黙って頷く父と微笑む母。
「ヒカルさんとアキラさんの粘り勝ちね…」
もう少し喜んでくれると思ったんだけど…。
大反対した手前、喜ぶことは出来ないのかも。
そういえば、緒方さんがヤケ酒を飲んでそんなことを言ってたと芦原さんから聞いたけど…。
「1年で七冠になるとか、碁聖から順番に獲るとか、2年は全部防衛するにすれば良かったんだ!先生は甘い」
「そんなことしたら、アキラは一生嫁に行けなくなるじゃないですかっ!」
「行かなくて良いっ!」
「無茶ですよ~~」
「知るか」
僕が一生お嫁に行かないことを願ってたんですね?緒方さん。
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結婚の許しを貰った僕達は早速、昇に会いに行った。
「お父さんおめでとう!これで3人で暮らせるね」
笑顔で向かえてくれた昇。
「あの写真効いたでしょ」
「ああ…どこで撮ったんだよ?」
「内緒♪」
芦原さんに上手く乗せられて思わず笑顔になっただけで、内緒にするほどのことではないんだけどね。
「あと、お母さんがお父さん部屋に忍び込めたのは、和谷のおにいちゃんと、芦原のおじさんのお陰だよ」
和谷君と芦原さに、ヒカルの部屋に忍び込むように言われた時はビックリしたな。
良いのか?と思いながら、2人の策略に乗ってしまった。
「これでダメだったら、もう無理かもな…って、和谷のお兄ちゃんが言ってたんだよ」
「あのヤロウ…」
和谷君はヒカルの性格をよく解ってるから、僕を送り込んでくれたんだよね。
ヒカルも昇も愛されてるよね。
「よかったわね…、これでやっと3人で暮らせるわ」
お菓子を持ってきてくれたおばさんも笑顔だ。
「でも、おばさん達に合えなくなるのは、やっぱり寂しいな」
普段はおばさんのことを「お母さん」と呼んでるけど、僕達がいる時は「おばさん」に言い換えていて、器用というか頭の回転がいうか…僕とヒカル、どちらに似たのかな。
「あら、心配ないわよ。私達も東京に引っ越すから」
えっ?
「主人がね。毎日都心に通勤が疲れるらしくて…夫婦2人で過ごすには大きすぎる家だし、この家を処分して都心にマンションを買うことにしたの」
「じゃあ、また会えるの?」
「ええ、どうせならヒカルさん達の近くに住もうと思ってるから、いつでも遊びに来てね」
「わーいっ!」
「有り難うございます」
本音を言うと、いきなりの3人での生活は不安があったから、おばさんからの申し出は心強い。
昇にとっても、すぐに行ける距離におばさんが住んでることは心強いんじゃないかな。
「さあ、早く3人で暮らせるようにしないとなっ!」
ヒカルが凄く張り切っていた。