…って言いそうになったんですね)
口に出さなかっただけ誉めるべきでしょうか。
アキラに「家族と仕事大事なの」…なんて聞いたら、家族が大事でも勢いで「仕事」って答えてしまいそうですからねぇ。
「たまには家族旅行とかしたくない訳?」
「それは…」
たぶん今回も大喧嘩に発展するんでしょうねぇ。
2人の言い合いを聞いていると疲れるので、行洋の家でも行って一局打つことにしましょう。
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
「は~~~~あ………」
行洋と一局打ってルンルン気分で家に帰ったら、あれから喧嘩になったようで、家中に重~~い空気が流れてます。
そんな中で食べる夕食は美味しくない。
(今日はお互いの勉強部屋に引きこもり決定ですね…)
ヒカルとアキラは碁の勉強に集中出来るようにと、それぞれに部屋があるんですよ。
それにしても年に何度、こんな喧嘩をしたら気が済むのでしょうか。
ヒカルも、アキラが碁が命で碁か絡む仕事は断れないと解っているのですから諦めめばいいし、アキラはもう少し素直になって、ヒカルに甘えれば良いのに…。
お互いに大事な存在なのに、売り言葉に買い言葉で大喧嘩になるのですから、いい加減にしてほしいです。
もうこうなったら、私が「佐為」だと明かして2人の手綱を握ることにします!
せっかく神の一手を極める為に、用意された囲碁最強家族なんですから、壊してなるものですか!
●〇●〇●〇 ●〇●〇●〇●〇
翌日。
アキラがイベントへ出掛けた後、不貞腐れてるされてるヒカルに声をかけた。
「お父さん…不貞腐れてる暇があったら私と打って」
「ああ…」
さあ、ヒカルの驚く顔が楽しみですね。
「お願いします!」」
一手一手…打ち進めて行くうちにヒカルの顔がみるみる驚いた感じの顔に変わってきて…。
当然そうなりますよね。
今打ってるのは、消える前の私が最後に打った碁ですから。
「………佐為…?」
「はい」
「なんで?」
「ヒカルとアキラの子供に生まれ変わってきちゃいました」
「生まれ変わってきちゃいました…ってお前……」
あ~~~そんなに目をウルウルさせて…大の大人が見っともないですよ。
「ささささささ佐為~~~~っっ!!」
あ~~そんなに勢いよく抱きついて来ないでください。
中身は「佐為」でも外見は6才の彩なんですから、受け止め切れません。
ドテッ!
ほら、言わんこっちゃない…。
「あっ…ゴメン」
「平気ですよ」
こんなに喜んでもらえて嬉しい
「とにかく、あの時打てなかった続き打ちましょうか」
「ああ…」
気を取り直して打った碁は私の勝ち。
「消えた時より強くなってないか?お前」
「それは、まあ…佐為の記憶が甦ってから、ヒカルにバレないように勉強しましたから」
「勝てると思ったのに悔しいな…」
「まだまだヒカルには負けませんよ」
ヒカルが私に勝つなんて、またまた先ですからね!
「お前、いつ自分が「佐為」だって気付いたんだ?」
「初めて碁石を持った時です」
「…って、それって2才じゃん!」
行洋の家に行った時に、何気なく碁石を持って思い出したんですよね。
「あ、急に倒れたあの時か!」
「ええ」
「佐為」の記憶が甦ってビックリして倒れてしまって、皆に心配をかけてしまったんです。
「ヒカルが「佐為の生まれ変わりだ」って言う度に、話すべきか迷ったんですけど「彩」としての人生を楽しもうと思って黙ってたんです」
生まれ変わりなんて信じてもらえないかもしれないですし。
「じゃあ、なんて今明かしたんだよ」
「素直じゃない貴方達に我慢ならなかったからです!」
「えっ?」
「ヒカル、アキラ碁か大好で仕事大好きなのは承知の上でしょ!」
「あ…ああ…」
「アキラとラブラブしたいなら素直にそういえば良いじゃないですか!」
「………」
それから、私は溜まりに溜まったヒカルへのお説教を1日かけてやりました。
ヒカルに生まれ変わりであることを明かした為に一騒動起きるのですが…。
それはまた次にでもお話ししますね。